夏の思い出
星峰が山崎のことをどう思っているのか。恋愛対象として有りなのか、それとも無しなのか。
山崎から星峰のことを聞いてほしいと頼まれたわけではないが、情報はどれだけあってもいい。
俺が美優と付き合い始めたときに「おめでとう」と言ってくれた。俺も山崎に言いたい。もちろんそれが安達だとしても。友達の恋愛が成就してほしいという気持ち。それだけだった。
『じゃあ昼間の話しよっか』
横田が話を切り出した。俺は星峰や横田とこうして個人的にLINEをするのは初めてだったので少しだけ緊張していた。
『まどかは山崎のことどう思ってるの?』
さすが横田姉さん。質問がストレートですね。
『友達だとは思ってるけど、正直好きとかそういうのは無い…かな?』
あ、もう終わった?俺の聞きたいこともう終わった?山崎の恋も見事に散ったの?
『それならもう話すこと無いじゃん。一ノ瀬に何か聞きたかったんじゃないの?』
確かに。カラオケのとき星峰は俺に何か言いたいことがあるように見えた。あれは何だったのだろう。
スマホが鳴った。星峰からグループ通話が来た。
「「もしもし」」
「ごめん!文字で伝えるのなんか恥ずかしいから電話しちゃった」
「だから最初からこうしようって言ったのに。それで?まどかは何を聞こうと思ったの?」
「うん、あのさ、山崎には申し訳ないんだけど、少し気になってる人が…いるんだよね」
「え、そうなの?ていうか俺に聞きたいってことは俺の知ってる人?」
「うん」
誰だろう。軽音部の誰か?まさか…部長とか?ライブ見てカッコよくて好きになったとかならちゃんとやめたほうがいいと言おう。
「あのさ、5組の柊くんと一ノ瀬って友達なんだよね?」
「え…り、涼太!?」
「…うん。夏休みの間に少し話す機会あってさ…それで気になってる」
それは意外な解答だった。そういえば涼太と最近話してない気がする。久しぶりに連絡してみるか。
「涼太と仲良くなる機会あったの?」
「部活でさ、外走ってるとき転んで少し怪我したんだよね。そのときちょうど見ててさ、助けてくれたんだよね。それから学校で会ったら挨拶するようになって…気づいたらいつも見てる感じ…かな」
それはごく普通の恋愛の始まりみたいな話だった。もちろん山崎が星峰のことを好きになったエピソードだって普通の話だが、星峰も同じなのだ。
「それで一ノ瀬。その柊くんって私知らないんだけど、彼女とかいるの?」
言いづらいけど言わなければいけない。だけど最近涼太と話してないから、今どのような感じなのか聞いてみないとわからない。
少しばかりの期待感を残しつつ上手く伝えないと、と考えて俺は話した。
「中学の頃から付き合ってる彼女がいるよ。でも最近涼太と話してないから、いまどんな感じかわからない。ひょっとしたら別れてるかもしれないし、探り入れてみる?」
星峰からの返事は無かった。彼女がいるという事実が想像以上に堪えたのだろう。こういうときは必ず頼りになる姉さんが助け舟を出す。俺はその助け舟を待つことにした。
「まどか。このまま終わっていいなら黙っててもいいと思うけど、どうする?」
さすが横田姉さん。星峰の性格をよくわかってるセリフだ。
負けず嫌いで頑張り屋。こんな煽りを言われてこのまま引きずるタイプじゃないよな。俺も星峰のためにできることはしてあげようと思う。
「一ノ瀬、お願い。あと彼女いても遊ぶ機会とか作ってくれたら嬉しい」
「あいよ。じゃあ何かわかったらここにLINEするから」
「ありがとう。じゃあ今日はこれで!また学校でね!」
「ばいばい」
LINE通話が終わった。
まさか星峰の気になる人が涼太だったなんて。あいつ昔からモテてたしわかるけど。これ山崎が知ったらどうなるかな…。絶対言えないからこの話は墓場まで持っていこうと思った。
次の日、俺は美優と待ち合わせをしていた。今日は帯広で有名な花火大会があり、一緒に行く約束をしていた。
ピンポーン
「いらっしゃ…い…」
「へへ、どう?」
「めちゃくちゃかわいいし似合ってる…」
美優が浴衣を着てきた。明るい美優にピッタリのイメージの黄色い浴衣だった。いつもかわいい美優がよりかわいくなっていて、見るのが少し恥ずかしいくらいだ。
俺も準備を終えて、バスで会場近くまでむかった。その道中、俺は昨日の話を美優に話していた。
「と、まあこんな話が昨日あったんだよね」
「そっか。確かに柊くんかっこいいもんね。爽やかスポーツマンって感じするし」
俺はいつもより少しだけ目を細めて黙って美優を見た。
「あれ〜?嫉妬ですか〜?まさか親友に嫉妬ですか〜?」
「別に…そんなんじゃないし」
「かっこいいと好きは別だよ!それに結人だって負けてないくらいかっこいい」
「…ほんとに?」
「ドラム叩いてるときはね」
「よし、今日は用事ができたから美優は1人で花火行ってね」
「冗談だよー!!」
恋人と過ごす初めての花火大会はとても楽しみにしていたイベントだった。みんなも行くと言っていたが、この人だかりでは会うのは難しいだろう。
美優と過ごす時間はいつもあっという間に過ぎていく。
出店の料理を美味しそうに見てる姿がかわいい。
焼きそばを食べたいと訴えてくる視線が嬉しい。
一緒に食べて美味しいと喜んでいる美優が何より愛おしい。
そして俺はいつものように美優とふざけ合って、美優と会場までの道のりを歩いていた。
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