夢追い虫
星峰と涼太のことをちさとに話していいのかわからなかったので、家から出る前に念のため星峰に聞いた。
『大丈夫』と返事が来たので、俺の口から言うけど星峰のことを立てつつ何て言うか悩むところだ。
決して山崎のことを応援してないわけじゃない。山崎のことも星峰のことも応援している。どちらかの恋が実るかどちらもダメか。助けになれることはするが、これでいいのかどうか俺にもわからなかった。
「「おじゃまします」」
久しぶりにちさとの家に来た。すぐに悠太が迎えに来た。俺たちが一緒に来たことが嬉しかったらしく何度も遊ぼうと腕を引っ張ってくる。
「ご飯の準備あるから遊んでていいよ。話はあとからゆっくりしよう」
ちさとはご飯の準備を始めた。俺と涼太は悠太くんと一緒にトランプをして遊んでいる。
「悠太はあれから学校は大丈夫か?」
「うん!みんな謝ってくれて、もう仲良しだよ!」
「よかったな。なんかあったら言えよ」
「ありがとう!あのさ、結人兄ちゃんにお願いあるんだけど…」
「ん?なんだ?」
「ドラム教えてほしい!」
その姿を見て俺は自分が父親にお願いしたときのことを思い出した。中学生になるときにドラムを習いたいとお願いしたあの日。俺も同じようにこんなキラキラした目をしていたのだろうか。
「いいぞ。じゃあ今度一緒にスタジオ行くか!」
「やったー!」
「悠太、俺も野球なら教えてあげれるけど?」
「え!教えてほしい!涼太兄ちゃんありがとう!」
「なんでもいいんかい!」
今日の晩ご飯は生姜焼き。ちさとが作った料理をみんなでわいわい食べた。久しぶりのちさとの料理は本当に美味しい。涼太も舌鼓をうっていた。
「これマジでご飯すすむ。めちゃくちゃ美味しい」
「でしょ!?やっぱり料理人になるしかないかな!?」
「ちさとが店開いたら俺たち通うわ」
ちさとの作る料理をみんなで笑いながら食べる未来。そんな未来があればいいなと想像しながら俺はご飯を食べ進めた。
あっという間に食べ終わった俺たちは、夜遅くなる前に公園に来た。食べ終わってすぐにちさとのお父さんも帰ってきて、久しぶりに挨拶をした。
「またいつでも食べに来なさい」
優しい人だと改めて思う。こうやって言ってくれるだけで、俺も何かあったときに安心できると思うのは甘えなのだろうか。
「それで?結局涼太のこと気になってる人って誰?」
「ああ。あのさ、驚かないで聞いてほしいんだけど、星峰だよ」
「え…ええ!?まどかが!?なんで!?いつ!?」
期待通りの反応ありがとう。俺だって最初は同じリアクションしたよ。
「えっと…俺その人のこと誰か全然わからないんだけど…」
「ほら、ちさとのグループにいるスポーティな感じの人わからない?夏休み中にランニングしてるバスケ部の女子が転んで助けたの覚えてる?」
「あ…あの人か!わかる、そんなことあったわ」
「涼太が大丈夫なら今度みんなで遊んだりってどう?」
「うーん…遊ぶくらいなら全然いいんだけどさ、なんていうか…さっきはあんなこと言ったけど正直まだ引きずってるんだよな」
涼太がひかりのことが本当に大好きだった。一途でいつも一緒にいて、それが当たり前になって。離れても気持ちだけは変わらないとそう思っていた。
今でも涼太の気持ちは変わらなかった。前を向かないといけない、新しい恋を見つけないといけない。けれどもその一歩を踏み出すことはできないでいた。
「とりあえずさ、まどかのことを好きにならないとダメってわけじゃないんだし遊ぶくらいはいいんじゃない?」
「俺もそう思う。みんなで遊んで友達になるか、それより先の気持ちが生まれるかなんてわからないと思うし。それに、こんな人じゃないと思ってた!って星峰から言うかもしれないし」
「なんだよそれ!」
「じゃあとりあえず今度みんなで時間合うとき遊ぼう。それだけ伝えておくわ」
「私も絶対そこに行くからね!ちゃんと誘ってね!」
「はいはい」
「ちさと、こういうのって女子的に失礼じゃない?元カノのこと引きずってるのになんなの!的なの無い?」
涼太はちさとに聞いた。
「うーん…私の意見になるけど、まどかが今告白して涼太がOKしたらそうなるかもだけど、別に友達になるってくらいは無いと思う。まどかにもちゃんと言っておくよ。元カノのこと引きずってるからって」
「そっか。助かる、頼むわ。じゃあ俺は先に帰るとするかな。お前らも早く帰れよ。また学校でな」
そう言って涼太は先に帰って行った。俺とちさとは2人で公園に残りもう少しだけ話すことになった。
「さて、涼太がいたから言えなかった話あると思うけど、どうするの?」
「山崎のことだよな…」
「うん。山崎くんには何もしないの?まどかも絶対気づいていると思うから、ちょっと可哀想な気持ちになるんだけど…」
「もちろん山崎も助けてほしいって言ってきたら助けるさ。星峰だって俺と涼太が友達って知ったからお願いしてきたんだし」
「まあ…それはそうかもしれないけどさ。なんか山崎くんが置いてけぼりな気がしちゃうんだよね」
「今はそうかもしれない。でもそこから頑張るのは山崎だろ。あいつが星峰のこと諦めないって頑張るしかないんだ。だから俺は山崎のことを応援するし、星峰のことも応援する。もちろん涼太のことも」
夜空を見ながらそう話す結人のことをちさとはただじっと見つめていた。誰かが傷つくことになることを理解して、そのときは友達として支えてあげる。そう言っている気がする。
私もそうでありたい。みんなのことを…そして自分のことも応援していたい。負けないように。まだまだこれからだぞって…。
「なーんか、知らない間に結人が大人になったみたい」
「なんだよそれ」
「彼女ができると変わっちゃうんですねー」
「おい、やめて」
「あはは!さ、帰ろっか!」
今日は綺麗なお月様が出ている。
結人と久しぶりにこうして並んで歩くだけで幸せ。
ちさとは自分の気持ちを確かめるように一歩ずつゆっくりと歩いている。
『お父さん、お母さん。
私、今日ちょっとだけ将来の夢っていうものが見つかったかもしれないよ』
そして、夏休みが終わり2学期が始まった。
ご覧いただきありがとうございました。
もしこれから先も読んでみたいと思っていただけたら、ブックマークや評価などして頂けるととても嬉しい限りです。
読者の皆様からの応援が執筆活動の励みとなります。
是非ともよろしくお願いいたします。




