憂い切る身
「おはよう」
目が覚めると隣に美優がいる。俺を抱き枕のようにくっついている姿がとてもかわいい。
「おはよう、美優」
俺は頬におでこにキスをすると、俺を抱きしめる力が強くなった。美優の柔らかいものが当たり、俺もそれに反応してしまう。朝は仕方ないことだ。
「あ…結人のエッチ」
「美優がかわいいから…あ、朝はしょうがないんです」
思わず敬語になってしまうくらい恥ずかしい。美優から離れようとするも、抱きしめる力は強くなり離れられない。すると美優が俺の右手を掴み、そっと耳元で「さわって」と呟く。俺はただ言われるがままに触ると準備万端といった濡れ具合だった。
「結人となら何回でもしたい」
日曜の朝、いつもなら適当な時間に起きてゆっくりとしている朝。こんな嬉しい朝もあるんだなと思いながら俺はまた果ててしまった。
月曜日、昼休みに俺はいつも通り安達と山崎とご飯を食べている。
「俺さ、2人に話さないといけないことがあるんだ」
今日、まずはこの2人に伝える。その反応を見て梨木とちさとに伝える。この流れでいこうと考えていた。
「なに?なんかあった?」
「実はさ、彼女できた」
2人は口をポカンと開きながら俺を見ている。
「え、待って。どっち…?」
どっち、というのは梨木かちさとかということだろう。やっぱりそうなるよな、と思いながら俺は首を横にふった。
「どっちでもないよ。小笠原先輩と付き合ってる」
「え!マジで!?そっちなの!?」
まさかの名前が出てきて驚きを隠せないでいた。
「正直さ、どう思う?その…俺と小笠原先輩が付き合ってるのって」
俺は不安な気持ちを抑えながら2人に聞いた。この返答次第ではさらにこの後伝えなければならない人たちに対して話すことなんて無理な気がする。
「どう思うって…おめでとう以外ねーよ!」
安達が俺の肩を叩きながら喜んでいる。
「これで俺に先輩の女の子と繋がるチャンスができたってことだよね?一ノ瀬さん、そういうことですよね!」
山崎が興奮気味に俺に近づいた。
「えっと…あの2人のどっちかと付き合うと思ってたから…怒るとか思ってたんだけど…」
恐る恐る俺は言った。
「は?バカか?誰が誰を好きになったっていいじゃん。まぁ驚いたのは事実だけど、別に一ノ瀬が誰と付き合っても俺はおめでとうって言うよ。ていうか、小笠原先輩かわいいもんな!俺もあんな先輩と付き合えたらマジで最高だと思うわ!」
「安達…山崎も…ありがとうな」
「なのでどうかいい人紹介してください、と言っておいてな!」
俺の心配は簡単に去っていった。確かに安達が言う通りだ。誰が誰を好きになってもいい。別に裏切りとかではない。確かに少し距離感が近かったことはあったかもしれない。
だが、俺にとってそれは恋愛感情としてではなく、友達として、同じ部活仲間としての行為だった。その結果、好意を持たれることになってしまったが、それを断るというのは違う。告白されたわけでは無いし、むしろちさとに至ってはそういった気持ちがあったのかもわからない。勘違いヤローになる可能性だってあった。
あとはあの2人に言うだけ。放課後少し時間もらってみんないるときに話そうと考えた。安達と山崎にも同席してもらう了承をもらい、昼休みは終わった。
放課後、俺たちのグループが教室の隅に集まり話している。
「一ノ瀬ー。なんか面白い話あるんでしょ?なになに?」
横田が興味深そうに聞いてきた。安達と山崎が昼休みが終わり教室に戻ると「放課後、一ノ瀬が面白い話してくれるって!」と伝えていた。
「いや、面白いかどうかはわからないけど…」
チラッと梨木を見ると目が合った。すぐに目を逸らすとちさとが不安そうな顔で俺を見ている。あぁ…騙してごめん。そう心の中で思いながら伝えた。
「実はさ…俺、彼女できた…んだよね」
そう伝えると、「は!?」と言って星峰と横田は2人を交互に見た。まるで「え!何も聞いてないんだけど!?」といった感じだった。
俺の目に映るちさとは、『やっぱり』という顔をして、そのまま何も言わず下を向いている。そして、梨木はその言葉を聞いた瞬間に走って教室から出ていった。
「遥香!」
横田が叫ぶが、止まらなかった。
「どこが面白い話なんだよ。何も面白くねーよ!」
そう言って横田は梨木を追いかけた。ちさとは変わらず下を向いて、肩には星峰の手が置かれている。安達と山崎は「あれ、やっぱりダメだった?」といった感じで気まずそうにしていた。
俺は浮かれていた。2人に祝福されて大丈夫だと思い込んでいた。そんなわけないのに。本来こうなることを恐れていたはずなのに。けれど、これは俺にはどうすることもできない。俺が選んだ結果なのだから。けれど、心のどこかで「おめでとう」と言ってほしかった。
「美優先輩でしょ?彼女って」
ちさとが言った。俺は黙って頷くと、星峰が「マジで?」といった驚きの表情をして俺を見た。
「やっぱりこないだスーパーで会ったときおかしいと思ったんだ。美優先輩っていつも結人のこと『いっちー』って呼ぶのに、あのとき『結人』って呼んでた。気のせいかな?って思ったけど、そんなわけないよね。そっかそっか…」
ちさとはどこか自分に納得させるようにそう何度も呟いてた。
「うん、結人、おめでとう」
ちさとは笑顔で祝福の言葉を述べた。それには星峰も驚いていたが、続けて「お、おめでとう」と言った。本心なのかはわからないが確かに言ってくれた。
「結衣もああ言ってたけど、きっとわかってくれるよ。遥香は…ちょっと時間かかるかもだけど、きっと大丈夫。だから結人はちゃんと美優先輩を幸せにしてあげなよ!」
ちさとはそう言って俺の胸に軽くパンチをしてきた。
「ああ、ありがとう」
「じゃあ私ちょっとトイレ行くね。あ、まどかも一緒に行こ?」
「う、うん」
こうして俺ができることはやった。あとは梨木だけだ。けれどそっちはきっと大丈夫。任せてと言っていた人がちゃんといる。俺の大好きな彼女は頼りになる人だ。もちろん、このまま何もしないわけではない。困ったらいつでも助ける心構えはできている。だけど、あとはお願いします、美優先輩。
「ちさとは本当強いね。私がちさとの立場だったらビンタとかしちゃうと思う」
「何にも強くないよ。ねえ、私が結人のこと好きなのってバレバレだった?」
「そんなの決まってるじゃん。みんな知ってたよ」
「そっかあ。ねえ、私フラれたんだよね」
「そう…かもね。でも告白してないからギリギリセーフってことにしようよ!」
「ありがとう。まどか、お願いあるんだけどいい?」
「なーんでも言ってごらんなさい。今日だけは聞いてあげるから」
「ちょっとの間でいいから…ほんのちょっとでいいから…ギュッてさせて…ほんの、ぢょっどで…いいがら…」
「いいよ。ほれ、いらっしゃい」
「うわあああああん」
「全く、こんなかわいい子を選ばないなんて罪な男だよ。一ノ瀬は」
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