応援
次の日の夜、仲良しLINEグループに連絡が来た。
『明後日の13時に前と同じ場所忘れずに!』
夏休み前に計画していたカラオケだ。安達や山崎とはしばらく会っていないから、夏休みで何か変化が無かったか気になっていた。みんな部活や家族関係で忙しい毎日だったから、この日は思いっきり楽しみたい。
美優も誘ったが、さすがに今回はパスと言っていた。
「1年生の仲良しグループに何回も私が行くのは違うと思うし楽しんできてね」
みんなも美優先輩なら、と言っていたがさすがに気まずいのだろう。だが、カラオケの次の日は念願の花火大会がある。俺は美優と一緒に行く約束をしているので、美優との夏休みの思い出はそっちで作ろうと思う。
真夏日というような暑い日差しが照りつける。こんな日はクーラーが思いっきり効いている場所に行くのが1番だ。そんな日にカラオケに行けるのは運が良かった。
「みんなお待たせー!」
「ちさとー!おはよー!あっついねー!」
ちさとを迎えたのは最初に着いていた星峰だった。その隣には山崎もいる。
「水科、お疲れ」
「山崎くん、おはよ!あれ?なんか雰囲気変わった?」
「そうかな?特に何も変わってないけど…」
前に会ったときより少しだけオシャレな感じになっている気がした。きっと野球以外のこともいろいろと勉強しているのだろう。うん、いいと思う。
その後、安達に横田、そして遥香がすぐに来た。みんなで話していると、結人も来て全員集まった。
「さーて!じゃあ今日はガッツリと騒ぎますか!」
「「おー!」」
みんな久しぶりに会ったのか、夏休み何してたなどの話で盛り上がっている。こないだのライブで女子とは会ってはいるが、特に話をしたりはしてはいない。それもあって、本当にこうやってみんなと話すのは久しぶりで新鮮だった。
「一ノ瀬は美優先輩とどうなのさ」
聞いてきたのは横田だった。そういえば前にいろいろお世話になったお返しをまだしてない。横田もきっと覚えているだろうから、今日は横田の分は奢ろうと思う。
「まぁ、普通だよ。特に何もない」
「ふーん。つまんないの」
そこからはみんなの恋愛話になった。もちろん梨木とちさとにはなるべく触れないようにしていたが、そこも横田が「あんたらの話は聞かなくても大丈夫」とイジる感じで言って、みんなで笑っていた。
2人とも「なんで!」といった感じだったが、俺もとりあえず笑ってその場を過ごすことにした。やっぱり助かりますよ、姉さん。
「山崎はどうなの?」
俺が話題の対象を変えるために聞くと意外な答えが返ってきた。
「気になる人は…いるかな?」
みんな一斉にシーンとなり、すぐに「誰!?」といった感じで質問攻めになった。まさか俺も山崎に好きな人ができたなど思わなかったので、正直驚いている。
「誰とは言わないけど、夏休み中にいいなって思ってさ、それからずっと気になってる?みたいな感じ」
「結構ガチなやつなんだね」
横田が言った。ということは相手が横田ではないのだろう。
「まあな」
「いい感じなの?LINEしたり遊んだりしてるの?」
ちさとが聞いた。ということはちさとでもないということだ。
「いや、そういうのはまだしてない。ていうか誘っていいのかわからなくて」
「なんかちゃんと悩んでる山崎かわいいね」
梨木が言った。きっと俺たちのグループ内の話ではないのだろう。
「何かきっかけとかあったの?」
安達が聞いた。ということは安達でもない…当然だ。
「俺さ、夏休み補習だったじゃん?それで勉強してたときに、頑張れっていつも言ってくれててさ。なんか勇気づけられて、それがきっかけ…かな」
「そういうのいいな。わかる」
あれ…?俺は何かを思い出した。あれは確か夏休み初日。補習を受けている山崎をイジりに教室に行ったときだ。確か山崎は誰かが頑張れと言っていた気がする…。
そしてすぐ思い出すことができた。そこには恥ずかしそうにしている星峰がいた。
星峰は毎日バスケの部活で学校に行き、教室で着替えていた。だから補習を受ける山崎ともよく会っていたのだ。同じ運動部でスポーツ大好きな2人だから、練習時間が減るのは辛いことも理解していたのだろう。
普段そこまで女子と話すことが多いわけではない山崎にとって、毎日のように会って励ましてくる星峰のことが気になるのは時間の問題だった。
補習が終わっても学校で会ったりしたときは話したり、バスケ部が外を走ってるときに目で追ったりしていた。それはもう恋といってもいいものなのかもしれない。
みんなが山崎の話にいいな〜と言っているとき、もちろん星峰が静かにしていることに気づいた人がいた。
「私飲み物持ってくるね」
星峰がコップを持って部屋を出ようとすると、「私も」と言って横田も一緒に部屋から出た。
さすが姉さん。さっそく気づいちゃったわけですね。
「俺も飲み物取りに行くかな。誰かなんかいる?」
「はーい!私カルピスー!」
「ん、大丈夫かな」
「じゃあちさとにカルピスな。お待ちくださいお姫様」
「え、なんかキモい」
「なんで!?」
俺たちはいま青春のど真ん中にいる。部活に勉強に恋に友情に。どれもとても大事にしなければならないものだ。
山崎の恋がどうなるのかわからないけど、上手くいくといいなと思いながら俺も部屋を出た。
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