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session  作者: 北稲とも
68/80

未来の結晶

 花火大会を美優と一緒に過ごした次の日、俺は久しぶりに涼太に連絡をとった。


『久しぶり。もうちょいで夏休み終わるけど、どこか遊べる日無い?』


 すぐに既読がついた。


『いつでもいいぞ。お前ん家行っていい?』


『いいよ。じゃあ明日でいい?』


『おっけー。じゃあ部活終わってからだから夕方くらいに行くわ』


 すんなりと決まった。その後、明日は夜ご飯を一緒に食べる約束をしてLINEは終わった。


 星峰と横田との約束を果たすことが俺の夏休み最後のミッションだ。近況を確かめて伝えるだけなのだが、恐らく星峰にとって残酷な結果を伝えることになるだろう。


 涼太たちは中学の頃からお似合いの仲良しカップルだったから、他がつけ入る隙など無かった。

 学校ではいつも一緒にいて、みんながイジっても争いも生まれず、いつも幸せそうに見えていた。

 俺はそんな2人に憧れていた。いつか彼女がてきたときはこんな風に付き合いたいと思っていた。



 次の日の夕方、涼太が来た。


「おーっす。すまん、そこでバッタリ会ってついて来た」


「え?」


「やっほー!久しぶりに昔話でもしようー!」


「ちさと…まぁとりあえず中に入れよ」


「「おじゃまします」」


 中学の頃、涼太は俺よりもちさとと話すことは多かった。仲良しというわけでは無かったが、ちさとがいろいろと言われていたときも、普通に接していた数少ない1人だった。


「それで?なんかあったんだろ?」


 涼太が俺に問いかけた。いきなりあんなLINEが来たらそう思うのも当然かもしれない。


「まぁ…でも最近遊んだりしてなかったからさ。せっかくの夏休みも終わっちゃうからその前にって感じ」


「ま、とりあえず久しぶりに勝負すっか!」


 俺と涼太はいつも遊んでいたゲームを始めた。みんなも知っている有名な野球ゲームだ。中学の頃はよく俺ん家に来て一緒にプレイしていた。


「それにしてもなんか不思議な気分だな。こうやって俺ら2人が遊んでる場所にちさとがいるのって」


「いいじゃーん。見てるの楽しいし気にしないでやってていいよー!」


「前はちさとの場所にいたのがお前の母ちゃんだったのにな」


「またそういうこと言う」


「くそっ打たれた」


「え?涼太って実は最低なやつ?」


「ばーか。こうやって言えるやつは大切にしておくもんだよな?俺は結人が辛いのも大変なのも全部わかってるから」


「ま、昔からの友達ってこんなもんかな」


「ふーん。いいね、男の友情ってかんじ」


「あー!くそ!負けた!」


 涼太が天井を見上げながら悔しがっている。

 いつからか負けたほうが罰ゲームを受ける流れが定着していた。普通にやってもつまらないから、相手の質問に何でも正直に答えるという罰ゲームだ。


「じゃあ俺が罰ゲーム受ける側だな。何でもどうぞ」


「なに?罰ゲームって」


「負けたほうが相手の質問に何でも答えるって罰ゲームかけながらやってたんだよ」


「え!おもしろ!」


「じゃあ聞くけど。最近どうなのさ。ひかりちゃん」


 とりあえずは近況を確かめるところからスタートした。何でも答えるルールなのでストレートに聞くのがいいだろう。


「誰かから聞いた?」


「え?いや、何も聞いてないけど」


「そっか…別れたよ」


 それは予想していない返事だった。


「「え!?あんなに仲良かったのになんで!?」」


 俺とちさとは声を合わせて言った。中学時代を知ってる人が聞いたら恐らく誰もがそう言うだろう。


「ひかり、別に好きな人ができたんだってよ。やっぱ高校違うと難しいんだなって思ったわ」


「いつ…?」


「夏休み入ってすぐ。本当はさ、結人には言おうと思ってたんだけど、小笠原先輩といい感じだったし、親父さん帰ってきてゴタゴタしてたときだったからさ。言うタイミング逃しちまった。すまん」


 何に謝ってるんだよ。涼太は何も悪くないのに。辛かっただろうし、何も謝る必要なんてないのに。


「そんなんで謝らないでいいよ。辛かったよな」


「まぁな。でも別れるちょっと前からそんな雰囲気出てたんだよな。だから別れ話切り出されたときも、あーやっぱりくらいの感じだった」


「涼太は嫌だって言わなかったの?」


 ちさとが聞いた。こういうとき女子目線があると参考になる。俺だけだと励まし足りない部分があったかもしれないから助かる。


「うーん、正直部活が大変でさ、デートも回数少なくなってたし仕方ないかなって感じだった。ひかりに寂しい想いをさせてたのも当然だったから、引き下がりたかったけど我慢したって感じかな」


「まだ諦めるのは早いんじゃないの?別れてから1ヶ月くらいしか経ってないし、連絡してみたら?」


 俺が口を挟む暇もなくちさとが会話を進めていく。俺は黙って聞いていた。いや、黙って聞くしかなかった。


 違う高校に行き、環境が変わり別れた2人。あんなに仲が良かったのに別れた2人。もちろん、全てのカップルがそうなるとは限らないが、高校生カップルだと普通の話なのかもしれないが…。



 俺は花火大会のときの美優との会話を思い出していた。


『将来を無駄にすることはしないでほしい』


 あのとき美優が言っていた言葉。

 きっと美優は、もし俺が高校を卒業して進む場所が美優がいる場所じゃなくても気にしないでほしいという意味なのだろう。俺の将来のことまで考えてくれているからこそ、あの言葉が出たのだろう。


 悲しいことは考えないと約束したが、嫌でも現実に戻されてしまう。俺たちはいつか来る寂しさから逃げているだけなのだろうか。

 考えても答えは出ない。

 でもどんな状況になっても大丈夫なように、できることをするだけなのだ、と頭では理解しているが、不安がどうしても邪魔をする。


「花火大会の前日にさ、最後に花火一緒に行かないか?ってLINEしたんだけどさ、新しい彼氏できたらしくてダメだったわ」


「そっ…か…」


 俺は相変わらず黙っていた。そしてちさとも黙ってしまった。


「おいおい!お前ら2人揃って黙んなよ!俺はもう吹っ切れたから大丈夫だって!新しい恋見つけるから!」


 そう言って笑ってる涼太を見て、俺はなんとも言えない気持ちになった。

 いまの涼太と未来の自分を重ねてしまったから。


「ねえ結人。なんとなく結人が今何を考えているかわかるんだけどさ、それ最低だよ」


 ちさとが俺に言った。


「え?」


「どうせさ、俺もいつか美優先輩と別れてこうなるかもとか思ってるんでしょ?さっきから明らかに落ち込んでるし」


「いや…まあ…ちょっとだけ…」


「あ!の!さ!別れること考えながら付き合ってるとか最低だから!涼太は涼太!結人は結人でしょ!?未来なんてどうなるかわからないんだから、心配ならそうならないようにどうにかしなよ!」


 ちさとが言うことは正論だ。そのどうにかがわからなくて困っているのだから。


「うじうじしないでよ!私が好きになった人はこんな情けない人だったなんて知りたくないんだけど!」


「ちょ、ちょっと…!涼太いるのに!」


「え!なになに!お前ら実はそういう関係なの!?」


「私のことフッて美優先輩と付き合ったんだもんね!結人は罪な男だ!」


「罪な男って…ていうか俺ちさとに告白されたわけじゃないし…」


「うるさい!ばか!」


 ちさとは俺の頭を何度も叩いてきた。それを見て涼太はずっと笑っている。


「なぁ、結人。ちさとの言う通りだぞ。それにそんなこと考えながら付き合うのはお互い相手に失礼だ。不安になるのはわかるけど、美優先輩と同じ大学目指すとか、できることはいろいろあるんだからやってから悩めよ!」


「お前ら…なんで俺を励ます会になってるんだよ…」


「そりゃお前が俺より辛い顔してるからだよ。ばーか」


「ほんとそれ。結人って意外と女々しいよね」


「う、うるせー!」


 悩んでも仕方ないこと。確かにそうなのだ。ちさとが言うことも涼太が言うことも正しい。

 美優は俺の将来のことを心配してくれてあんなことを言ったのかもしれない。それなら俺だって美優のことを想って少しでも離れないように、離れている時間が短くなるように努力するだけなのだ。


「2人ともありがとう。なんかスッキリしたわ」


「それならよかった。じゃあ今晩は結人の奢りな」


「えー!やったー!ごちそうさまー!」


「なんでよ!ちさとはそろそろご飯作らないとだろ!」


「あ、じゃあせっかくだし涼太も一緒に久しぶりに私の家で食べる?」


「お!ちさとの手料理とか気になる!美味いって聞いてたから賛成!」


 俺はスマホを取り出し美優に連絡をした。こういう時は必ず勝手な行動をしないと心がけるようにした。


『いいよ!面白い話あったら後で教えてね!』


 あっさりOKが出た。ほんと気がきく彼女で頭が上がらない。


 

 そして、俺たちは家から出てちさとの家に向かうことになった。


「あーあ、俺も新しい恋見つけないとだな。どっかにいい人いないかなー。ちさと誰か紹介してくれよ」


 短い道中で涼太がちさとに言った。


「えー?誰かいるかな?」


「あ、それなんだけどさ…涼太のこと気になってる人いるんだけど…」


「「ええ!?」」


 星峰さん、横田姉さん、聞いてください。

 きっと後から朗報を伝えることになると思います。

 よかったよかった。

ご覧いただきありがとうございました。

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