一騎討ち
「若狭の武田を討伐か、善きにはからえ」
京に集結した織田勢は4万を数え将軍義昭からの討伐命令をいただき華やかに出陣する。
「これって金ヶ崎の退き」
「正解、だけど浅井とは同盟だけで市ねえ様は長政とは婚姻してないよ」
「そうなんだ、と言う事は」
「朝倉を攻めるけど浅井にも備えるからね」
そう言うと歴史をわかっている3人はほっとした顔でついてくる。
「例えばこの中の誰かが知らせにいけば」
「知らない人間のことを他国の人間を信用すると思う、何を言っても変わらないさ」
「確かに、農業のことおを親に言っても全然だったし」
小十郎は良いよなと言われて苦笑いするしかなかった。
琵琶湖の西湖岸を進み評定が開かれた。
「目標は朝倉である。金ヶ崎城を攻める。小十郎は言った通り浅井を攻めよ」
「わかりました、援軍に現れた浅井を討ちましょう」
同時に浅井には朝倉征伐のために出陣の使者を送り兄上は金ヶ崎城を攻め私は琵琶湖を回り伏せた。
「金ヶ崎城へ抜ける道に主力を待ち伏せさせ、鷲尾と忠勝や慶次郎に騎兵を引き要らせ後ろにまわらせる」
馬防柵を配置してその後ろに3千の鉄砲を準備させる。
「これは武田に対する戦いの演習だ、射程に来たら切れ目なく鉄砲を放ち殲滅する」
山を越えて下った先に待機しており慶次郎達は接敵して音か烽火を百地があげることになっており3里を馬でかけて奇襲をする。
「どうする下がるか、それともこの高台に一緒にいるか」
「いる。見てみたい」
直哉と美奈子が真っ先に同意したあと、
「もし突破されたら」
「馬防柵には長槍もいるからそれとの連携も今回の課題、破れたらあの後ろの柵に防御ラインを下げるだけ」
心配性な進は心配そうに見続けていた。
「浅井勢峠を越えてこちらに迫っております」
百地から知らされて馬に乗って柵の外に出て単騎で峠へ向かった。
「長政殿、朝倉攻めへの援軍助かります」
そう言うと赤尾が進み出て、
「朝倉に恩がある我ら浅井が織田につくとはおめでたい」
「裏切ると言うことですな、愚かとしか言いようがない長政殿、いまなら不問としますが」
「我らは朝倉につく」
そう言われ笑いながら馬を返し一気に下り柵の中に入った。
高木が、
「投擲はいかがなさいますか」
「命令するまでは待機」
馬防柵に取りつかれたときになので鉄砲隊と長槍隊の後ろに投擲器隊を率いる高木が待機しており、下ってきた浅井勢が射程に入るまで待ち続けた。
「構え」
兼松が率いる鉄砲隊は構え近づく浅井勢を気にすることなく静かに待っている。
「習った事だけど敵が旗を落ちつて静かな敵には危険だと」
「ああ、そういうことを知ってか知らずに愚かにも来る」
その瞬間、射程の目印を通過した敵に引き金をしぼった。
「すごい音、それと煙」
なれない者にはこの音はうるさく、国友村が無い浅井勢は鉄砲にさほどふれる機会はなく命中して倒れるのもだが音に驚き足が止まり次弾が命中し倒れる。
5千程かな、織田を挟み撃ちにする好機を見逃さずと言うことだろう
「あれだけ射たれても柵の前まで来てる」
「だが前の堀から上りきれずに槍で倒されてる。これが長篠にと言うわけかな」
「長篠まで待たずにと思ってるけど、その時さ」
「本隊も押し出してきたな、烽火をあげよ」
別動隊への合図をあげ鉄砲と長槍で防ぐが数で押してくる。
「高木に合図を」
花火をあげると投擲器を腕で回して火をつけた包烙玉が柵の上を越えて浅井の中で次々と爆発し混乱をおこし必死に防ぐと峠の浅井勢を蹴散らして騎馬隊が突撃してきた。
「忠次、押し出せ」
柵の両翼から足軽が出ると鉄砲の射撃を止めて長槍隊を馬止めの隙間から混乱してたて直そうとしたが騎馬隊に蹂躙されバラバラになった浅井勢を足軽や長槍隊が討ち取っていく、
「降伏するなら今だぞ」
浅井勢の本隊は逃げようにも峠側には鷲尾の騎馬隊、その反対は我々が鉄砲を構えており返事が無いので撃ち込むと降伏してきた。
浅井の部将達は自分の兵の死体が積み上がっているのを見て呆然としており半数以上が死傷しており南へ下り小谷城へと入った。
「忠勝は佐和山城の確保を、守綱は横山城、元忠は清水城を」
周辺の城を城主の名で開城させていると知らせが来た。
「本願寺が蜂起したと、兄上に知らせよ私は今日へ向かう」
浅井の兵も集めて京にその日のうちに入ると村井に聞く、
「不意に襲われ撤退しました。信照様がこられて助かります」
「申し上げます。一向宗に呼応して三好勢が四国から上陸、松永も裏切り貴信山城にこもりました」
兄上のもとにいたくそジジイが裏切ったときいて嬉しくなりながらも落ちていない城や砦などに援軍を送っていると兄上が帰還した。
「本願寺め坊主はお経を唱えていれば良いものを、信照よ大和を落とせ久秀に降伏せよと伝えよ」
朝倉を裏切者は変わらず一族の景鏡が当主義景を殺害して滅んだと、
「権六に任せ加賀側は朝倉景鏡と冨田に任せた」
「この一向一揆に呼応して加賀も反乱をおこしましょう」
「であるか」
三河勢を率いて多聞城に向かうと筒井が入っており久秀の与力だったが降伏してきて組み入れると筒井城に向かう、
「松永久秀って3つの大悪人」
「だよね、大仏燃やして将軍やっちゃうんだから、あとなんだっけ」
「仕えてる三好のお殿様を倒したんだよ」
美奈子の中途半端な知識に進が付け加える。
「じゃあ今回討伐で首を討つの」
「何度か許したはずだけど野心なのか性格なのか信長に気に入られて」
進が答えると美奈子はこっちを見るので、
「何度もだから首を斬りたいけどね、どうするか」
「平蜘蛛をって最初に言えば」
それもそうだなと思いながら筒井城へ到着すると未だに建て直しが終わってなく何故だか僧兵がこもっていると言うことだった。
「松永に組みしなければ戦うつもりはない」
「我らと戦う意思はないという事か」
敵対すれば面倒になるのである程度は認めることを伝え西へ返信して向かう、
「貴信山城には一向宗も入城していると言うことです」
百地からの言葉に、
「包囲せず石山に向かう、城内にも伝わるように」
そう言うと貴信山城を見ながら東から西に行軍して通りすぎる。
「なんで、そんな事したら怒られないの」
美奈子に言われたが、
「久秀だけなら囲うけど一向宗を入れたってことは総本山を狙うってことを伝えれば止められないし出なければ今後支援もだが攻撃を受けかねないさ」
目の前に差し迫った危険がなければ一向宗は意見がまとまらないのはわかっていたのであえて久秀に出陣をしなければならないと、何で南側を流れている大和川沿いに下り北から出陣してきた松永勢を迎え撃つため大和川の南で待ち構え一向宗の悪口を言わせて引くに引けない状況をつくった。
「川の対岸に柵を構築せよ、簡単でも良い」
もめているであろう久秀と一向宗のいさかいを予測して柵を構築していく、
「急げ、足らぬところは言え、無理するな数人で行え」
忠勝や元忠は声をかけ指揮をして完成させていると午後に一向宗が現れた。
「久秀は後ろか、まあよい迎撃する」
1万5千程、少し少ないが一向宗の威勢は良く声をあげ動き出した。
「鉄砲をかまえ、川を上がるまで待て」
大和川を渡る敵に狙いをつけており渡りきったところで射撃を開始した。
「相変わらずの愚かな坊主と踊らされてる門徒」
「怖い」
美奈子が小さく悲鳴をあげるほど門徒は怖く射たれても立ち上がりこちらへ迫ってきた。
「長槍隊、柵の敵を倒せ」
鉄砲と長槍で柵の前で倒され土手を落ちていき勢いは衰えない、
こちらが優勢のはずだが一向宗の狂気に見てるだけで疲労がたまっている。
「鷲尾、慶次郎と忠勝を連れて左翼側から松永勢の本陣へ突撃し逃げるのを追撃せよ」
「守綱、半蔵は数正を連れて右翼から追撃させよ」
高みの見物か久秀が動かないのを見て一向宗が壊滅しつつあるので残った6千の松永勢に4千ずつを与えて血に染まる川を渡り退却する松永勢を呑み込んだ。
「あの真ん中は慶次郎か」
松永勢の真ん中を呆れるほどに騎馬で引き裂きそのまま分断し逃げ道を塞ぐかと思ったが突破して走り上がっていき呆れさせるがそこに後続が斬り込み慶次郎を追う、
「殿、本隊も進ませますか」
忠次の言葉に追撃を命じた。
松永勢は討ち取られるか降伏をしており登り坂の追撃速度に忠次も驚き進と私も驚かされた。
「ああ、久秀も泣きたいだろうな」
「まあ、ついでだ」
「何のついでだ、全く無茶して味方がどれ程死傷したか」
そう言いながらひょうたんの灘の酒を投げると手をふって出ていった。
「久秀は」
「逃げているようで」
「かまわん落武者がりをさせろ」
そう言いながら城に入り久秀の茶器を平蜘蛛だけ自分で貰うと報告を残りの茶器と共に送った。
原田が兵を率いて交代としてやってくる。
「上様はお喜びですぞ」
「他何か言ってたか」
「特には」
そう言って後を任せると石山へ向かった。
新たに築城した天王寺砦に入ると光秀が出迎えてくれ、
「上様は明日到着の予定です」
「そうか、一向宗は」
「攻勢を受けいくつかの城が落とされましたがここは守り抜いております」
そう報告され兄上が来るまで待ち続けた。
「小十郎、久秀は」
「取り逃がしております。あの中に逃げ込んだか」
「わかった。ところで釜は」
「記念にいただきました」
「であるか」
言われそうになるがそれ以上言わずに一向宗の本山石山本願寺をにらみつけた。
「どうする」
「イナゴですからね、包囲して兵糧攻めでしょうか海から送り込んでくるでしょうが」
「消極的だな小十郎にしては」
「長島も同じように倒さずに長島寺に門徒を追いたてて兵糧攻めがよろしいですが」
「なにか問題か」
「水軍が弱すぎます」
河口で船を行き交いさせないように、石山でも毛利等の水軍を倒す事を考えないといけないと説明をすると、
「大型船と鉄板で囲うか」
「そうですね船大工を集めてでしょう」
いくつかの砦を造り兄上からは若狭の武田を攻めるように言われ本来の目的の攻略に向かった。
「殿、足軽の比重が増えたとは言え農兵もまだ多く戻りたいと言う者もおります」
忠次が色々と話を聞いて知らせてくれるので助かる。
「確かにな夏の真っ盛りで農作業の労力は減らしたが気にはなるな」
足軽をさらに増やして8千まで常備しており金の支払いも多いが最近の豊作もあって不作の武田に高値で売っている。
「5千返しても問題はないか」
「そうですね、侮るわけではありませぬが当主と息子と家臣が争っているのであれば」
若狭武田、当主元明と義統が争い重臣の離反を受けていると言うのを百地経由での情報で重臣にはしらせており、
「元忠が負傷してよう、負傷者と共に農兵を帰還させよ」
命令を下して騒がしい越前を横目で見ながら若狭に侵入した。
「かまわん、一気に城を落とせ」
士気も低く兵も少ない若狭武田がこもる後瀬山城を国吉城と手筒山城を一気に落とし包囲すると使者が出てきた。
「当主義統が亡くなったと、命は取らぬが城は明け渡せ」
あっけない終わりに兄上に伝えると幽斎(細川)が城代として兵を率いて現れた。
「幽斎殿、あとは頼みましたぞ」
「ありがとうございます。それと公方様と上様の間が」
「そうみたいだな板挟みで大変だっただろう、しばらくは若狭をしっかり押さえてくれ越前の一向一揆もあるからな」
加賀からの一向一揆が波及して富田が裏切り朝倉義鏡は逃げ出し権六が力で押さえつけようとしている。
「火種が小さければ鎮圧し大きかったら何処かに押し込めて様子見をすれば石山の坊主と現地の坊主と門徒が主導権争いをして自滅するさ」
越前も西半分を渡して様子見をすれば良いものを攻めるから一致団結して対抗しており今更ながらに頭の悪さにため息をつきながら浜松に戻った。
「余剰分は売ったか」
豊作で昔の倍近い米がとれ武田に売っていたがそれをため込んでいるらしい、
「我々を攻める為の兵糧を売り渡すとは」
「まあ、罠が発動したらだね」
直哉の発案で圧縮発火と言う火種の技術を教えてくれそれを駿河の武田方の藏に運び込み米俵と俵とを紐で結びその間に発火装置の小さな筒を設置しており火が上がるのを待っていた。
「鉄砲は前線の城で800まで、兵糧も2年分の備蓄と水飲み場を複数設置し終わり犬居城等も石垣になりました」
「忠次、生産された鉄砲半分を兄上に売り渡すのを順次行ってくれ」
今の静岡には久根銅山や峰野銅山、牧原にはなんと油田もあり樽に積めて防御用に城においており火炎樽として運用させている。
「銅も兄上に売ってそのお陰で足軽が雇えるから」
「信照様がこられて金金金と言われて商業や三河木綿や鍛冶等を積極的にされてきたのがようやくわかりました」
「今でも金金金だけどね」
そう言うと忠次と笑いながらその時が来るのを待った。
「知ってるけど公方も実力を考えてくれないとな、まあ無理だろうけど」
京都では一向一揆に便乗した三好勢が京へ攻め上がり旧二条城で危うく命を落としかけその時にとも思ったが駆けつけた周辺の織田勢に助けられたと言うことだが、
「村井や秀吉や光秀から書状が来てるけど武田で精一杯で返してるからな」
「様子を見てこようか」
急にそんなことを言う慶次郎に、
「酒と吉原だろ、しまいには将軍を煽って怒らせて、行って意味無いし状況を悪くなるだけだ」
「人をなんだと思っている」
「めんどくさがり、自己満足、我が道をいく、歌舞伎者、女ったらし」
「小十郎とかわらんではないか」
「あっ、そうか」
そう言って自分でも納得してしまうが、
「女ったらしは違うかな」
そう言って周りを呆れさせた。
「甲斐も信濃もそこそこの実りか」
評定で百地からの報告を受け武田が動き出すだろうと伝え治水作業等をしていた足軽を動員し刈り取りの手伝いを遠江と三河で終わらせていると台風がやって来た。
「かなりひどいなこの嵐は」
天候の悪さをついての夜襲にも備えさせているが浜松の東の天竜川とそのさらに先の大井川は荒れ狂いしばらく渡れそうにもない状況になっており、遠江で刈り取りをさせていた足軽を率いている忠勝や守綱には連絡がとれずにいる。
「申し上げます。一昨日、甲斐から武田勢が出発し諏訪経由で高遠方面に進んでいると言うことです」
台風の前に出たらしく高遠、そして飯田を抜け天竜川沿いに二俣城を攻めるためと言うのを予測して康政(榊原)にも守り通す様に伝えており天気が良くなり次第出陣を行った。
「やはり渡れぬか」
天竜川は茶色い泥水を竜のように暴れさせながら流れており渡れないのはわかっていたので兵は浜松の港から大型船のみで輸送を行い遠江に兵を移動させた。
「山県の赤備えが4千、悪天候前に大井川を渡り牧原城(諏訪原)を攻撃、防戦中でしたが本多及び滝川殿の援軍4千が到着しにらみ合いとなっております」
牧原城の北東の山に、そして城を挟んで南東側の山に忠勝が布陣してると知らされ西側から大きく掛川から山県の北の尾根続きの台地に向かった。
「武田本隊は駿府に到着し兵糧を蔵から出して火災が発生した模様」
東側の青空に煙が上がっており、いくつもある蔵から罠が作動したようで本隊はすぐに動けないだろうと思い赤備えを殲滅するために急いだ。
「蹴散らせ、かまわん追い落としと狼煙を上げよ」
山県の北西側には守備兵はいたが蹴散らし尾根から追い落とし、左近と忠勝も出陣してきたのを見て包囲されるのを察知した山県は西へ大井川の川手前に陣をかまえた。
「背水の陣か」
大井川は未だに渡れぬほどの茶色の荒ぶれる流で飛び込めば万一助からないとわかっているのか構えておりこちらをにらんでいる。
「今日明日で大井川がどうなるわけでもない、周囲に柵をつくり包囲を狭めよ」
左近が守備で準備していた木材を使いお椀のように柵を鉄砲を並べながら作る。
近づこうとすれば狙い撃ちにされ完成させると更に前に柵を並べていると上流からの雨量が増えてこちらに押し出されてくる。
「雨は河口の場合、上流の雨は時速12km大井ならもう少し早いかなで流れてくるから、山からの流れこみもあるから増えるかも」
「色々と考えてるんだ」
美奈子から驚かれて直哉から笑われる。
「しかし気を引き締めないと手負いの虎は慶次郎並みに強いぞ」
射撃技量の上位を集めて長鉄砲を渡しており正面に集め射撃を行う、
「小十郎、槍あわせを赤備えとしたい」
「駄目」
「ケチ臭いぞ、歴戦の強者との戦いだ」
「駄目」
「みろ、未だに戦意を失わず飛びかかる準備をしている」
「駄目」
ひたすら駄目を伝えていると向こうから武将が進み出てきた。
「山県三郎兵衛昌景、一騎討ちを所望する」
そう言うと慶次郎がこちらを見たので頷こうとするが、
「牧原城城主、島左近清興まいる」
「あっ」
慶次郎はあわてて進み出て、
「滝川慶次郎利益、一騎討ちを願う」
そう言うと武田から大太刀を担いだ武将が出てくる。
「信綱か」
懐かしさに嬉しくなる。
「武田家武将、真田源太郎信綱が相手いたそう」
そう言うともう一人武田から出てきて、
「土屋平八郎昌続、一騎討ちを所望する」
そう言うと忠勝が進み出て、
「同じ平八郎お相手いたそう、本多平八郎忠勝まいる」
こうして6人の一騎討ちが始まった。
「豪華すぎる。慶次郎様と左近様そして平八郎様の一騎討ちを見られるなんて」
美奈子が興奮し進が淡々と、
「武田も山県と真田そして信玄の側近中の側近土屋だからね」
そう言うと皆うなずき何も知らぬ二人に説明をしながら壮烈な一騎討ちを見続け時間を忘れる。
途中休憩と慶次郎が瓢箪を持ってこいと私に言うので美奈子が志願して6つのの瓢箪をそれぞれに渡していった。
「これは」
「灘の酒だ、喉を潤すのにな」
そう言って飲み干すと朱槍をはらい信綱も飲み干すと大太刀を担いで一騎討ちを始めた。
「直哉、明かりの準備を」
夕暮れになり始め止めない様子なので篝火を周りに設置して戦いを見守る。
「終わるまで見守ると言うことでしょうか」
忠次から言われて頷くしかなかった。
そして最初の終わる瞬間が急に来る。
昌景が一瞬バランスを崩したとき左近の槍が胴体に向け進むが槍で跳ねかえすはずが槍が傷ついていたのか割れ真っ直ぐ進み赤い鎧を黒い槍が突き刺しお互い動きが止まった。
一言二言、昌景と左近は話をして左近は槍を離し、
「敵将山県三郎兵衛昌景、島左近清興が討ち取ったり」
そう言って勝ち名乗りをあげると昌景はまだ戦っている二人に、
「すまぬ、御屋形様にわびてくれ」
そう言うと主を待っている赤備えの方を向いて進むが途中で馬から落ち赤備えがかけよって収容した。
慶次郎と信綱の戦いは更に苛烈さを増していたが、平八郎同士の戦いは蜻蛉斬りが相手の胸を貫き倒れた。
「本多平八郎忠勝、土屋平八郎昌続を討ち取ったり」
そう叫び蜻蛉斬りを抜くと昌続は馬上から落ち部下が槍を構えかけより主を引き取った。
私は進み出て、
「水を差すようで悪いが真田殿、兵をまとめて引き上げる責任があろう」
そう言うと慶次郎が槍を止め大きく息をすると、
「今回は決着がつかなかったが」
「すまない滝川殿、再戦の機会があれば」
そう言うと私がかけよるのを待っているので、
「真田殿、大井川は未だに、なれば天竜川沿いに北上し飯田に抜けるのがよかろう」
数正に監視として人質である数人の侍大将を監視させ元忠に道案内で二俣から北へ送った。
「さて、信玄は攻めてくるなこのまま」
そう言うと忠次が、
「しかし山県と土屋を失っており、人質がいるのにですか」
「勝てるとなれば、そんな障害関係ない息子を駿河の為に殺す男だ」
そう言うと皆押し黙る。
「主力は2万が駿府から、飯田からは3千に土屋の連れて帰ってる赤備えとその他4千が合わさる可能性がある」
「それでは背後をつかれますぞ」
そう言われて東から信玄が2万、そして背後の北から最大で7千(侍大将が不在で戦いは無理だと思うが)が来ると聞いて緊張する。
「朗報もある。駿府の兵糧を半分程燃やしたからな3ヶ月、いや遠江で確保出来なければ2ヶ月で難しくなるだろう」
これからは刈り取りが終わって冬、農民には証文を書いて米を預かる制度をつくっており村には牛も馬も鶏も城に入って備えていた。
「これをかんがみ信玄は落とせそうな場所は落とすが二俣に進み信濃への通路を確保して浜松に向かうことになるだろう」
寿命的時間もない信玄がどう動くかと言う心配を抱えながらも守りをかためさせ大井川を一望出来る高台に移動して対岸を手に入れたばかりの遠眼鏡で見渡した。
「双眼鏡があればね」
「レンズの加工がこの時代では無理でしょ凹凸レンズなんて」
「ガラスよりも高熱に耐えられる素材で金型を作ってそこにガラスの材料を入れれば出来るはず、冷却も素早くしないと駄目って夏の課題で習った覚えが」
「それって材料に混ざりものが少ないガラスを探さないと駄目だし」
「ガラスの融点は1200度とかだから鉄じゃ溶けるよ」
「確か課題でプラチナ使ってるて」
「どこで手に入れるんだよ白金なんて」
「知識はあっても色々問題が出るんだね」
そう美奈子が言うとみんな頷いた。