27 救出
巨大の七光は、樹木星人を見上げる。人型時と較べれば小さいが差は、4階マンションとタワービルはある。腕はずっと上にあってKATUもきっとそこだ。
大はそれ自体が武器でも、素早さで小が勝ることがある。翻弄して動きで、倒してしまう物語だ。現実はサイズの差は絶対。
ネズミが人を苦しめたのは、増殖力と内に秘めたウィルスであって、1対1の勝負じゃじゃない。
大きさでは圧倒的に敵わない。ならば適ってしまように、条件を整えればいい。
視線を水平に戻した。足は、ダム湖と地面にそれぞれ踏んでる。まだ無尽蔵といっていい貯水量があるが、水はわかるほどに減少していく。体躯には莫大な水量がいるということだ。
巨大は単純な思考で、敵の強さと性質を感じ取った。
水から下を切り離せば勝ちだが、その前に彼を救け出す!
巨大が跳んだ。
小さな森にまで肥大化した樹木星人の根が、巨大を蹴りにくる。
数倍の高さまでジャンプして、かわす。
かわした空中に、片腕が振るわれる。
エビ反りに捻って、よける。
巨大は、ジャンプできても飛ぶことはできない。
避けた身体は、湖水へと落ちていく。
『やっぱりいた』
コアに埋もれたKATUは、待ち受けていた雁刃先七輝に半ば吸収されていた。雁刃先は個の人格をもった核。倭沢の伸びる四肢部とは、行動を異にする寄生細胞。KATUのいう樹木星人は、単体でも生きられるが、こうした、ユニット合体が可能なように進化をしてきたのだ。
雁刃先は、倭沢の鞭じみた枝ではなく、粘着性の蔓で絡めとる。蔓についた細糸は、ムカデの足のように動いて、吸いついた獲物は逃さない。一種の食中植物だが、積極的に動いて獲物を狙う植物だ。
養分を吸われた両足、抗った左腕は、老人ように痩せ細っていた。動かせるのは右腕と頭。そのどちらかまたは胴の一部でも吸われれば、死だ。
落ちる直前に見つけた。敵の動かそうとしない腕の奥に、KATUがいる。
巻きつく蔓にあらがって、コアに飲まれまいとしてる。
動いてる、生きてる。死んでないなら、ボロボロでも助けられる。
「き さ ま が ガーディウス だった と は な」
擦れる別の風音が声となって聞こえた。落下の風斬り音とは別の音だ。
この樹木怪物に目や口はないが、どこかでは感知してるらしい。
音声が発信できるなら、こっちの声も届くはず。
『センパイでもカツ君なかったね。利口な局長にしては間抜けな……がブブ』
挑発を言い終えないうち、水に没した。
水は思ったよりも深く足がつかない。
揺らぐ水面から、せいぜい10メートルという見積だったのが外れた。
光の届かない底は、まったく見通せない。
ツラい。
呼吸のいらないカラダだが、陽光はいるのだ。
ゲームみたいにHPが減ってくまえに、急いで浮きあがらないと。
敵からなるべく離れようと水中を掻き進む。
これくらいなら安全というところまで泳いた。ぐいっと浮上。
だが水面に出たとたん、頭めがけて、ごつごつの蔓が絡んできた。
「さ ん ど め の しょう じ き だ」
さばーと、蔓に持ちげられる。
締め付けられる首が苦しい。
蔓は、巨大をふりまわす。半径なら数百メートルにもおよぶ遠心力で叩きける。当たるにまかせ、ダム湖周辺を形成する森の針葉樹が、へし折られていった。
『く……くぅ』
とても晴れてて、こんなに太陽を浴びてるのにチカラがでない。
やっぱ。巨大化には日時が時間がたりなかった。
変身できてしまったから、戦えると勘違いしてた。
『ら、ライトフィールドを……』
攻防一体の光のフィールド。輝かないならない。
KATUを助けなければ。たすけないといけないのに。
巨大は逆さに吊るされた。反撃どころか身動きすらとれない。後ろの遠くに、空気を斬り裂くローターの音がした。
ばばばばばばば
『ヘリ! こんなときに』
2回も攻撃を受けてる自衛隊の攻撃ヘリに、良い思いではない。2回目は、つい何時間か前のことで、滅ぼしてやろうかと本気で頭にきたくらいだ。爆音は急速に迫った。ちらりと見えたときには、2機のアパッチは両翼にわかれる。左右から、巨大挟んで機首をむけてきた。
『またしてもだ!』
たった一基の機関砲を数発。
それだけで、腕を失った。
2機から集中砲火されちゃ、命はない。
それほどの武力をもっておきながら、なんで敵を倒さない。
悔しさ、飽きれ、歯がゆさ。なによりも無力感。広い意味で味方からの理不尽な仕打ちのカウントダウンを、苛立ちながら待った。
ぽんぽんぽん。
とうとう砲弾が発射される、が、飛んできた弾頭は、巨大を狙ったものではない。放物線を描いて着弾した先は、樹木星人の右腕の付け根。
つづいて、別の攻撃がなんと真上から着弾。これも狙いは樹木星人。左腕の付け根だ。
傷みを感じる器官があるらしく樹木星人は苦し気に根幹をうねらせる。緩慢そうにみえて、想像以上に速い敵樹木がうごく。若枝が新たに生えたると、破損した付け根部分に、包帯のように巻きついた。
樹木星人のセルフ処置に感心してると、拘束してた足の鞭蔓がゆるんだ。身をもじって脱出。自由になった身体半回転し、見えた物、フリートの仲間たちだった。
『みんな……』
恵桐者星のダネルMGLが右腕に、卯川の01式軽対戦車誘導弾が左腕に。それぞれ攻撃したのだ。サポート役は者星と、サブチーフ射妻エリカ。
「巨大ー! またせたなー!」
者星が手をふった。ダネルMGLのシリンダーに次弾を装填させる恵桐が、まじかよ、と目をまるくしてる。者星の言葉が信じられないらしい。いつも冷静な表情を崩さないロン毛の、驚いた顔がおかしかった。
『おせーよ。センパイ』
左右のアパッチの主武器20mm機関砲が火を噴く。恐怖に身構えたが、攻撃を受けたのは、巨大ではない。蔓の腕を構成していた数本の太枝が粉々。100メートルもの蔓が千切れた。足の縛りが解ける。
『昨日の敵は今日の味方? なんだかわかんないけど、カツ君だ』
アパッチのコックピットでは、銃を突き付けた相崎に笑顔で従う自衛隊員たち、という変な図式があったのだが。地についた巨大は、すぐさまジャンプ。
主武器20mm機関砲が敵の上部を連打すると、ダネルMGLと01式軽対戦車誘導弾が下部を直撃。敵は、超のつく回復力で破壊部分を修復してるが、さすがにおいつかない。
一直線にコアを目指す。厄介な腕が復活する前に、取り付く。
『カツくん!!』
姿がない。
飲み込まれてしまったのか。
いや……あった。
指が2本だけ。
かろうじて、これだけ。
飲み込まれるのを免れていた。
不気味な緑色に光るコアの中へと、巨大を手を指しいれ、小さく頼りない腕をつかみ、引き上げる。
あと数話で終わる予定ですが。
ぶくまとか評価とか、してくださると、とっても嬉しく思う今日この頃です。




