31.出会えた奇跡に感謝したいです。
昼食会の後に4ヶ国の平和同盟について発表することになった。
「皆様、食事会は楽しんで頂けましたでしょうか? 今日は昨日の吹雪が嘘のように晴れています。このような良い日に向こう10年の平和な日々の約束を宣言できることを喜ばしく思います。まずは、4ヶ国平和同盟の発起人、ルイ国の次期王妃であるイザベラ・ライト公爵令嬢よりお話を頂きと思います」
サイラス様の言葉に歓声が上がる。
私はビアンカ様の手を取りながら壇上に上がり、その後をレイモンド様とエドワード王子がついてくる。
「皆様、只今ご紹介に預かりましたサイラス国王陛下一筋のイザベラ・ライトです。今、私と手を取り合っているビアンカ・アツ王女は私にとって初めての友達です。彼女とはお互いに友達になろうという言葉はなくても、自然と笑い合える関係になれました。人を思いやる優しい気持ちと謙虚さを持つ彼女を、私が最初から大好きになってしまったのです。そして、来月、私の友達のビアンカ様はアツ国の女王となられます。私は彼女のような人の心に寄り添える温かい方が作る国がどのようになってくのかとても楽しみです。ルイ国はライ国からだけでなく、アツ国からも資源を輸入することになりました。これからのルイ国は兄弟だけでなく友達とも仲良くしていきたいと思っています。そして、これは私の個人的な意見なのですが、私は争いごとが怖いです。できれば、みんなが思いやりながら仲良く助け合っていければ良いといつも思っていました。人を貶めたり、苦しめたりすることに心を砕くのではなく、目の前の人をどうしたら幸せにできるかを考えていけたら良いと考えていました。そのような幼い理想論に、賛同してその夢のような平和を現実にしようとしてくれたのが今壇上にいる方々です」
歓声が聞こえる中、私が隣にいるビアンカ様にアイコンタクトをとると彼女はゆっくり頷いた。
「ビアンカ・アツです。私は来月よりアツ国の女王となります。まだ見ぬ風景に不安になっていたところ手を差し伸べてくれたのが、ルイ国の次期王妃であるイザベラ・ライト公爵令嬢でした。女王として至らぬこともあるかと思いますが、私は支えてくれる人に感謝をしながら、いつか恩返しができるよう努めていきたいと思います。私も、サイラス国王陛下と次期王妃になられるイザベラ様のお作りになるルイ国が楽しみです。そして、ライ国のエドワード王子殿下とは本日初対面でしたが、噂通り聡明な方でお優しく感動致しました。アツ国はライ国とは国交が今までありませんでしたが、資源国と呼ばれる2ヶ国の繋がりを作って頂いたことに感謝したいと思います」
「レイモンド・サムです。ビアンカ王女が私のことを言及してくれませんでしたが、私も仲良しですよ。私はルイ国にきてから美しいものをたくさん見ました。赤い髪に美しい黄金の瞳をしたイザベラ・ライト公爵令嬢に始まり、見たこともないような猛吹雪、そして今、歴史上初とも言える4ヶ国の友情が生んだ10年に渡る平和同盟です。10年間は侵略をせず、お互い助け合う約束ができる日が来るとは素晴らしいことです。サム国は他国を狙っているという誤解が解けたでしょうか?イザベラ様が争いが嫌いと言っていたではありませんか? 女性の権利を大切にするサム国が世界最高峰の美しい女性イザベラ様が泣くようなことをすると思いますか? サム国は世界中の女性を大切に思っています。女性だけではありません。私はサイラス国王陛下も尊敬していますし、エドワード王子も愛しています」
レイモンド王太子殿下は相変わらず、周囲の人の心を掴むのが上手だった。
皆、彼がエドワード王子を愛していると言ったところでなぜだか盛り上がっていた。
「エドワード・ライです。僕はイザベラ・ライト公爵令嬢を実の姉のように慕っています。美しく繊細な心を持つイザベラ様が、頼れるパートナーとしてサイラス国王陛下と出会えた奇跡に感謝したいです。ライ国、ルイ国、アツ国、サム国が手を結び助け合うことで、イザベラ様が理想とするような優しい世界を作れる手助けを僕もライ国の代表としてできたらと考えております」
私はエドワード王子の言葉が優太から綾に対する言葉のように思えて泣きそうになった。
私も彼も前世では散々人の悪意に晒されてきた。
そして、やはり優太は優しいままだったことを改めて実感した。
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