表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とあるアンドロイドの独白

やぁ、猫さん。これは私の『知人』の話なのだが聞いてくれるかい


『彼女』には悪友がいてな、ガサツで口が悪くて喧嘩っ早くてどうしようもないほどバカなのだが…


どうにも『彼女』は、その悪友のことを好いているらしい


困ったことに友情ではなく、恋情として


あのアホは『彼女』が気にしているコンプレックスも平気で踏んでくるし、何かにつけて喧嘩を売ってくるし、こんなクズと同じレベルで争うのは馬鹿馬鹿しいと百も承知なわけだが


怒りであのアマぶち殺したいと心の底から思っているわけだが


どうも、その心の底から湧いていくる感情、というのが、かけがえのないものだと気づいてしまったらしくてな


顔を奪われたあの日。他のどんな顔に変えても「これは私じゃない」と、自己のアイデンティティを保つことすらできなくなって塞ぎ込んでいた私に…あ、いや『彼女』にな


あのボケナスはあっけらかんと言ったんだよ


「不っ細工な面してんなー。能面つけてる方がマシだろ」


ぶっ殺してやろうと思ったし、実際にお互い大破寸前までやりあったよ


言って良いことと悪いことがあるだろ。仮にも乙女型だぞ


だけどな、その「怒り」が、無くした顔の代わりに私の「自己」を形作ったと気づいたんだ


誰もがもっていて当たり前の、自分を表す最も身近な記号のひとつである「顔」


それを奪われて、代わりの顔にも馴染めず、誰とも向き合うことができないほどココロの弱りきった彼女に、劇薬のような侮辱を平然とぶつけてきたあの色黒サル女


焼けただれるほどに痛んだココロの底から湧き出る最も純な感情。私はその侮辱に「怒れる女」なのだと、それに気づかせてくれた脳筋クソ女に、……どうしてだろうか、まぁ、奪われてしまったわけだ、初恋……


いや、今だって殺したいほどムカついてるし、あいつがケンカに負けて無様を晒そうものならおおいに笑ってやろうと思うけど


何度も何度も、これは恋じゃなくてタチの悪い錯覚、勘違いなんじゃないかと自問自答したけど


そもそも恋の定義ってなんだよって話だけど


考えれば考えるほどドツボに嵌っていくようでね、結局自分の気持ちを再確認してうちのめされてエラーまみれの自分の気恥ずかしさにのたうち回るわけだよ


認めたくないけど、癪に障るけど、甚だ遺憾ではあるけれども


あのゴリラ女に、能面女はココロを奪われている


だけど、絶対この気持ちは明かさない


アイツが同種の感情を抱いていないことなんて分かりきってる


別に想い打ち明けて相思相愛になったり、逆にドン引き拒絶されたりとかどうでもいい


ただ、一方的に私だけ惚れてるなんて、我慢ならないだろう


あぁ、あの顔思い出したらムカムカしてきた。そっ首切り落としてオブジェにして毎日愛でてやろうか


あのオーク女、黙ってればまぁ、顔は悪くないと思う。私の元の顔には劣るが


いや、物言わず大人しく私に愛でられるだけのアイツとか、解釈違いも甚だしいな。首だけになっても敵を煽り散らして機能停止する瞬間まで喰らいつくのがあのオオカミ女だ


あれ? もしかして途中から「彼女の話」じゃなくて「私の話」になってる?


……


…………


………………すまない猫さん。後生だ、忘れてくれ



「……っつってもよぉ。全部丸聞こえなんだわ。独り言がでけぇんだよ、お前」


「え」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ