Hello
軽音学部の部室の入口は普通の教室とは少し違う。
最初に一般的な教室などと同じようなスライド式のドアがあり、その次に重い防音ドアがある。音漏れがしないようにしているのだろう。
重たいドアを開けて中に入ると、そこには普通の教室と同じ空間があった。何人かが談笑していて、教室の奥に防音ドアがある。見たところ楽器やアンプなどは無いため恐らくあの扉の中に練習スタジオがあるのだろう。防音設備はしっかりとしているようだ。
「あー!新入生!?どうぞどうぞ!」
「あっと…はい、ありがとうございます。失礼します」
そこには自分以外にも2人見学に来ていた。ちょうど先輩から説明を聞いていたようだ。
活動内容や部員数、部室や練習スタジオの設備などいろいろ説明を受けた。先に説明を受けていた2人は未経験者なのか、?といった顔で話を聞いていた。
要約するとこうだ
・練習スタジオでアンプを通して音を出していい時間は放課後〜19時まで
・練習スタジオは予約制のため、予約表の空いてる時間に名前を書いて使用する。混んでる場合は1グループにつき1時間まで
・部室は自由に使ってよし
基本的なルールはこの3つだ。あとはイベントだが、学祭でステージがあるのと、定期演奏会があり、それは近くのライブハウスを貸りて行うらしい。
決して上から目線などではないが、意外としっかり活動してるという感想だった。高校の軽音学部などもっとだらけて遊びたい人が入る部活なのかと思っていたので驚いたくらいだった。
「はい!以上で説明は終わりです!ちなみにもし入部しようって思ったらいつでもここに来てくれていいからね〜!以上!私、2年で副部長の小笠原からのご説明でした!はい!拍手!」
パチパチパチパチ
なんかテンション高い先輩だな…。でもすごくわかりやすかったことと、安心感が伝わる説明はさすが副部長と思えるほどだった。ん?2年で副部長…?
「すいません、質問いいでしょうか?」
「はい!どうぞ!えーっと名前聞いてもいいかな?」
「はい。1組の一ノ瀬といいます。小笠原先輩は副部長なんですよね?そういう役職って3年生がやるものじゃないんですか?」
「いいとこつくね!実はね、3年生は2人しかいないんだ。部長は3年生なんだけど、副部長は2年生がやったほうが経験になるってことで私がやってるんだよね」
「なるほど…。ちなみに部員数って全員でどれくらいいるんですか?」
「3年生が2人、2年生が8人、1年生がすでに2人もう入部してくれてるよ!」
「あ、あの…3組の佐藤です。自分からも質問いいでしょうか?初心者でも大丈夫なのでしょうか?」
「ぜーんぜん大丈夫!ほとんど初心者からスタートするからむしろ大歓迎!みんなは初心者?やってみたいパートとかある?」
「俺らはギター弾けるようになりたいって思ってて…」
「いいねー!私もパートはギターだよ!高校に入る前から触ってたから初心者ではないんだけど、その代わりいろいろと教えてあげれるから全然心配いらないよ!」
一緒に説明を聞いていた2人からは安堵の表情が伺える。高校の部活というのは小中学校とそれまで経験している人が入部するものが大半だろう。しかし、軽音学部というのは中学までに部活として存在している学校は少ないだろうから、そのほとんどが高校から始めるのだ。
「ところで一ノ瀬くんは経験者っぽいけど、パート何なの?」
「え…なんでわかるんですか?」
「だって君、練習スタジオ入ったときのリアクションが未経験者とは違うリアクションだったからね。大抵の人はすごい!とかかっこいい!とか言って目をキラキラ輝かせるんだけど、君は落ち着いてたからね〜。慣れてるのかなって思ってさ」
「ああ、確かにそうかもしれないですね。自分はドラムやってました」
「ドラム!ありがとう!君はもう入部ってことでいいかな?」
「ち、ちょっと待ってください。なんでそうなるんですか」
「えーっと、ドラムやってるならわかるよね?」
その質問の答えはすぐに理解できた。
「まぁ…なんとなく…。ドラムは人口が少ないですからね」
「そうなんだよ〜。うちの部も3年生に1人いるだけでさ、卒業しちゃったらいなくなっちゃうんだよね」
確かにギター>ベース>ドラムと基本的には人数が減っていく傾向がある。一緒に見学に来ていたこの2人もギターをやりたいと言ってたくらいだし、恐らくだが、決して多くない部員数でさらにギターは飽和状態なのだろう。
「ま、まぁまだ入部すると決めたわけではないので…すみません」
「うん…まあそうだよね!ごめんねー!そんな感じで説明は以上です!よろしくお願いします!」
なんとも気まずい雰囲気にさせてしまった。確かに最初は入部しようと思って見学に来たが、1番のネックは思ったより部員数が少ないことだった。1年生がどれくらい入部するかによってこの部活の未来も決まっていくようなものなのだろう。
「じゃあ自分は今日はこれで帰ります。お、お疲れ様です」
「うん、お疲れ様!あ、一ノ瀬くん!本当に気にしないでいいからね!」
ぺこっと軽く頭を下げて部室から出ようとしたときだった。
「お疲れさまでーす。あれ、一ノ瀬じゃん。なんでいるの」
重い扉が開き、そこには同じクラスでちさとと同じグループの"梨木 遥香"がいた。
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