25.みんなに優しい人。(エドワード視点)
「ライト公爵家としては、イザベラはルブリス王子と結ばれてライ国の為に尽くしてもらいたいと思います。養女としてマリアンヌ伯爵令嬢を迎えて、彼女は次期国王になるエドワード王子の元に嫁がせられればと考えております」
ライト公爵が俺にアイコンタクトをとってくるのを無視して、俺は国王陛下である父に進言した。
「父上、マリアンヌ伯爵令嬢は弟に理不尽な恨みをぶつけて長期に渡り毒を盛るような女です。とても王家には入れられません。ライト公爵はそのような娘を王族に輿入れさせるようなことを考えるとは、国家転覆でも狙っているのでしょうか?兄上の土地区画事業については、僕が中心となりカール・ライト公子と協力進めても宜しいでしょうか? 兄上は事業には然程興味がなさそうですし、僕は以前よりライ国の街の整備に取り組みたいと思っておりました」
「エドワード王子殿下、マリアンヌは優秀な娘で、そのような事実があるとは知りませんでした。エドワード王子殿下の調査能力は素晴らしい。殿下のような天才が、どのようにライ国を導いていくのか楽しみでなりません」
焦ったようにフォローし、俺におべっかを使ってくるライト公爵に辟易とする。
「ライト公爵、公爵が王家を狙っているなど余は考えておらんから安心しなさい。ルブリスの考えは分かった。ライ国に戻り次第、エドワードを立太子させる準備をしよう。土地区画事業についてはエドワードに任せた方が良いだろうな。ルブリスは確実にライト公爵令嬢をライ国に引き込みなさい。彼女はライ国にとって必要な人材だ。では、そろそろ結婚式の会場に戻ろうか。ルイ国の王子の結婚式にライ国の要人が1人も参加していないのは問題になりかねない」
「父上、僕は実は今にも倒れそうで結婚式の会場に戻ると周囲に迷惑を掛けてしまう可能性があります。今日はもう部屋で休ませて貰ってもよろしいのでしょうか?」
その時父上はやっと俺の顔色が悪いことに気がついたのか、部屋で休むことを承諾してくれた。
俺は3人の姿が見えなくなるまで待ってから、イザベラ様の部屋に向かった。
イザベラ様の部屋の前にたどり着いた時、サイラス国王陛下が部屋から出てきた。
「エドワード王子、今日は大変でしたね。イザベラはもう眠りました。あなたもお疲れでしょうから、部屋に戻って休んでくださいね」
いつになく優しいサイラス国王陛下に戸惑ってしまった。
もしかして、姉ちゃんが俺のことを前世の弟だとか暴露したのだろうか。
流石に空気を読めない姉ちゃんでも、そのような非現実的なことを言う程のバカではないだろう。
そのようなあり得ないことを言ったら、せっかく掴めたサイラス国王陛下の気持ちを失いかねない。
「サイラス国王陛下、あなたを出会った頃から尊敬していました。イザベラ様を大切にしているのですね。先程、父上からライ国に戻ったら、僕を立太子すると言われました。僕もレイラをただ1人の妻として大切にしたいと思います。彼女と手を取り合って、より良いライ国を作っていきたいと考えています」
これからイザベラ様に会う時は人の目がある時ばかりだろうから、彼女と2人きりになれるサイラス国王陛下に自分の想いを託して彼女に伝えてもらうしかない。
彼女が懸念していたマリアンヌの受け入れを否定して、レイラを大切にすることを伝える。
サイラス国王陛下なら、きっとイザベラ様に伝えてくれると願った。
姉ちゃんが心配していた危険なマリアンヌの受け入れはしない。
そのことを聞いて、彼女の心が少しでも軽くなればと願った。
姉ちゃんが自分よりもカール様やルブリスを優先したのではないかと嫉妬した。
俺は少し視野が狭くなっていて、前世での姉ちゃんを忘れかけていた。
姉ちゃんはみんなに優しい人なのだ。
だから、ルブリスが優しくされて自分が特別だと勘違いをするのも間違っているし、俺がカール様に嫉妬するのも間違っている。
人を信じすぎて、優しすぎるがために傷つきすぎて、人の悪意にも気がつけない彼女を任せられるのは尊敬するサイラス国王陛下しかいない。
「イザベラは何より大切な人です。お互いに次期国王として協力していきましょうね」
サイラス国王陛下の言葉と柔らかな表情に彼は全てを知っているような気がした。
でも、推測で行動して姉ちゃんが手に入れた幸せをぶち壊すようなことがあってはならない。
そして姉ちゃんは人を利用するような最低なことを言った俺のことも信じて、ルブリスを諭し俺を王太子に据えるよう言ってくれたのだと思った。
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