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session  作者: 北稲とも
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解決

 世間というものは思った以上に狭くできているのかもしれない。まさか父さんとちさとの母親が元バンドメンバーだったとは思わなかった。


「そうかそうか。僕と結人はすごく小さい頃に1回会ってるんだよ。まだ幼稚園くらいの頃だったはずだから覚えてないと思うけどね」


 俺はもちろんちさとも覚えていなかった。毎日会っている人ならまだしも、そんな幼少期に1度だけ会った人なんて覚えているわけがない。


「まさかこんなことになるだなんてなあ。ちさとさんも大変だっただろう」


「いえ…あの、母のこと何か知ってますか?」


 ちさとは恐る恐る父に尋ねた。勝手に出て行ったこと、今どこで何をしているか、元気なのか。


「ここで話すのはちょっとな…。みんなが帰ってから残れるかな?」


「はい!」


 思わぬところから出た母のことを知れるチャンスにちさとの胸は高鳴った。ただそれを知ってちさとがどうするのか、俺はそれが少しばかり心配をしていた。


「じゃあ俺らは帰るか。結人、今度みんなでカラオケ行くから予定空けておけよ」


 安達が言った。夏休み前にみんなで遊ぶ約束はまだ生きている。そして、2学期もこの場所でみんなと過ごせる。一仕事終えた疲れがどっと押し寄せたが、それよりも安堵の気持ちが勝っていた。



 みんなとそれぞれ軽く会話をした後に玄関まで見送った。家の中に残ったのは俺、美優、ちさと、父さんの4人だった。本当は梨木もこの場にいたかっただろうが、横田が帰ろうと言って連れて行った。


「父さん、美優のこと送っていくからその間にちさとと話してて」


「わかった」


 そう伝えて俺は美優を送るために外に出た。


「美優、今日はいろいろごめんな」


「ううん。私はなんにもしてないよ」


「そんなことないよ。美優が一緒に来てくれたからこの結果になった」


「水科ちゃんのおかげだよ。全然ダメダメだった」


「美優。あのさ、ちさとの案は普通出ないからね?何もできないのが当たり前なんだから、落ち込まないで」


「…うん、そうだね」


 確かに私のように何もできないのが普通なのかもしれない。だからこそ、こういうときに何かできることが、何かできる人が運命ってやつなんじゃないかな。もし、そうだとしたら私は違うのかな。


 小笠原美優は自分の力の無さに落ち込むが、それよりもまずは大好きな人と離れないことに喜ぶことにした。これが普通、これが当たり前だと必死に自分に言い聞かせて。


 美優を送り家に帰ると、ある程度の話は済んでいるようだった。


「おかえり」


「ただいま。話は終わったの?」


「大体は終わった」


 そこにはどこかスッキリしたような顔をしているちさとがいた。


「ちさと、大丈夫か?」


「あ、うん。大丈夫だよ。おかえりなさい」


「どうだった?」


「なんか…なんとも言えない感じ。とりあえず今どこで何をしてるかわかったから一安心かな」


「家族には言うの?」


「言わないよ。私だけが知ってたらいいことだから。結人のお父さん、本当にありがとうございます」


「何かあったら何でも言っていいからね」


「はい!それじゃあ私も帰ります。結人、またね」


「ああ、気をつけてな」


 そしてちさとも帰っていった。俺と父が家に残り、これからどうするかを決めていくことにした。


 お金関係のことを中心にいろいろ決めた。家賃や生活費、光熱費などの支払いなどいろんなことを聞いて学んだ。


「まあこんなとこだな。他に聞いておくことはあるか?」


「うーん、とりあえずわからないことが出来たら聞くよ。それよりちさとのお母さんって今も帯広にいるの?」


「いや、札幌にいる」


「札幌か…父さんと一緒だね」


「まあ札幌でまた一緒にバンドやることになったからな。趣味の範囲内だが」


「え?ちょっと待って…どういうこと?」


「今回帰ってきたのもギター取りにきたのもあるからな。ライブの予定は今のところ無いけど、もしやることになったら教えるから彼女かちさとさんと来たらいい」


「行かねーよ。こっちだって部活あるし忙しいんだ」


「それは何よりだ。しっかし知らないうちに友達もたくさんできて、彼女も作って青春してるな」


「いつまでもガキじゃないんだよ。これでも高校生になってるんだ」


「GWに帰ってきたときはまだまだって感じだったけど、やっぱり彼女ができると変わるんだな」


「まぁ美優のおかげでもあるから」


「いいか、あの子はお前より1年先に卒業して大人になるんだ。帯広に残るか札幌に行くか、東京とか北海道以外の場所かもしれない。もし、大学に行きたいけどお前と離れるのが嫌だと言ったら、お前は必ずあの子の背中をしっかり押すんだ」


「…わかってるよ」


「俺は母さんのことを繋ぎ止めれなかったから説得力は無いかもだがな」


「ほんとだよ。おかげで息子が寂しい思いをしてますよ」


「じゃあやっぱり札幌に連れて行くか…」


「たまには連絡するから、身体に気をつけてね」


「言われなくてもだ、バカ息子が」


 そう言って父さんは元気に笑いながら親子喧嘩は終わりを告げた。

 父が言った言葉、『俺が遠くない将来美優の背中を押す』

 この言葉をしっかりと受け止めて、久しぶりの家族団欒を過ごした。

ご覧いただきありがとうございました。

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