21.生まれ変わった世界は気に入った。(エドワード視点)
姉ちゃんの復讐ができたから、死んでも後悔はなかった。
「エドワード、この子の名前はエドワードにするわ」
死んだと思って目覚めたら、ライ国の王子エドワード・ライとして生まれていた。
前世では必死に生きても、いつも周りが妨害してきた。
勉強を頑張って大学に奨学金で行って、将来は都市開発に関わる仕事ができればと思っていた。
俺は地元が嫌いだった。
地元の名士の白川家やヤンキーが幅をきかせている狭い社会。
だけれども、子供の自分にはその街を出ていく力がなかった。
エドワード王子として生まれてからは、努力すれば認められて楽しかった。
俺は前世で親ガチャにも姉ガチャにも当たっていたと思う。
ハズレたのは世界ガチャだと確信した。
身分制度がある世界で王子として有利に生まれていたのもあるが、下位貴族に生まれて努力してどんどん出世していくのも楽しそうだったなと考える程この世界が気に入っていた。
「エドワード、ルブリスはどうも勉強が苦手なようだ、お前が努力して支えてやりなさい」
周りの貴族は俺を誉めてくれたが、国王陛下である父上だけは俺の努力は全て兄ルブリスのためにあると見做した。
国王陛下も彼より優秀な兄弟がいるのに、長子相続の恩恵を受けて国王になっている。
「兄上は、勉強が嫌いというより、しないだけではないですか?」
「エドワード、臣下は君主の心を察し、どうしたら役に立てるかだけに集中しなさい。ルイ国の次期国王は現在11歳のサイラス王子になるだろう。もう、ルイ国のアカデミーの教育課程を全て終えていて、来年からはライ国に留学したいらしい。ちょうど、今、アカデミーの見学をしにライ国を訪れている。2人の妹君の見識を広めてあげたいということで、連れて来ているようだぞ。11歳で本当に人格者だとは思わないか?兄弟とはそうやって助け合うものだ、お前は大人になりなさい」
ルブリスはいつも自分のことばかりで、いつも偉そうにしていた。
自分を楽しませろとばかりに、話題も提供しようとはしない。
俺が提供した話題が理解できないと、すぐにむくれる。
彼こそ大人になるべきなのに、きっとそんな反論は許されない。
「サイラス王子の提案で、ルイ国は土地の区画整理をはじめたそうですね。道幅を広くとったりしたことや、各家庭の境界線がはっきりしたことで冬の除雪作業が格段に楽になったとお聞きました。ライ国の平民街も区画整理をしてはどうでしょうか? 今の街は道が入り組んでいて、気がつくと他人の家の敷地に迷い込んだりしてしまいます。区画整理をすれば、人々がもっと使いやすい街にできると思います」
俺はは幼少期にそんな提案をしたという、サイラス王子に憧れていた。
彼のすごいところは三男という不利な立場で、次期国王になると他国の国王からも思われているところだ。
「ライ国の平民街は今のままで十分だ。平民は今の街を使い慣れているだろう。生活を便利にしてやれば、王家にもっと何かしてもらえると期待するから面倒なことになる。それよりも、サイラス王子とルイ国の2人の王女に会って来なさい。ルブリスはライ国にとって重要なライト公爵家の娘と婚約させる。娘のイザベラはルブリスに夢中だ。ライト公爵家がルブリスの後ろ盾になってくれれば安心だろう。お前はルイ国の王女のどちらかを惚れさせて来い。国王にならないお前の妻にはルイ国の王女は過ぎる存在だ。しかしサイラス王子は切れ者で野心家だ。今のルイ国王陛下は領土拡大に興味がない。しかしサイラス王子が国王になれば、ライ国を侵略して来ようとするだろう。ルイ国の王女を我が国に取り込んでおく必要がある。流石に、妹を人質に取られていたら、ライ国を大切にせねばなるまい」
俺はエドワード王子として生まれ変わり、世界ガチャには成功した。
でも、親ガチャと兄ガチャには失敗したようだ。
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