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うざとらまん・改 ~ ちっちゃな巨大ヒーローは怪物から地球を守りたい  作者: きたぼん


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10 闇落ちの19歳


「フリート隊長の相崎さん、ですよね」


 別の声がした。

 部下への怒りに燃える相崎は、勢いのまま雑に反応した。


「んだあ?」

「ひっ!」


 声の主がのけぞった。マスコミの代表者である。


「チーフ!」


 射妻の喚起をうけ、我にかえる。

 巨大のことはいったん忘れようと、呼吸を整えていく。


「ひっひっふーーひっひっふーー。失礼しました。ええ。私が相崎です」


 代表者は女性。巨大がハイタッチした人物だと気づく。

 女性は完全に臆してしまったようで涙目。同性の射妻へ、訴えるように説明する。


「き、記者会見をひらいていただけると聞きました。これ以上あなたがたに粘ったところで収穫はなさそうという判断もあって、一部だけ残して撤収します」

「こ、これはご丁寧に……記者会見?」


 首をかしげる射妻エリカ。相崎ももちろん知らない。

 局長の倭沢平蔵が午後に到着する。独断かもしれないが、あの男は一言くれる。

 SMSすら届いてない。


 まさか……いぶかる気持ちが胃のあたりに込み上げる。


「巨大さんが請け負ってくれましたよ。夕のニュースに使える良い画もとれ、上から連絡があり。そんなことで、あなたがたの不興を買う前に引き上げることにしたんです。他局も同じです」

「巨大が請け負った?」

「あ、はい」


 ま た し て も 巨 大


 これでもかというほど奥歯を噛みしめ、地面をにらみつける相崎。

 言いつくせない貌になってるのだろう。握った拳をサブチーフが止めた。


「…巨大とは?」

「ひ、あの方とは、親しくさせていただいてます」

「…したしく、とは」

「さ、札幌(ここ)では名士の娘さんですから。お顔のひろいお母上が幼いころから連れ歩いてまして、それなりの地位で知らない方は少ないかと。年を重ねたかたほど、かわいがっておられます。こ、これでよろしいでしょうか」

「……わかりました」

「で、では3時間後にドームのほうで」


 腰をぬかしたように会釈した女性は、そそくさ仲間のもとへと下がった。


「一からマスコミ対策を学ぶのがよろしいかと。いまにも殴りかかりそうでしたよ」

「騒動が収まった理由がわかった。これもそれもあやつの仕業だ」

「はい。暴動を収めたのはリーダーの弱みか不正を仲間にリークしたのでしょうし、廃棄家屋の買い取りも可能でしょう。報道陣撤収の件はまさしくテレビ局に働きかけた。信じられないことですが……これが裏付けてます」


「パチでスった金もか」

「そこまでは」


 射妻が紙の書類を手渡した。ペーパレスが進み製紙会社が撤退していく時代に、この女は紙にこだわる。わずかだが予算を食いつぶす一因。文句はあるがそれは後。

 書類は、巨大七光(ひかり)の履歴書と入隊審査の調査報告書だ。


「あの子は札幌の出身。複数企業をかかえる大手コンツェルン”巨大グループ”。総帥の氏名は巨大七光(ひかり)です。調査結果には同名の別人とありますが、本人と証明されたようなものです。何かの力が働いたいたものと。両親はともに他界。引き継いだのでしょう」


 後ろのほうから、ひぇぇ と変な声がした。


「立場をつかってごり押ししたか。どこの富豪公務員だ」


 どれだけ金持ちでも部下は部下。

 知ったところで相崎の態度はこれまで通りだ。

 それよりも。


「ドームっていうと。PCパーツ屋のことだよな」

「パーツ屋? 一般的に考えて札幌ドームのことではないでしょうか」

「さ、札幌ドーム? プロ野球チームの拠点じゃねーか」

「移転して拠点じゃなくなってます。いつの話ですか」

「収容人数は?」

「最大で約5万人」

「ごまん、無料じゃないよな」

「平日50名までの利用なら、3時間で20万円となってます。意外に安いですね」

「あがあっ!!!! そんな高額な記者会見があるか! 札幌ドームに電話して話が本当ならキャンセルしろ」


 そのとき校門から色とりどりの移動販売車――キッチンカーが入場してきた。


「はいって、はいってー、こっちっすよ」


 先導するのは巨大ひかり。スイーツ、ハンバーガー、点心、お粥。

 沿道に陣取ってた焼き鳥と焼きとうもろこしと屋台とは、別方向ラインナップだ。


 隊員たちは、今朝からなにも食べてない。

 美味そうな匂いに腹の虫がぐぅと鳴った。


「みなさーん、腹がへっては戦はできないっスよー! たべてください。太っ腹フリートチーフの奢りです!」


 ぶち。相崎がこらえていた最後の何かが切れる。


「巨大! こっちこい!」

「チーフぅ聞いてくれますか。あたしいま残念な気分なんでス」

「どうせ、思ったイケ面じゃなかったっスー だろ。言わなくてもわかる」

「エスパーっスか! 心だだもれ? 知られざる乙女の秘匿にセキュリティの加護を!」

「あーほーかぁー!!!」


 ガツンッ


 拳骨が巨大の頭に突き刺る。星のエフェクトが舞い、盛大なSEが聞こえてそうだった。


「もはや意味がわからん」

「自業自得ですね」

「……」

「フリート規定に追加します。今後、あの子に限ってパワハラは適用されないと」


 市民たち、報道陣、フリート隊員たちは、わいわいキッチンカーで腹を満たした。出費のすべては巨大グループの支払になった。


 3時間後コンテナの前。


 到着した局長をセンターにおいて、記者会見が行われる。


 フリートの予算拡充と装備強化の発表は、国民を驚かせた。

 誰もが、二度とは起こらないと信じる危機に多大な予算をつぎ込む。過剰な安全マージンである。非難が集中したのは当然のことだった。


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