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叶うラジオ

作者: 合雲チカラ

「おーい、リサ!」

よく聞く声で瞬間にリサは振り向いた。

「あ、優斗君」

日の当たる校舎の廊下で、リサはニッコリと笑顔で振り返った。

優斗、リサ、そして、あとの翔太と優香の4人は芸大美術学科のゼミの仲良しグループだった。大抵はこの4人で遊んだりと行動を共にしていることが多かった。流石に4回生になると、制作や論文もあるし、それより、就職活動もありで、と結構ストレスがあった。だからこそ、この4人でいると心が落ち着く、そんなグループだった。

「リサ、2日前に渡したあの古いラジオとそのボロボロの取説、内容は分かった?俺はダメだったな。文字も薄くて、よく読めなかったから、もう殆んど読んでないよ。大体あの昭和初期みたいなラジオも動かないだろう?」

優斗はグッとリサの顔に近づいた。優斗は好奇心が強く、少しヤンチャな感じで勉強は嫌いだったが手先は器用で制作に関してはピカイチ、一目置かれている美大生という感じだった。逆にリサは制作に関しては少し苦手だったが、頭の回転は速くてみんなに頼られる、けど、見た目では少し地味な感じだった。でも、オカルトは大好き女子大学生だった。

「うん。見てみたけど、正直よく分からない。手書きの取扱説明書っていうのも珍しいし。最後のページでも前理事長の話で願いが叶う日記みたいに書いてあったけど、その続きが破れているし、結論から言うと……ありえない話!って事ね」

そう言うと優斗に笑って見せた。

「そうか、リサが分からないなら誰も無理だな。だよなあ、願いが叶う!そんな事があれば誰も苦労しないよな、制作も論文も就職も!あっ、でも、なんか8という数字には意味がありそうだったなあ」

優斗も楽しそうに笑ってリサの肩を軽くポンと叩いて歩いて行った。

「……8」

一瞬リサが呟いた。

「ああ、なんか取説には【8】という数字が出て来たなあ、まあ、8番?8月?だからかもな」

チラッと振り向きリサに笑った。

「そう……8番……。あ、ところで優斗君、この話、明日の怪談パーティで話すよ。ちょっと盛っちゃうけど。だから、ネタバレしないでね」

後ろから楽しそうに言うと、優斗が急に振り向いて、

「あ、汚ねえ、俺が使おうと思ってたのに!」

悔しそうな表情でリサを見て笑った。

「でもさあ、このネタって盛ったら心霊物に最適だよな。大体、火事になった図書室の壁の中から出てきたラジオだからなあ、心霊の匂いプンプンしてるし、良いなあ、リサは。俺、怪談ネタ、考えないと」

優斗は羨ましいそうにブツブツ言っていた。

「教えて貰った私が勝ちね!でも、元々は優斗君と優香が見つけたのにね」

「そうだな、図書室で優香と論文の調べ物をしていた時に火事が起きて、最初は優香と二人しかいなかったから火事消すのに大変だったけど。その時、燃えた壁が崩れて、中からラジオが出て来たんだよ」

「でも、ラジオも取説もよく燃えなくて良かったね。でも、どうして壁の中にあったのかが不思議よね」

「まあ、そうだな。でも、火事には関係なさそうだし、誰もいなかったし。かなり古いラジオだったから、優香がもしかしたらメルカリで売れる?なんて言って持って帰ってきたから。でも、さすがに売るのは止めた。代わりに調べてみたんだけどね。俺ではダメだったから。そう思えばリサの物か」

やっぱり、とリサに笑っていた。

リサも頷くと、急に、

「まだまだ暑いね、夏は」

リサは廊下の窓側に行き、まだ眩しい太陽を手で避けながら4階から下を見つめた。そうだ、と言わんばかりに優斗も窓際に行き同じく下を見つめて、

「まばらだけど、クラブや俺たちみたいに調べるために夏休みを返上してる人間もいるんだなあ」

ハンカチを取り出して額に流れる汗を拭いていた。

「今日、優香は?」

「ああ、優香は今日明日バイト。アイツ論文大丈夫かな?たぶん、リサに色々と聞きに行くと思うよ。勉強、特に文章読むの嫌いだから、俺もアイツも」

そう言う窓を見てる優斗の横顔を見つめて、

「仲……良いね……」

リサはボソッと呟いた。

「え?」

優斗がリサに振り向くと、今度はリサが急に窓に眼をやった。

「あ、明日の……集合何時だったっけ?」

「えっと、晩の11時に翔太の家の前」

「あ、ああ、そうだったね。じゃあ、11時に。今から優斗君は?」

「今から図書室へ行こうと。どうして?」

「あ、いや、もし……ああ、でもいい。そ、そうね、一部は焼けたけど、その他は殆んど大丈夫だし。私もさっき図書室にいたから。じゃあ、明日の晩」

「ああ、図書室で怪談ネタでも調べ……じゃなく、論文だな」

そう笑って小さく手を振った。

リサは少し顔を赤くしたまま軽く手を振って廊下を進んで行った。優斗はしばらく、リサの黒髪のポニーテールが揺れているのをジッと見ていた。



「おい、優斗。優香ちゃんはまだか?」

翔太は少しイラつきながら優斗に言った。

「まだだな。優香が遅刻する事はよくある事じゃないか。まあ、そろそろ来るよ」

とは言いながらも11時5分になっていた。5分オーバー?優斗は仕方なく携帯を取り出し優香にラインをした。翔太は他の点では何も気にもしないが、昔からどうも時間だけは五月蠅かった。

「あと5分くらいで着きそう」

優斗が翔太に言うと、翔太はジッと腕時計を見ていた。

「時間は守らないと。今回はリサちゃんも時間を気にしていたんだから」

「あ、そうなの。リサも今日は時間があった?」

優斗は翔太の言葉を聞いてリサに振り向いた。

「あ、いや、大した事は無いけど、明日の朝から用事があって、だから、早めに帰ろうかと……」

リサは言い難いように下を見つめたまま話した。

「そうか……もうそろそろ……」

その時、

「ごめーん!ごめんなさい!」

優香が茶髪を振り乱して走ってやって来た。

「おい、優香。翔太がお怒りだぞ」

優斗がチラッと翔太を見ると、翔太は急に何も無かったかのように頷いていた。それを見ていたリサがクスッと笑った。

「ごめん!バイトがちょっと押して!ちょっと、優斗も謝ってよ!」

優香は優斗の腕を軽く引っ張った。

「何で俺が謝らなきゃいけないんだよ」

優斗は顔を顰めながらも翔太に手を合わせた。

「もういいよ。いつもながらだなあ、お前ら」

軽く微笑んで車へ向かった。翔太の後ろにリサが無表情でついて行った。

優香はチラッとリサの表情を見て、

「リサ……怒ってる?」

優斗の耳元に囁くと、

「いや、大丈夫」

あっさりと答えが返ってきた。優香は頷くと、車の方へ向かった。

「なあ、翔太。どうして怪談するのに廃病院に行く必要があるんだよ?」

優斗は助手席に座った。

「何言ってんだよ!怪談だぞ!年に一度だけだぞ!怖い方が楽しいじゃないか!」

そう言う翔太の横顔は活き活きしている様に見えた。大体、翔太はリサと同じ心霊物が大好きだった。だから、突然4日前に優斗が怪談パーティでもしようと言うと、すぐに会場は任せろっていう感じだった。

優香は翔太の言葉を聞いて『何も本格的にしなくっても……』と思ったが、さすがに遅刻した自分に発言権は無く、唯々何も言わずに後ろの座席に座った。横にはリサが座った。

「あ、リサ、荷物あるの?それ何?」

優香がその袋を触ろうとするとサッと反対側へ移した。

「これ、怪談の小道具」

リサが一言言うと、すぐさま、運転席から振り返った翔太が、

「さすが!リサちゃん、俺と同じだ!恐怖に手段は無い!今夜は俺をビビらせてくれ!」

叫ぶとエンジンを掛け、廃病院へ走り出した。

優斗は窓の外を見ながら心の中で『こいつは変態だったんだ。これも一つのオカルトかな』新たな一面を見つけた気がしていた。

「ねえ、翔太君。その廃病院ってどれくらいかかるの?」

優香が尋ねると、翔太はルームミラーでチラッと見て

「近いよ。あと10分くらいだな」

そう言って前を見た。

「ふ~ん」

優香は尋ねたけれど、ここから先は、という言葉は無かった。ただ聞いただけだった。

「なあ、翔太、お前、こんなに力入れてるけど、怖がる事で何か良い事でもあるのか?何か夢が叶う、とか?あっ、例えば理事長の娘の愛理ちゃんに近づける、とか!だって、前にお前、あの愛理が好きだって言ってたじゃん!」

優斗が茶化して言うと、急に車が左右へ動いた。

「な、何言ってんだよ!」

「え、そうなの、翔太君!でも無理だよねえ、だって、愛理さんってまるで女優さんみたいに綺麗だし。それに理事長の一人娘だから金持ちでもあるし。世界が違うって感じね!接点は何処にも無いよね!」

優香は、ここぞとばかりに毒を吐いた。勝ち誇った顔をしていた。

「俺はそんなこと言ってないだろ!勝手に優斗が言っただけだからな!ま、まあ、でも愛理さんは……いいよねえ。俺の推しだから!」

それを聞いて、みんな笑ってしまった。

「そうだよ!あれは誰が見ても『高嶺の花』だから、な。天変地異でも起きない限りは!」

優斗は振り向いて優香とリサに顔を向けて微笑んで言った。優香は翔太と同じ笑っていたが、横のリサを見ると、さして笑っているようには見えなかった。優斗はその表情が気になったが、敢えて何も言わず、前を向いた。

「さあ、こんなくだらない話をしている間に着いたぞ」

翔太は廃病院の横に少しだけスペースがあって、そこに車を止めた。

ヘッドライトに映る病院、いや、将に瓦礫の塊のような建物が眼に映っていた。一瞬、皆が言葉を失ったように静まった。心音すら聞こえた気がした。

「何か……怖い……」

優香がポツリを呟いた。その言葉に3人とも無言で頷いていた。

「さ、さあ、降りるぞ」

ライトを消した。更に漆黒の闇に包まれた感覚に襲われた。鼻先すら何も見えなくなった。

「ほら、これを」

翔太がライトを点けた懐中電灯をそれぞれに渡してくれた。

「ありがとう。翔太君、気が利く!」

そう言うと、優香は嬉しそうに廃病院の周りをライトで照らしていた。

「さあ、入ろう。足元が悪いからライトで下を照らして歩いて」

「え?、翔太、中に入るのか?」

「何言ってんだよ。外で怪談なんか出来ないだろ?あ、もしかして、優斗、お前、ビビってる?」

翔太は半笑いの顔で優斗を見ると、

「ビビってねーし!」

優斗はライトで自分の顔を下から照らして笑った。

一斉に皆が笑い合った。

しばらく悪い足場をゆっくりと進むと翔太が照らした部屋の扉が見えた。

「ここだよ。ここが一番綺麗な部屋なんだ。さあ、入ろう」

リサが部屋の中に入ってライトで回りを照らしてみた。タイル張りの殺風景な部屋だった。

「この部屋は……」

優香は眼だけをキョロキョロと見ていた。

「ここ、手術室。でも、手術台とか照明が撤去されたようだけどね」

翔太は普通に話しながら、取り出したレジャーシートを敷いてロウソクを置き、着々と段取りをしていた。

「さあ、ここに座ろう。ほら、ビールも持って来たしね」

翔太は嬉しくてタマラナイ感じだった。それを横目で見ていた優斗は『こいつは本物の変態だ』確信を持った。

ロウソクの周りに4人が座った。炎の揺れで夫々の壁に当たる影が揺らいでいた。ともすれば4人の影が5つに見えるような、そんな気がするほど気持ち悪く感じた。

とりあえず、冷えたビールに口を付けた。普通ならこの夏に冷えたビールはご馳走と言いたいが、この雰囲気のせいで感情が冷え過ぎて、それ以上飲めなかった。

「さあ、始めようか。まずは俺から話そうかな?」

翔太は声を潜め、それぞれの顔を見て、問題が無いかを確認した。特に3人の反応は無かった。

「じゃあ、俺から始めるぞ。まずは、何度か来たこの廃病院にまつわる話だけど……」

翔太は練りに練った話を続けていた。優斗、優香、リサのそれぞれの一瞬に歪む表情を見て翔太は喜んでいた。十分満足を感じた翔太は少しニヤっとして話を終わらせた。3人とも、ほんの少しだが、軽くため息が出た。

「さあ、次は誰がやる?」

翔太が3人の顔を見た。すると、リサが、

「じゃあ、次は私がするわ」

スッと手を挙げた。リサの後ろの壁に映った腕の影がニューッと伸びた。

「お、さすが!リサちゃん!小道具も持って来るくらいだからな、期待だな」

リサはこっくりと頷いた。

「今日持って来たのは」

リサは袋から取り出したのは見た目も古い大正もしくは昭和初期のような木製のラジオだった。優斗はそれを見て頷いた。優香はそれを見て、

「あ、それ、あのラジオ!」

驚き、優斗に顔を向けた。が、優斗は気が付いてなかった。

「そう、これは5日前に図書室でボヤ騒ぎがあった時に見つかったラジオなの」

「ああ、それか!優斗が言ってた、焼けた図書室の壁から出てきたラジオってやつだな」

翔太はリサが持っているラジオを見つめて言った。

「でも、リサ、それ、聞こえないよね。ラジオの形はしてるけど」

優香は少し馬鹿にした顔でリサに言った。しかし、リサは首を横に振った。

「いいえ。聞けるよ。ちゃんと」

「え、リサ、それ、聞けるの?優香とこのラジオを見た時に電源が電池もコードも無かったから動かないと思ったよ」

優斗は驚いたように優香に頷いて見せた。

「え、ちょっと見せて」

翔太がリサの手からラジオを取ると全ての木製の面を触ったり、ライトを当ててみたりしていた。

「確かに、電池が入る蓋も見当たらないし、コードを差す穴も見えない……、本当にこのラジオ?鳴るの?」

翔太は不思議そうにリサに返した。リサは現在時間を確認した。現在時刻23時57分。

「今からこのラジオが鳴るのをお見せするね。このラジオ、23時59分59秒、ちょうど今日と明日のグレーな時間。その時間ピッタリにスイッチを押すの。そうすると」

リサは携帯を見ながらスイッチに触れていた。3人とも、固唾を飲んだまま、リサの指先を見つめていた。

「あ、今よ」

リサはスイッチを押した。10秒ほど何の音も無かったが、それからは微かに人の声が聞こえてきた。

「え、嘘よ!どうして鳴るの?」

優香は横にいたリサから少し離れた。リサは静かに人差し指を口に当てた。優香は耳を塞いだ。翔太は少し口が開いたままになっていた。

段々と声が聞こえてきた。

【……さあ、今晩は久しぶりの「叶うラジオ」だよ!みんな元気だったかい?今晩の進行は私、DJ西上だ!今日も楽しくね!】

元気な男の声が聞こえてきた。

「た、確かに鳴ってる……でも、これってFMなの?AMなの?それすら分からない……どうなってる?」

翔太は驚きというよりは恐怖を感じていた。もっとも恐怖が大好きだった翔太だが、眼の前の不思議に少したじろんだ。リサを含め皆が、このラジオをただ聞いていた。

【さあ、今日、エントリーは無いの?もっともっと盛り上げてよ!無いの?しょうがないなあ、じゃあ、今回は8名で締め切るよ!】

気持ちの悪いラジオから楽しい声が聞こえてくる違和感。誰もが感じていたはず。ただ、優斗とリサは表情を変えなかった。

【リスナーからも、もっと頑張れってメールが来てるよ。しょうがないなあ、早速の何年ぶりかの、この「クイズ・死に際発見!」コーナー!拍手!拍手!】

優香と翔太は嫌な顔をしながら、お互い眼を合わせていた。ラジオは続いていた。

【初めて聞いたリスナーに説明するんだけど、クイズはいたって簡単。何番目かのエントリー者が眼の前に……死ん……人が……】

声が途切れ途切れになった。優香はチャンスとばかりにラジオを消そうと手を掛けると、リサがすぐさま手を掴み、

「ダメ、ダメよ!だってチャンスだから」

そう言って、突然、袋から包丁を取り出し、優香の腹を刺した。

「えっ?」

優香はリサの顔を見て一言声を出すと急に地面に倒れこんだ。優香の周りにはすぐに赤い液体が広がった。

「あーっ!」

翔太は声を上げ、

「何するんだ、リサちゃん!なんで、こんな事を!」

翔太は優香を抱き起そうとした。

リサは眼を丸くしたまま、

「だ、大丈夫……大丈夫……」

ブツブツ言いながら震えていた。

「何をするんだ、リサ!翔太、すぐに警察と救急を呼んできてくれ、頼む!すぐだ!」

優斗が叫んだ。

「わ、わかった!」

翔太は震える手で携帯を取り出して話しながら車へ走って向かって言った。」

優斗は翔太が走っていく姿を眼で追いながら優香の体を抱きしめた。微かだが息はしていた。優斗はリサを見た。

「だ、大丈夫!だって、あの取説には刺しても死ぬ事は無い、って書いてあった。だ、だから、だから……」

リサ自身で刺したにも拘らず動揺していた。

「どういう事だ!人を刺して死なないわけないだろう!当たり前じゃないか!優香、大丈夫か?」

優香を抱きしめながら叫んでいた。

「だ、だって……」

リサは血が付いた両手を見ながら同じ言葉を続けていた。

「リサ!説明しろよ!どうしてこんな事をしたかを!見ろよ、優香を!」

「取、取説には、刺しても死なない……って……」

優斗は同じ言葉を繰り返すリサをチラッと見て一瞬微笑んだ。リサも優斗の突然に変化した表情を見て言葉に詰まった。

「見ろよリサ。優香が苦しんでいるぞ」

優香は下から優斗を見つめたまま、

「い、痛い……、助けて、優斗……」

微かな声で涙を流していた。それを見て優斗は微笑むと大きく頷き、

「楽にしてあげるよ、優香」

優香のお腹に刺さった包丁を更にグッと差し込んだ。

「うっ、何で……優……斗……」

優香は眼を丸く開けたまま動きが止まった。優斗の手には更に赤い液体が着いていた。優斗は動かなくなった優香の体を無造作に地面に置き、ユックリと立ち上がった。

「でも、殺したのはリサだ!翔太も見ていた。なあ、そうだろ」

優斗は急に笑い出した。それに驚いたのはリサだった。まるで意味が分からなくなってきた。ただ、喋る事も出来ずに震えて優斗を見ていた。

「どうした、リサ?なら、俺が教えてやるよ!」

優斗は満足そうに高らかに笑うと話を続けた。

「リサ、お前、どうして優香が死なないと思った?理由は、取扱説明書だよな、このラジオの」

「そ、そう。でも、どうしてそれを?だって、優斗君は取説をちゃんと読んでない、って言ってたから」

優斗は微笑みながら頭を左右に振った。

「俺は、おそらくリサ以上に読み込んだよ、この取説を!だって、この中には凄い事が書かれていたから。お前もそれを読んで、それが本当だと確信したから……だろ?」

リサも震えながら立ち上がって頷いた。

「お前はその取説の後ろのページに書かれていた今の理事長の父親である前理事長の日記を読んだんだよな。その成功例を!」

リサは横たわった動かなくなった優香から一歩離れた。

「た、確かに読んだわ。最初はこんな事がある訳ないと思っていたけど、少し調べてみると日記の内容は本当に思えたのよ。何もかもが事実と符合していた」

リサは話しながらも時折雑音がするラジオの声を気にしていた。

「前理事長がまだ総務課長だった時の、あの図書室での火事。そこには7人が死んでいた。そこに助かった前理事長もいた。7人の名前も事実と合っていた」

リサの言葉に、優斗は腕を組んで、正解だ、と言わんばかりに頷いていた。

「そして……、その火事を起こしたのが前理事長!このラジオの取説通りにすれば2つの願いが叶う!この叶うラジオのおかげで急に飛び越して理事長になった事が書かれていた。あり得るんだって。だから、私も……」

優斗はリサの顔に近づいた。

「リサは何が欲しかった?何を2つ願うの?」

優しく囁くと肩をポンと叩いた。リサは何も言えずにしていた。

「じゃあ、俺が当ててあげるよ。1つは多分……俺だよな。なあ、リサは俺が好きだったんだろ。だから、優香が邪魔になって殺した?」

「ち、違う!た、確かに優斗君が好きでした。1つ目の願いは優斗君よ。でも、殺すつもりは無かった!殺すのではなく優香から二度と近づかないようにしたのよ、2つ目の願いはそれよ」

それを聞いて優斗は腹を抱えて笑った。

「リサ、お前、俺が好きだからって、こんなショボい願いを!もっと人生の先を見ろよ!お前は頭が良いのに感情に流されてどうするんだ」

笑いが止まらなかった。

「好きだったのよ、優斗君が!いつも優斗と優香と仲良くしていると、嫌で嫌で、今度は私と……」

ここで、リサは言葉を詰まらせていた。

「まあ、それは以前から感じてたよ。リサが俺を見る目を見れば、な」

「で、でも、どうして!取説には死なないって書いてあったのに!人を殺すくらいなら、こんな事はしなかった!」

リサは涙を流し後悔した。そして、死んだ優香に、

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

何度も何度も頭を下げていた。

「でも、どうして、優香にとどめを刺すようなことを……ど、どうして?」

リサには優斗の行動が理解できなかった。本当に苦しむことから解放するために?楽にするために?再度刺した?でも、その時の優斗の表情に疑問を感じていた。

「え?まだ、分からないの?だから、こんなショボい夢を見るんだよ」

そう言われてリサは優斗の顔を見てグッと睨んだ。

「お前、何度も死なないって言ってたけど、その取説にそう書かれてたの?本当に?」

「だ、だって、ちゃんと書かれていて……まさか……」

優斗は、リサの困惑した顔を見て急に手を叩きながら笑い始めた。

「リサ、本当の事を教えてあげるよ。取説には〈死なない〉なんて書かれてなくて、逆に、死ななければ願いは叶わない、と書かれていたんだよ」

「え、そんな事は書かれてなかった……」

「まだ分からない?俺たちは美術学科だよなあ。しかも、俺は制作に関しては学科内でも優等生だろ。こんな改ざん、俺にしては朝飯前、しかもかなり上手に、ね!」

リサはただ、目を丸くして優斗を見続けていた。

「ちなみに、あの取説の後ろには、前理事長が自分の成功の為に火を点けて7人を殺したことや、その良心の呵責に苛まれた苦悩も書かれていたなあ。ただ、リサが嫌がるような面倒な所は破っちゃった、ほらっ、これ!」

そう言うとポケットから畳んだ紙をリサに見せた。

「だから、お前が読んだものが正解とは限らない!俺が何カ所か改ざんしたからね。どうだ!分からなかっただろ。お前とは違い勉強はダメだけど、用紙を古くしたように加工したり、筆跡をまねて書いたりと手先は器用なんだよ、俺は」

「ま、まさか、そんな事を……あなた、一体何を……」

リサは力なく崩れるように膝を地につけた。

「まずこの取説が古くて、しかも手書きだったことから、俺は改ざんできる、と思ったんだよ。そして、誰かを利用しようとね。一番のネックは人が死ななければいけない事だった。前理事長のようにね。でも、俺にはできない、そこで」

優斗は座り込んでしまったリサの後ろからゆっくりと回りこんだ。

「どうリサに優香を刺してもらうか、もちろん、死なずに傷は治る、と書き込んでおく。そうすれば何も無かったように優香も戻り、願いだけが叶う!そう誘導したんだよ、俺は!」

リサの背中を見ると全身が少し震えているように見えた。

「あなたは何て人なの!恋人を死なせても自分の願いが叶えたいの!この人でなし!」

優斗は急いでリサの前に回った。そして、

「優香を刺しておいて、よくも俺の事を言えるよな!本当はお前も同じなんじゃないか?強欲な奴め!」

「ち、違う、私は……」

やはり返す言葉が無かった。確かに優斗が言った〈欲〉があったからだった。

ただ、唇を嚙み、じっと優斗を睨んでいた。

「このラジオ、どうした?ここからが一番聞きたいところなのに!」

優斗はもうリサの事には気にもせずにラジオを持って叩いていた。

【お、オーケー……、ど……、さあ!】

ラジオの声が再び聞こえてきた。優斗は嬉しさにラジオに抱えて、

「聞こえるぞ!さあ、クイズはどうなってる?リサも聞けよ!」

優斗は大きく頷いていた。

【〈クイズ・死に際発見!〉の問題は……今、死んだ瞬間の死体を最初に発見した人は?エントリーナンバーは何番の人?っていう問題だけど、皆、知ってるよなあ。だって、取説に書いてあるよなあ、まあ、一応言うけどぉ】

ラジオを聞き入っていたリサは不思議な顔をした。問題が続いていた。

【大体、エントリーナンバー1~6までは、そこに居ないので見ることが出来ない!だから、取説にも夢が叶う人のナンバーは……もう書いてあるけど!あ、ちなみにエントリーが複数人の場合は若い番号だよ、でも……意味あるのかなあ?】

「そんな問題じゃなかった。そんな問題、書いてなかった!書いてあったのは、ただ、8番目の投稿者が人を刺す!ただ、刺された人もすぐに蘇り、そして、願いが叶うだけ!って……この方法で前理事長は成功した……って」

どんどん声が小さくなっていった。

「あ、そうだ、ごめん、言うのを忘れた!リサが読んでいたのは、さっき俺が言った改ざんされた文章だったよ!本当の問題の部分は分からないように破っちゃった!」

優斗は楽しくて仕方ないようだった。逆に、リサはもう力無く再び崩れてしまった。

「リサ、最後だぞ!答えは何番だ?よく聞いとけよ!」

【今回のエントリーナンバーは……エントリーナンバー7番!ラジオネーム:タナーボッターさんに決定!おめでとう!願いが叶います!拍手!拍手!8番目の人、ごめんね!でも、これって、最初から7番目ってなってたから、イカサマだよな、ホント!でも……これがクイズ・死に際発見!】

ラジオを聞いてリサは全身に電気が走ったようにビクッとした。

「ま、待って、エントリーナンバーは8番でしょ?だって、取説にも8番って……」

リサはそう言いながら優斗の顔を見た。優斗は満面の笑みで大きく頷いた。

「またまた、ごめんなあ、リサ!取説には7番目と書かれてたんだけど、何度も言うけどちょっと斜めに線を入れて7を細工して8に変えたんだ。よかったよ、取説が古いうえに手書きで!ただ、ちょっとバレるかも、と思い、念の為、この間廊下で会った時に「8」をリサに印象付けたんだよ」

それを聞いて、リサはハッとした。

「た、たしかに。優斗君が8を言ってた。その日のラジオを聞いた時に最後の投稿者は7番だった。だから、ちょうど私が投稿すると8番目になる、私の願いが叶うんだと、そう思ってた……」

悔しくて悔しくて何度も地面を叩いていた。もう手が血で滲み始めていた。

「え?もしかして、その7番目は!」

リサは下から優斗を睨んだ。

【おめでとう!タナーボッターさん!聞いてる、このラジオ?聞いてたら声を出してちょうだい!今から取材行くから!ねえ?どう?】

優斗は少し驚いたが、すぐに、

「DJ西上さん!ここです!」

声を出して周りをキョロキョロとし始めた。すると、すぐ後ろから人の気配を感じて振り返った。

「君か!君がタナーボッターだな!おめでとう!」

突然、30代後半に見える男で結構原色でダボついた服を着ていて、よくみるラッパータイプの人が現れた。西上はサッと手を出し握手を求めた。優斗はリサの事などもう気にもせずに、ただ、喜んで握手に応じていた。

「一応ラジオなんだけど、ここにインカムを付けてるから。リスナーにもネットで見れるようにしてるから!ほら、結構おめでとうのメールやラインが来てるよ!」

優斗はヒーローになった気がしていた。

「え、新鮮な死体?あ、あれかな、あの横たわっている女の子かなあ?」

男は死体に顔を向けて、その後、優斗の耳元で

「いや、結構リスナーが死体、見せろってうるさいからさ」

囁いた。

男の耳から、いろんなリスナー情報が入っているようで、その要求に対応しているようだった。優斗はただ圧倒されてオドオドしているだけだった。

「え、地面に座ってる女の子?あ、そこに座ってる子?」

新たな要求があった。男はリサにマイクを向けたが顔を背けて無言でいた。男は困って、優斗にマイクを向けた。

「ああ、あの子はリサと言い、今回のエントリーナンバー8番の子ですよ!」

優斗は得意げにインカムに微笑んだ。

「え、ちょっと待って!8番って言うと確か……ラジオネーム:ドリームリサちゃん!」

男はリサに顔を向けたが、相変わらず顔を背け、優香の死体を見つめていた。優斗はリサのラジオネームを聞いて笑った。

「リサ、お前、本当に痛い奴だなあ。夢見るリサちゃんってことだよな!夢なんか終わったのに!バカだよな!」

今度は男がそれを聞いて、

「タナーボッターさん、それはダメです!規定ではエントリーした人を侮蔑する事は違反になります。うちの霊界局のコンプライアンスはうるさいんです、今の時代は!規定違反は失格とみなされますよ!気を付けて」

たしなめた。

「わ、分かりました」

「オーケー!じゃあ、タナーボッターさんの願い2つを教えて!」

雰囲気をガラっと変えて、話を進めた。

「俺の願いは、一つ目は理事長の娘である豊山愛理と結婚する事!」

「おお!リスナーからも今、反響がありますよ!いい女との結婚は男の夢ですよねえ!」

リサはそれを聞き、優斗に振り向き、

「それがあなたの夢なの!人を貶めてまで夢を得たいの?」

今まで以上に眼が充血してきた。

「当たり前だ!翔太が憧れるのも分かる筈だ!こうでもしないと愛理との接点すらない!けど、これで俺は愛理を手に入れることが出来る!ましてや、理事長は財力もある!一石二鳥というわけだ!俺がまともに働いたって大したものにはなれないんだよ!分かるだろ!」

相変わらず不敵に笑っていた。

「おっと、これは修羅場なのかな?」

男は笑って優斗とリサに尋ねると、優斗は同じく笑いながら頭を左右に振った。

「なるほどね!じゃあ、二つ目の願いは?」

「二つ目は……」

そう言ってリサに指を差した。

「そのリサから二度と会わないようにしてもらう!」

「何よ!どういう事よ!」

「まあ、睨むなよ。だって、俺と愛理が結婚すると、お前はきっと俺たちを邪魔しに来るだろ?俺、そういうの嫌だから、最初から排除して貰おうと思って。その方が今後安心だから」

「どこまでも腐った人ね!」

リサが吐き出すと、すぐさま優斗が反撃を返した。

「そんな腐った人間の為に、お前は優香を殺したんだ!それを忘れるな!まあ、とりあえずは殺人で刑務所に行ってもらうか!」

「本当に優香にとどめをさしたのは、あなたじゃない!」

「いやいや、誰もそれを信じないよ、だって最初に刺したのはリサだからな。翔太もそれを見てるしな。死人に口なし!」

リサはもう力が無くなって反応する事すらできなくなっていた。優斗とリサの掛け合いを見ていた西上は、

「いい!いいよ!こういうのうけるんだよ!リスナーも喜ぶんだよなあ!」

拍手を何度もしていた。

「ちなみにラジオネーム:タナーボッターの意味は金持ちの娘さんと結婚、つまり、逆玉!ってことよね。タナーボッターは「棚ぼた」をモジったって事だね、なるほど!」

優斗は何度何度も頷いて親指を立て「いいね」を繰り返していた。

「さあ、では、そのタナーボッターさんに願いを……」

そう言った時、男は一瞬動きが止まった。

「え、ちょっと、待って、どういうこと……」

男は急に声のトーンを変えて少し優斗から離れて行った。優斗はその様子を遠くからじっと見ていた。夢が叶う、その瞬間を喜ぶ段取りを心の中でしていた。

「あ、はい、はい!なるほど!それは面白いですね!」

男の明るい声が近づいてきた。そして、優斗の前に立つと顔を、つまり、インカムで優斗の顔がハッキリ映るようにした。

「先程、何件かのリスナーからの苦情が来ていました。先程、局内で検討をしていましたが、結果が出ました!」

苦情?結果?優斗は何を言っているのか分からなかった。

「結果は……エントリーナンバー7番のタナーボッターさんは資格剝奪となりました!残念です!」

男はそう言いながらも微笑んでいた。それに不満を持ったのが優斗だった。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!どうして、資格剥奪なんだよ!理由を教えろよ!」

優斗は男の胸ぐらをつかんできた。

「ちょっと、待って、待ってよ!今から説明するから!」

男は優斗の手を振りほどいた。優斗はまだブツブツと不満を口にしていた。男はその様子をインカムで撮りながら説明を始めた。

「指摘は取扱説明書を破ったり、改ざんをしたからです!どんな取扱説明書にも必ず『大切に保管してください』の一文がある筈!その「大切」が規定違反となります!よって……失格!」

男は優斗に指差してコールした。

納得できなかったのが優斗だった。

「ふざけるな!だいたい、お前たちは」

再び、男に掴みかかったため、男は、

「やめなさい!」

そう一言叫ぶと、急に優斗が動かなくなった。

「ど、どうして動かない……なぜ動けない?」

優斗はその場から動けずに、ただ、口だけが動かすことが出来た。

「暴れるので少しジッとしておいてね」

いわば、男の神通力だった。

「さあ、続きを始めよう!皆さん、展開がありました!タナーボッターさんが失格となったため、急に繰り上げとなり」

男はそう言うと座り込んでいたリサに顔を向けて、

「エントリーナンバー8番のドリームリサさんに決まりました。おめでとう!拍手!拍手!」

男がリサの手を引き上げ、立たせた。リサは意味がよく分からず膝が少しガクガクしていた。

「こんなの何百年もして来たけど、初めてだよ!リスナーも大喜びです!個人的だけど、これは数字が上がりますねえ!」

「え、じゃ、じゃあ、私の願いが叶うの?」

少し、怯えるような声で聞いた。

「もちろん!ドリームリサさんの願い2つ叶えます!まずは一つ目、どうぞ、教えて下さい!」

リサは嬉しそうに笑顔が蘇ってきた。

「優香を刺した罪を無しにして下さい」

「一つ目は、つまりドリームリサさんは罪に問われないようにする、という事ですね。了解!では、二つ目は?」

一瞬優斗と眼を合わせた。しかし、優斗は顔を背けた。

「二つ目の願いは……今の優香と優斗を取り換える!」

優斗は急に振り向き、リサを見た。

「リサ、お前、何を考えているんだ。俺と優香を?」

「ドリームリサさん、これは、どういう事ですか?」

今まで見た事が無いような嬉しそうな顔で、

「ええ。今死んでいる優香が優斗に変わる!つまり、死ぬのは……優斗、地獄へ行って!」

ユックリと時間をかけて優斗を見つめた。

「ちょ、ちょっと待て!待ってくれ!という事は俺が死ぬという事だよな!なあ、リサ、考えろよ!こんなショボい夢じゃなく、俺と、俺と一緒に人生を送ろうよ!2つも夢があるんだぞ、何でもできるんだぞ!なあ!」

動かないまま優斗は叫び続けていた。

男は優斗の声を遮ろうと、

「ドリームリサさん、これはファイナルアンサー?」

リサは男と眼をジッと見て、はっきりと、

「ファイナルアンサー!」

大きな声で叫んだ。優斗が動けるようになった途端、地に崩れ落ちた。

「今、すべて、叶いました」

男がそう言った途端、さっきまで死んで横たわっていた優香が、一瞬にして今度は優斗が横たわり、その腹に包丁が刺さっていた。ただ、優斗は微かだが口が動いていたが直ぐに止まった。見ると、リサの前にはいつの間にか優香が立っていて、

「ねえ、どうして、どうして優斗!どうして自殺なんてことを……ねえ、」

泣き叫んでいた。

リサは優香が言った話がどういう事か分からず、横にいる男を見た。

「ちなみにこの私はエントリーした人しか見えませんので、そのお友達さんには見えませんし、声も聞こえませんのでご安心を」

そう、話を付けるとリサに頷き、

「罪を消す、という事で先程の件は自殺に変えました。手っ取り速いでしょ?友達の記憶も変えてます。そして、地獄行きですが、それも問題はありません。実は私DJ西上つまり「にしがみ」ですが、字の順番を替えると「しにがみ」となり、私、本当は死神なんです。ラジオの電源も実は人間の欲望や人間の魂を電源としているんです」

男は満足そうにニコニコしていた。

泣き叫んでいた優香に、先程警察や救急を呼びに行っていた翔太が戻って来た。

「なぜだ、どうして自殺なんかするんだよ、優斗!」

翔太は優香同様涙を流しながら叫んでいた。

警察や救急隊が傍によって優斗の体を見てみたが皆首を横に振った。

リサはその様子を見て全て終わったな、と思った。ソッと、横にいる男の傍には優斗が死神に首を掴まれたまま立っていた。リサは『自業自得』そう心の中で呟いた。

「これでドリームリサさんの願い完了となりました!」

そう言うと男は古いラジオを手に持った。

「西上さん、いや、死神さん。そのラジオは?」

「ああ、これは、また、潜在意識にある欲望が強い人に渡します。このラジオは神出鬼没ですからね。では、また……あ、ドリームリサさんにはもう必要ないかな?」

そう言うと、突然、死神はインカムを取り外して自分を映して叫んだ!

「もしかしたら次は……あなたかも!その時はこの取説に従ってエントリーして下さいね!では、それまでは……see you again!」

微笑んで手を振りながら、ゆっくりと消えていった。

                                       了


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