初めて
「それなんか変じゃない?」
「あー!強い!絶対強すぎる!」
普段料理なんてことをしてない2人が揃うとこうなるのは予想できた。包丁の持ち方がおかしい、野菜の切り方が違う、火力が違う、などと言いながら一緒にご飯を作る作業はとても楽しい。結局完成したカレーは見た目は酷いが味は意外と美味しかった。
「これは特訓あるのみですね。美優シェフの次回作に乞うご期待してください」
「あはは。なんだよそれ。でもこのカレーすごく美味しいよ。それに一緒にご飯作るのすごく楽しかった。またやろう」
「そうだね!お母さんに教えてもらうかなー。ねね、何食べたい?」
「うーん、ハンバーグが好き」
「任された!」
ご飯を食べ終え、洗い物も終わり俺たちは本題の話し合いを始めた。
「さて、どうしよっかね」
「とりあえず俺たちから発信はしないでいいかな?でも聞かれたら隠さないで付き合ってるって言えばいいと思う」
「そうだね、わざわざ言うのはおかしいからね。でも結人の友達たちはそれで納得するかな。何で言ってくれなかったの?ってなるんじゃない?特に遥香と水科ちゃんは」
「そうだな…そこは俺からちゃんと言おうと思う。たぶん梨木は美優に直接話しに行くと思うけど、何かあったら呼んでほしい」
「ううん。結人がちゃんと話してくれるなら私も逃げないでちゃんと話す。一応みんなの反応知りたいからさ、どうだったか教えてくれたら嬉しいな」
「わかった。お互い頑張ろうな」
こうして俺たちの方向性が決まった。伝えたときのみんなの反応が怖いが、美優のためにも頑張らないと。
スマホを開くと時刻は21時近くなっていた。
「そろそろ遅くなってきたし帰る?家まで送るよ」
「そうだね。でもお決まりのセリフ言ってもいいかな?」
「え?なに?」
「今日は帰りたくない」
そうやって上目遣いで俺を見てきた。なるほど、これは理性が崩壊してしまうのがわかる。こんなこと言われたら俺だって一緒にいたい気持ちになる。
「いや、そんなこと言われたら帰らないでほしくなるからダメ」
「じゃあいいじゃん!家に電話してくるー!」
「ちょ、ちょっと…!」
そう言って美優はベランダへ行き家に電話をしてあっさりと了承をもらい、泊まることになった。
「美優の家って割と自由な感じなの?」
「普段いい子にしてるからね。ちゃんと周りの信頼は得てるつもりだよ」
「俺の前だと悪い子なんだけどなあ!」
「結人にだけだもん」
そして今日も泊まることになった。カップルがお泊まりするということは、そういうことになるのだろうか。こないだの続きができるのだろうか。いや、想像するのはやめよう。さすがにまだ早いと思うし、そんなつもりは無いのだから。
今日も美優が先にお風呂に入った。「一緒に入る?」などと言っていたが、必死に聞こえないフリをして俺は自分の中の悪魔と必死に戦っていた。
俺もシャワーを浴びて美優と一緒にソファに座りながらアイスを食べている。
「ねえ、次来るときお泊まりセット置いていってもいい?」
「いいけど、例えばどんなもの?」
「寝巻きとか、メイク落としとかいろいろ?あったら楽だし、嫌じゃなかったら…だけど」
「ああ、確かにそうだね。全然いいよ…ってこれからもたくさん泊まってくれるの?」
「だって結人とたくさん一緒にいたいし」
そう言って俺にもたれかかってくる美優の頭を撫でた。俺もずっと一緒にいたい。この時間がいつまでも続いてほしい。洗面所に置かれた歯ブラシと同じように、俺たちは寄り添いながら2人きりの時間を噛み締めた。
「そろそろ寝よっか」
俺の頬にキスをして美優が言った。俺もお返しと言わんばかりに美優の頬にキスをして、部屋に行った。一応前と同じようにベッドの横に布団を敷いている。
「ね、一緒に寝たい」
「いや、俺も男だし我慢できるかわからないんだけど」
「我慢する必要ないよ。付き合ってるんだし、結人がしたいなら私は全然いいよ」
「と、とりあえずじゃあ一緒に寝ようか」
やった!と喜んでいる美優がいる。ベッドに入ると美優がくっついてきた。柔らかいものが俺の腕に当たっている。俺はずっと思っていることがある。そう、美優がとても積極的ということだ。俺に性欲が無いというわけではないが、美優はとてもグイグイくる。いまも俺にキスを迫ってきている。
「美優ってすごい積極的だよね」
そう言うと、「ごめん」と言って離れた。
「嫌…だった?」
「ううん、嫌じゃないよ。なんか意外だなって」
美優は何か思うところがあるような顔をした。
「やっぱり私って魅力ないかな?」
「そんなことない。むしろ魅力的すぎて困るくらいだ」
美優が泣きそうな顔をしている。
「どうした?」
「ごめん。結人が好きなのは本当だし、こうやって一緒にいれるのがすごく幸せなのも本当。私のことを好きでいてくれるのもすごく伝わるよ。ありがとう」
「うん」
「だからかな。すごく今となってはすごく後悔してる。なんであんなことしちゃったんだろうって。私も結人と初めてがよかったって」
「…うん」
「結衣、お願い。結人とひとつになりたい。私を結人にとっての初めての人にしてほしい…私の身体を結人のものにしてほしい」
その瞬間、俺の理性は崩壊した。
「左手が使えないから、上手くできないかも…」
「いいよ。私がたくさんするから」
そして、2人は抱き合い何度もキスをした。
確かめるように
いつも見ていた白い肌に触れ
小さな身体を抱きしめた
美優は俺の左手を気にして、決して無理をしないように俺を優しく包んだ
こうして美優のリードのおかげで俺の初めては終わった。怪我が治ったら、たくさん美優を愛してあげたい。
隣でかわいい寝顔をしている美優を見ながら忘れられない夜を過ごした。
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