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02 巨大が巨大化っス

ちょっとだけアクセスがよかったので、2話目投稿!

 はるかなる昔。中生代と呼ぶ時代よりもずっと昔。

 地球に流れ着いた異星人がいた。


 異星人は生きとし生きる命を。

 ――絶滅しては新たに誕生する生物の繰り返しをみつめてきた。


 その果て。進化の果てに。

 はじまりのヒトが産声をあげる。


 ヒトは仲間と協力することを覚えた。

 物を持つことを知った。創り出すことを覚えた。


 奪い合うことと争うことを覚えた。

 大地を耕し作物を作ることも覚えた。


 異星人は慈しみの眼で、そのすべてをみまもり続けてきた。

 巨大(きょだい)七光(ひかり)は、異星人である母の血を継いだ女性である。





「 偉大なる母にして―― 」


 島国のカタチになる以前から、この地域をすみかと決める。

 人の形に姿をかえて、この地を影から支えてきた。


「 ――芳醇な力の源である太陽よ―― 」


 父と結ばれ、娘を授かったことは母にとってうれしい驚きだったろう。

 母は娘にあらゆる知識をおしえこんだ。だが、母も不老不死ではなかった。


 悠久のときを生きた母。地球時間にして数億年の生涯をとじた。

 数年後には父も、母を追いかけるように他界してしまう。


「 ―― 矮小なあたしに ―― 」


 莫大な遺産。名士の娘。

 ふたつのレッテルが貼られ娘は、好機の目にされされる。


 母は願いをこめて名をつけた。七つの光と書いて《ひかり》。

 命の源である光が、この子をいつまでも照らしてくれますように、だそうだ。


「 ―― 光の力を分け与えたまえ ―― 」


 日本人として生きてる七光(ひかり)には皮肉な名前だったが。

 それでも七光(ひかり)は、母の意志を継ぐ。


 新規の公務員試験に合格すると、名前が知られすぎた地元を離れた。

 対人外生物異物(ホスクラド)対処班(フリート)の新人隊員として訓練を受けた。


 故郷はいま。みぞうの危機におちいっていた。




「やめろぉぉぉ―ッ……」


 悲痛なさけび声をあげた者星(せんぱい)が、静かになった。

 怪物のしっぽが捲き上げたガレキの下敷きになって、気をうしなってる。

 

 大丈夫だろ。

 骨が折れてもかもだけど、命だけは助かる。


 人間って、けっこうがんじょうにできてるもんだし。

 あれくらいなら死なない。うん。


 それよりも、こっちが問題だ。

 怪物の真っ黒な足が、すぐ真上に、迫ってきてるんだから。


 命があぶない! 絶体絶命!

 緊急避難しなきゃだよね


 逃げ遅れた子供を抱きかかえたあたしは、長い祈りの言葉の、最後を唱えた。


「 ―― 巨大化(ネフィリム)!」


 太陽の光があたしの身体にまとわりついて、皮膚のように包みこんでいく。

 くつが脱げちった。でも気にしてる場合じゃない。


 進む時間がゆっくりになった。

 時が停まったようにも感じるんだけど、そうじゃないってわかってる。


「あたしが速くなったんだ。よーし始めるぞ」


 まずは怪獣の足下から抜け出す。

 急いで安全な場所へと走った。

 

 そっとおろすと、子供の眼がうつろだった。

 目まぐるしく流れる背景にびっくりして、心がついていってないんだ。


 いつも腰にぶら下げてる金属の小瓶をとって、そのフタをあけた。

 ぽよんと出てきたスライム。名前は”シミター”だからシミちゃんと呼んでる。


「シミちゃんお願いね」


 シミちゃんはあたしくらいまで大きくなっていく。

 形もあたしに生き写しになった。


「わかってる」


 シミちゃんは子供を抱きかかえると、

 住民が非難したほうへ走って行った。


 見送ってるうちにも、あたしは大きくなっていく。

 カラダが膨らんでいくカンジは、いつだって慣れない。


 フリートの戦闘服がびりびり破けていく。

 脱いどけばよかったと反省。でもきっとこれきりだ。二度目はないだろう。


 巨大化するにつれて、地面はだんだん下になっていく。

 逆に、目線はどんどん高くなっていく。


 一軒家の2階の窓、屋根上のスノーダクト、4階マンションのベランダ。

 怪獣よりちょっとだけ背が伸びたところで巨大化を止めた。時間も通常になる。


 怪獣をみれば、ちょうど足が地面を踏んだところだった。

 あたしはここだよ。


 生まれ故郷をこんなに壊しやがっちゃってさ。

 無事に死ねると思うな。ここでお前の寿命を終わらせてやる。



★とかブックマークしてくると、うれしいっす

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