06 隕石のはじまり
説明回です。
西暦2千年代なかば。
場所はアメリカアリゾナ州。フェニックス・スカイ・ハーバー国際空港だった。
そこに、いっぷう変わった隕石が落下した。
衝突したときの衝撃がとても小さい、おかしな隕石だ。
いくつも落ちたがそのサイズはまちまちで、小さなものは電子レンジ大(30cm)。
大きなものは2階家大(9m)ほどあった。
本来、隕石の衝突エネルギーは大きい。9m級ならその衝撃は計り知れない。
大地震や二次的な火山活動を誘発し、津波は陸上を飲みつくすことだろう。
舞い上がった粉塵は大気をおおって、数百年、太陽の光をさえぎる。
生物は大半が死滅。生き残った者がいたとしても、絶滅の道を歩んでいく。
だがこの隕石は違った。十分な質量はあるのに地上への影響が少ない。
家サイズでもせいぜい大砲の弾ほど。微々たる衝撃でランディングした。
ブレーキ減速しながら落ちてくる隕石は軽量隕石と呼ばれた。
落ちかただけでない。範囲を限定するという習性ももっていた。
軌道計算したかのように、9割ほどの隕石がひとつ場所に集中する。
直径1200メートルほどの円内に、狙ったように収まった。フェニックスを皮切りに北半球のあらゆる場所に落ちることになる。
国・地域を問わない落下地は隕石集中地帯と名付けられた。
まだある。1度の個数がきまっていた。
28~109発ほどが落ちると、テイアゾーンは場所を変える。
飽きたから引っ越すのだ――と言わんばかりに、
テイアゾーンは予測不能。地上のあらゆる場所にランダムに出現した。
テイアゾーンとなった地は荒廃し、復旧には数年を要した。
そのいっぽう。
ライトテイアは、不思議で奇妙な、人の想像をこえた資源をもたらした。
地上には存在しない鉱物や生物。そういったものを運んできた。
・恩恵隕石
地球上にはない石(宝石や部品として)で経済的に有用な物体。
・未確認生物
20cm以下の半透明ゼリーの生物。そこらの物体を模した形になる。
知性があり意思の疎通ができる。
これらは高値で取引された。破壊を対価に莫大な富を得た。
ほとんどが有益だったが、危険な物もあった。
恐怖と富。ライトティアは奇妙な隕石だった。
誰もが隕石を恐れ、同時に期待した。人類はこの現象を受け入れた。
はじめてのライトティアが落下してから16年の歳月が流れた。
日本 北海道札幌市豊平区 豊平公園
7日前。日本で2度目となるテイアゾーンがここに発生した。
1発目が落ちると、ただちに避難がはじまる。2時間後には住民はいなくなった。
危険区域は、テイアゾーンに認定される。
高い鋼材で囲まれて、関係者以外、入れないようにした。
おびただしい犠牲がでたが、1回目の経験がいきた。
災害に敏感な国民は、2年前に発生してから準備を重ね、次の落下に備えていたのだ。
10メートルもの怪物が出現したことだけは想定外だった。