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23.それでは、あまりに可哀想です。(エドワード視点)

俺は風呂で温まり、着替えると舞踏会会場に戻った。


サイラス国王陛下の閉会の挨拶が、はじまるところのようだ。

本当はイザベラ様の側にいたいだろうに、今日の主役は彼なので席を外せなそうで気の毒になる。


「ルイ国の警備不良でライト公爵令嬢が誘拐されそうになったところを、お前が助けたそうじゃないか。でかしたぞ、これを明らかにしてルイ国に大きな借りを作ってやろう」


父上が嫌らしい顔をしながら俺に提案してきて、気分が悪くなった。

彼は俺が今、立っているのもやっとなくらい体調が悪いのにも気付きもしないのだろう。


「父上、それはサイラス国王陛下が僕に気を遣ってそういう噂を流してくれただけです。実際は、ライ国では見られない雪を見たくて僕がイザベラ様に雪景色の良いスポットに案内してくれるよう頼んだら、危険な目に遭わせてしまいました。この騒ぎが明らかになったらピンチになるのはライ国ですよ。そういえば、兄上とライト公爵の姿がみえないのですがどこに行ったのでしょうか?」


「ライト公爵には娘の再教育をするように命令したから、ライト公爵令嬢のところに行ったのだろう。ルブリスはどこにいるか知らん。お前がしっかり、ルブリスを見ていなければダメじゃないか。全く、役に立たない」


俺は父上の言葉にイザベラ様のことが心配になった。


彼女が今日から王妃の部屋に移動したということと、意識が回復したという話は聞いたが俺と同じように彼女の体も悲鳴をあげているはずだ。


そんな限界の体調の彼女を説教するようにと、ライト公爵を派遣する父上の非常識さにうんざりした。

父上は昼間、「ライ国を贔屓しないでルイ国の利益とサイラス国王のお心を最優先する」とイザベラ様が宣言したのが気に入らないのだ。


サイラス国王陛下の閉会の言葉がはじまった。


「皆様、今日は私の祝いの席に駆けつけて頂き改めてありがとうございます。本日より、ルイ国は成人年齢と婚姻年齢を18歳に下げました。かねてから、我が国の成人年齢と婚姻年齢は21歳と高すぎるという声があったので、国王になったら真っ先に早く結婚できるようにしようと思っていたのです。私もイザベラという愛する人ができて、彼女が21歳になるまで待つことなどできない、早く結婚したいと思い問題に着手する気になりました」


会場中に幸せそうな笑い声と歓声が起きる。

昼間のイザベラ様のサイラス国王陛下への公開告白の返事のようで、素晴らしい流れだと思った。


「本日はこれより、サプライズ結婚式として私の弟のライアン・ルイとエリス・ギータ侯爵令嬢の結婚式を執り行いたいと思います。700年にも及ぶルイ国の歴史の中で、初めて18歳の夫婦が誕生します。皆様、拍手でお迎えください」


サイラス国王陛下が爽やかに告げた言葉にどよめき共に、歓声が湧きおこる。


その時、会場の扉をそっと開けて入ってくるライト公爵の姿が見えた。

ライト公爵が足早に父上のところに来て、耳打ちしている言葉に俺は真っ青になった。


「ライ国王陛下、聞いてください。なんと娘の部屋にルブリス王子殿下が現れました。今、2人きりで部屋におります」

父上はその言葉を聞いてほくそ笑む。


イザベラ様になった姉ちゃんも、完全にこの世界の親ガチャに失敗している。


ライト公爵も父上も、兄上が身動きがまだ自由に取れないだろうイザベラ様に手を出すことを期待しているのだ。


「父上、僕はやはりイザベラ様に迷惑をかけたことの謝罪に行ってきます

俺がいうと、父上が凄い力で俺の腕を掴んでくる。


体力が完全に回復していないからだろうか、腕が折れそうな程の痛みがはしる。


「先にライト公爵令嬢を誘拐したりしたのは、ルイ国なのだ。ここでルブリスと彼女の間に何かあったら、その時のことを持ち出せば良い。本当は想いあっていた2人が結ばれたと主張すれば良いのだ」


「そんな事実はありません。父上、イザベラ様がそれではあまりに可哀想です」

俺は気がつけば、必死に父上に手を離すように訴えていた。


「感情的にならず、目的を見失わないところがお前の良いところだ。ライト公爵令嬢はどうも人の心に入り込むのが上手いようだな。冷酷なお前の心まで捉えてしまうとは、やはり彼女にはライ国のために働いてもらおう」


俺はひたすらに会場で一番の注目を集めるサイラス国王陛下を見つめ続けた。


心の中でイザベラ様の元へ急ぐように願いながら、テレパシーを送る。


「それでは、これから結婚式の主役をお迎えするに渡り、私はこれで失礼させて頂きます」


テレパシーが通じたのか、元々イザベラ様の側についているつもりだったのか、サイラス国王陛下は会場を出て行った。


「新郎新婦の入場です!」


ライアン王子殿下とギータ侯爵令嬢の結婚式がはじまる。

淡々とした印象のあったライアン王子は愛おしそうに、豪華絢爛なウェディングドレスを着た新婦を眺めていた。


バックミュージックもオーケストラの生演奏で素晴らしいものなのに、イザベラ様のことが心配で音楽が遠くに聞こえてくる。


その時、会場の扉が再び開き、目を輝かせたルブリスが足早に近づいてくるのが見えた。





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『私を殺す気なら、離婚してください』 tps://ncode.syosetu.com/n0529ih/">『サレ妻は異世界で次期皇帝から溺愛されるも、元の世界に戻りたい。』
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