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session  作者: 北稲とも
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未来

 カラオケの部屋を出て左に曲がるとドリンクサーバーが置いてある。ちょっとした広場のようになっていて、星峰と横田が丸テーブルに向かい合うように座っていた。


「あ、一ノ瀬」


「なに2人でこっそりしてるんだよ」


 気まずそうにしてる星峰といつも通りの横田。やはり星峰は自覚しているようだ。


「やっぱり星峰のことか…」


「さっすが。彼女がいる一ノ瀬くんは違うね」


「なんかバカにしてない?」


 星峰はチラッと俺を見た。まるで何かを訴えるような、何かを聞いてほしいような顔をしている。


「あ、あのさ…一ノ瀬に聞いてほしいことあるんだけど…」


「いいけど、とりあえず夜にLINEでもいいか?ここだといつまでも戻って来ないと怪しまれそうだし」


「…うん。そうだね。よし!じゃあ後でよろしく!結衣、ありがと!戻ろっか!」


 横田は「はぁ…」と軽くため息をついて星峰の後ろを歩いた。

 ドリンクを入れてるとスマホが鳴った。


『あとで話あるから空けておいて』


 差出人は横田からだった。部屋に入るときに軽く目が合ったのが合図だったのだろう。


 そして俺も部屋に戻るとさっきまでと変わらない盛り上がりを見せていた。ちさとがマイクを持って歌っている。こないだのライブで美優のバンドが歌っていた曲だ。世代的にはちょっと昔の曲だけど、お気に入りの曲になったのだろう。


「ねえ、ちさとって歌も上手いよね」


 梨木が言った。確かに前にカラオケ行ったときもちさとの歌は上手かった。もし軽音部に正式に入るのであれば、ボーカルをやってもいいんじゃないかと思えるような歌声だ。


 そして気づけば夕方を過ぎ、解散の時間となっていた。


「あー!今日はめちゃくちゃ楽しかった!」


「次にみんなで会うときは学校でだね!」


 安達と山崎。星峰と横田がそれぞれ帰っていった。俺とちさとは梨木に話があるため残ってもらっている。


「それで話ってなに?なんか前も同じようなことあったから怖いんだけど」


「とりあえずここだと話しずらいから、俺ん家来ない?」


「いいよ」


 そして3人で俺の家に来た。


「「おじゃましまーす」」


2人揃ってソファに座りくつろいでいる。俺はさっそく話をすることにした。


「とりあえず梨木、これ聴いてほしいんだ」


 前にちさとにも聴いてもらった曲をスピーカーから流した。


「かっこいい。すごくいいね。こういうインストの曲ってあまり聴いたことなかったけど、ハマりそう」


「正直に聞くけど、これ弾けそう?」


 5月のライブの頃に比べるとかなり実力も上がっているが、それでも演奏するには難しい曲だ。また前みたいにボロボロになるまで練習する梨木は見たくない、というのが本音だった。


「どうだろ…練習すれば大丈夫だと思うけど、この曲をライブとかでやるの?いつ?」


「学祭でやろうと思ってる」


「え!?あと1ヶ月ちょっとしかないじゃん…。ていうか部内選考なら1ヶ月切ってるし…」


「無理はしないでいい。もっとゆっくり練習してからでもいいんだ。ただどうかなって思って」


「あ、あのさ。そもそも色々と疑問があるんだけど」


「そうだよな。何でも聞いてくれ」


「ギターは誰がやるの?」


「美優がやることで了承もらってる」


「美優先輩が…。あとひょっとしてなんだけどさ、サックス?トランペット?間違ってたらごめんだけど、これやるのって…」


「そこの女神様にやってもらう予定だけど、ちさとどう?」


「女神って言うな!こないだから聴いてるけど、たぶん大丈夫だと思うよ。かなり練習しないといけないけど」


「よし。梨木、前にみんなで演奏しようって話したの覚えてる?」


「…うん。それは覚えてる」


「嫌じゃなかったら…学祭でやらない?俺らのカッコいい演奏」


「ちさと、吹奏楽は大丈夫なの?」


「遥香には言うの遅くなってゴメン。私、吹奏楽部辞めることにしたんだ。いろいろあって疲れちゃった」


 その言葉を聞いて梨木は安心の顔を見せた。誰よりも最初に気づいて誰よりも心配していたのは梨木だったから。これで辛そうなちさとを見なくて済むのだと思うと、嬉しさが止まらなかった。


「そっか。あんな部活辞めていいよ!ちさとに酷いことばかりして本当に許せない」


「やっぱり遥香も知ってたんだね。迷惑とか心配かけてゴメン」


「ううん。でもいいの?音楽やる場所無くなるんじゃない?」


「うん。それでね、美優先輩が良かったら軽音部に来ないかって言ってくれてるんだ。あのさ…遥香はどう思う…?」


 心配そうにちさとは梨木に聞いた。もしそこでも部外者として思われたらどうしよう。美優先輩や結人はおいでよって言ってくれてるけど、遥香の正直な気持ちが知りたい。


「そんなの決まってるじゃん!おいでよ!一緒にやろうよ!」


 梨木の顔からは喜びと興奮が溢れ出ていた。でもちさとは楽器がサックスしかできないのはどうしよう。そうだ、歌も上手いんだしボーカルやってもいいじゃん。


「サックスできないときボーカルやってもいいんだし!」


「それ結人も美優先輩も言ってたけど恥ずかしいから絶対嫌だよ!」


 俺たちは笑いながらこれからの未来のことを想像していた。ちさとが入部して新しく学校生活が始まる。学祭で初のお披露目をしてみんなで盛り上がるんだ。


「じゃあとりあえず入部は決まりだな。吹奏楽辞めたら教えてくれ。正式に入部することを美優に伝えるから」


「うん。それじゃあ改めてになるけど、これからよろしくね。あと遥香、学祭頑張ろうね!」


「まだやるって言ってないんだけど!」


 それから少し部活の話をして、ちさとと梨木は帰っていった。俺は片付けをして、ご飯を食べていると携帯が鳴った。


 俺と星峰と横田のLINEグループが新しく作られた。

ご覧いただきありがとうございました。

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