アゲイン
『おはよう!今日はちゃんとみんなで勉強してくるんだよ!』
図書館へ出発する前に美優からLINEが届いた。赤点を取ると夏休み中に補習があるため、ライブには出れなくなるというる決まりがあるらしい。自分はライブに出ないが、1人少し赤点を取りそうな人が身近にいる。そう、梨木だ。
「まあ何とかなるよ!」
みんなでテスト勉強順調かという話題になるたびにこう言っていた。しかし、家に帰ってからはベースばかり弾いているようで全く勉強などしていないらしい。今回、この勉強会が開かれたのも梨木がライブに出れなくなる危機感を持ったから…らしい。
駅に着くと星峰まどかがいた。Tシャツにショートパンツのスポーティなスタイルがとても似合う。
「あ、一ノ瀬ー!」
手を振る星峰に俺も手を振り返す。思えば星峰と2人でいることは初めてだ。バスケ部で引き締まった身体、スタイルが抜群。クラスのカーストトップのグループにいるだけあって、近くを通る男がチラチラ見てくる。美優とは真逆のタイプの女子なので少し慣れない。
「星峰はテスト大丈夫そうなの?」
「赤点取ったら部活出れなくなるからね!それなりに勉強はしてるよ!」
是非とも梨木に聞かせたい言葉だ。ちさとも部活と勉強を両立している。しかも家事までこなしている。よし、今日はみんなで梨木に危機感を持たせる会にしよう。それがいい。
「一ノ瀬さ、彼女とはどうなの?順調?」
「ん?まあ、普通だよ。ケンカとかも無いし…ていうか付き合ってからまだそんなに経ってないから」
「そっかー。私も彼氏ほしいなー」
「いや、星峰ならすぐ出来るんじゃない?好きな人とかいないの?」
「それがいないんだよね。だから恋人いる人って羨ましいなって思うよ」
そんな話をしていると、安達と梨木が来た。あとはちさとだけだが、時間ギリギリにちさとが来た。
「遅くなってごめん!」
オフショルダーの服装に俺と安達は目のやり場に少し困った。
「えー!ちさとめちゃくちゃかわいいし似合う!」
「たまには大人っぽくしてみた!ねー結人似合ってる?」
「お、おう…いいんじゃない?」
なんで俺に聞くんだよ。恥ずかしくなるからやめてほしい。
「さ、みんな揃ったし行くか!」
安達が先陣を切って図書館に向かった。ちょうど広めの机が空いていて、俺と安達、向かいがちさと、梨木、星峰の並びで座った。みんな黙々と勉強をしている。ただ1人だけ「うーん、うーん」と嘆いているような声を出している人がいる。
「何がわからないの?」
ちさとが梨木に聞くと数学がわからないらしい。色々と教えていると閃いたような顔をして問題を解いていく。
いろんなことがあったが、仲良しな2人を見ていると安心した。もし、どちらかを選んでいたり、まだ誰とも付き合って無かったらどうなっていたのだろう。などと考えながら俺も勉強に集中した。
1時間ほど経った。ちさとが「うーん」と腕を伸ばしていると、自然と肩に視線を向けてしまう。
「結人の視線がやらしい」
いじるように言ってきた。仕方ない、俺だって思春期の男の子なんだ。
「な、何も見てないし!」
「一ノ瀬、ちゃんと美優先輩には言っておくからね」
梨木が言う。本当にそれだけは勘弁してください。何でもします。
「安達はどうなんだよ」
すまん、安達も一緒に罪を被ってくれ。
「ん?俺は姉貴がそういう服装多いから何とも思わないぞ。かわいいのは認めるけど」
「さっすが安達くん!どっかの誰かさんとは違って紳士だね!」
この裏切り者め。そうやって俺だけを悪者にしたらいいさ。そう言いつつもやはり気になってしまう。今度美優にお願いしてセクシーな服装を見てみたい!とお願いしてみようか。いや、絶対怒るだろうからやめておこう。
「安達ってお姉ちゃんいるんだ」
星峰が言った。そう言われてみると俺も含めみんな知らなかった。
「ん?ああ、3つ上の姉貴がいる。今は札幌で大学生やってるけどな」
「えー!大学生かあ。なんか大人って感じで憧れるよね」
大学生。まだ高校に入学して3ヶ月くらいしか経ってない俺たちにとっては遠い存在な気がする。だけど、あっという間に現実的な存在にになっていくのだろう。そう、美優も遠くない未来、大学生になるのかもしれないのだから。
「なあ、やっぱり大学受験って勉強大変なのかな?」
安達に聞いた。
「まあ毎日夜遅くまで勉強はしてたぞ。俺も高校受験で勉強してたけど、それより遥かにって感じ。でも受ける大学次第なんじゃねーの?」
確かにそうだ。偏差値が高い大学を受験するのであれば勉強量は自然と増える。美優はどうなんだろう。
半年、1年後の俺たちはどうなっているのだろう。そんなことを想像すると、少し悲しい気持ちになっていた。
「ま!私たちにはもうちょっと先の話だよね。それよりもまずは目の前のテストをクリアしないとだよね。ね!遥香!」
ちさとが梨木のほっぺたを突きながら言った。
「もー!頑張ります!」
俺たちはそのやり取りを見てみんなで笑った。これから先どうなるかなんて考えてもわからない。だから精一杯、後悔しないように毎日を過ごすだけなのだ。
そして俺たちは解散する夕方まで集中して勉強をした。俺とちさとは帰りのバスが同じなので一緒に帰った。
『左手の調子はどう?』
『遥香のテストが心配』
『悠太が最近仲良い女の子できて〜』
こんな会話をしていると、あっという間にバス停に着いた。いろんな会話をしたが、ただ1つ、美優の話だけはちさとの口から出なかった。
「じゃあまた学校でな」
ちさとの家の前まで来て俺が言った。バス停から俺の家までの途中にちさとの家がある。昨日の夜の電話のこともあるし、なるべく2人きりは避けたほうがいいと思っていたからだ。
「あのさ」
「うん?」
「久しぶりに…結人の家行ってもいい?ちょっとでいいから」
「え…いや…さすがにそれはまずいっていうか」
「なんで?友達じゃないの?別に変なことするとか無いんだけど。それすらもダメなの?」
そう言われると弱い。『友達として』と言われると断りづらい。まあ変なことも無いだろうと思い、俺は了承した。美優にいろいろと謝らないといけないことが増えるのは嫌だな、と思いながら2人で家に帰った。
ご覧いただきありがとうございました。
もしこれから先も読んでみたいと思っていただけたら、ブックマークや評価などして頂けるととても嬉しい限りです。
読者の皆様からの応援が執筆活動の励みとなります。
是非ともよろしくお願いいたします。




