3.彼は小説の主人公だ。
「マリアンヌ様はレイラとアカデミーで同級生だったそうです。彼女は天才でレイラは一度も試験で勝てなかったそうです。彼女の母親はライ国の伝説的な才女らいしいですよ。彼女の母親はカール・ライト公子を出産と同時に亡くなっています。レイラはマリアンヌ様を何を考えているかわからない人物で、テストでケアレスミス一つしない不気味な方だったと言ってました。彼女は、いつも1人で誰とも馴染もうとしなかったそうです。カール・ライト公子の出産と同時に母親を亡くしていて理不尽な恨みを彼にぶつけていた可能性はあります。いつも1人でいたのは優秀すぎて他の人間と話が合わせるのも面倒に感じたのでしょう。おそらく伝説的な才女と言われた亡くなった母親は彼女と唯一話せる相手で、母親を失った怒りの矛先がカール・ライト公子に向かっているのかもしれません」
サイラス様は見聞きした情報からマリアンヌ様をプロファイリングしてきた。
私はマリアンヌ様を知らないが、私は大好きなカールの苦しそうな顔が忘れられない。
彼は私を出会ってから支え続けてくれた大切な人だ。
「そのような凄い方がいらっしゃるのですね。サイラス様、相談に乗っていただきありがとうございます。明日はお誕生日ですね。お誕生日おめでとうございます。朝起きて一番最初にサイラス様にお祝いを言うのはメイドの方ですよね。誰よりも早く言いたくて前日にお祝いを言うという暴挙に出ました」
明日は戴冠式であると同時に、サイラス様の21歳のお誕生日だ。
「イザベラ、何て可愛いことを言うのですか?早く結婚して、朝起きて一番最初に会うのがイザベラという贅沢な生活をしたいです。男女とも21歳で成人し、婚姻を結ぶことができるというルイ国の法改正が国王になったら最初にする仕事になりそうですね」
サイラス様が嬉しそうに私を抱きしめてきて、私は思わず抱きしめ返した。
「結婚したら、私とサイラス様は一緒に寝たりするのでしょうか?」
私は前世ではアパートの4畳半に家族で雑魚寝していた。
当然、王宮では夫婦で寝たりするのだろう、緊張して眠れる気がしない。
「イザベラ、そのような不安そうな顔をしないでください。イザベラの嫌がることをしたりはしません。そういえば、ルブリス王子はイザベラのベットに寝ていましたね。イザベラが前に彼は小説の主人公だと言っていたのを思い出しました。あのように好き勝手に自由に生きているのに、なぜだか上手くいってしまうご都合主義の小説の主人公という感じがします。全てを失いそうになったら、イザベラが助けに来てくれて天才的な妙案で彼の名誉を挽回しました。しかも今も私の婚約者になったイザベラを公に好きだと公言しています。ライ国では愛する人を諦めてまで、権力バランスを考えイザベラと婚約破棄したという話になってますよね。そして、私でさえ寝たことがないイザベラのベットに平気で寝るという彼は一体ここに何しにきたのでしょうか。絶対に私のお祝いに来たのではなく、イザベラに会いに来ていると断言できます」
ルブリス王子の名誉が回復したのは、私のおかげというよりカールという強い味方がついてくれたからだ。
アカデミーや貴族の彼の悪評が、平民にまで届いていなかったのは運が良かった。
そして、ルブリス王子の王族らしくない感じが意外にも平民には好意的に捉えられたのもついていた。
「サイラス様、ルブリス王子はサイラス様が小説の主人公みたいだって前に話してましたよ」
私はなんだか2人してお互いが主人公だと言っているのがおかしくて笑いを堪えながら言った。
「私が主人公ならヒロインはイザベラですね。では、おやすみなさいイザベラ。明日、起きたらすぐに会いに来ますね。」
サイラス様は私の頬に口づけをすると部屋を出ていった。
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