足軽と諜報
「さて、これ以上ほっとくわけにいかないか」
館に向かい中に入ると農民でしたという男女が5人おりこちらを見つけると走ってくる。
「こんなに待たせてどういうつもりだ」
この若者は大谷直哉、農民に生まれた。
「そうよ、東京と江戸を知ってるといったら連れてこられて」
気の強そうな娘は永田美奈子
「私はごはん食べられ危険がないのが嬉しい」
大野美香、農民で戦いに負けたときに奴隷となってその時に助けられた。
「私も初めて安心できました」
高梨莉乃、大人しい顔で安堵している。
「僕も農作業をせずにいることが出来るし、ご飯も満足に食べられるし」
中野進、信濃から離散して逃げてきた大人しい少年、
「前の名前は忘れた。織田小十郎信照、三河遠江の対武田に対する軍団を率いている」
「織田って織田信長の一族なの」
「ああ、歴史の書には二三行しか出てこない織田信秀の十男だ」
「それで僕達を集めたのは」
「この世界は何度目かな、信照では2度目で前回転生した女性と結婚して今回も探しているが、他に居ないかと思ったら予想以上にいたので驚いている」
「2度目って後は」
「武田や上杉なんかね」
「私たち以外にも転生者いるの」
「いるだろう、失くなった者も多いと思う、乳児の死亡率は50%越えていてその後はわかっているだろう」
農民だから病気になっても医療は受けられず、冷害や日照りが起これば食べるものはない、
「ここにいれば食べるものを供給する。手伝いたいなら申し出てくれ、戦いたいなら申し出てくれ戦功をたてれば領地を与える」
「そう言えばここは松平じゃないの」
「2度目だからねやりたい放題で、桶狭間の後に三河衆を囲んだら自害してしまって岡崎を押さえ今川に対応した」
「それじゃあ歴史が変わって」
直哉が驚くので、
「この世界は変わるがおかげで君達に会うことができたし、この世界はいくつもある世界線の一本だと思う」
そう言うと驚きながら美奈子が、
「と言うことは配下には酒井忠次とか本多平八郎忠勝とか井伊直政なんかいるの」
「井伊直政は未だ幼児だからな忠勝に養育させている。ちなみに慶次郎や左近もいる」
そう言って笑うと皆驚き、
「前田慶次郎様と島左近様がいるんですか、会わせてください」
美奈子と美香がはもるように言い直哉も前田や島でわかった莉乃と進も食い付く、
「そのうちだが、どうする」
「戦い以外で」
美香が莉乃と進に同意する。
「それでは私の祖父と共に内政を見てくれ」
「そして二人は戦いに帯同すると言うことだな」
直哉と美奈子は頷き爺を呼んで3人を任せて、直哉と美奈子は慶次郎を呼んで、
「大切な知り合いだ、戦いの場に出ても生き延びられるくらいにしてくれ」
慶次郎を見て興奮している二人を見て面白そうなのが来たなと面倒なのと微妙な顔をしながら馬などを用意するように言われて引き渡した。
「申し上げます」
百地からの知らせで武田が動いたと知らせを受ける。
駿河方面は北条との戦いがおさまらず信州は飯田からあの秋山が3千程で岩村方面にと知らせを受け足軽4千を率いて田峰城を経由して向かった。
「数正と大久保勢が3つの砦に入り守っております」
百地からの情報が絶えず入ってきており忠次にどのくらいいるのかと聞かれて、
「五百はいるな」
そう言うと驚き半蔵の忍びは私の直属として40名がおりそれは目に見える場所での使い方をした。
「敵は7百程、秋山ではありませぬ」
「忠勝、慶次郎正面から、守綱と元忠は川の反対から裏に出ろ」
すぐに動き慶次郎は先鋒となり武田勢に襲いかかるが必死に戦っている。
「元忠は」
そう言ってると武田勢の後ろで喚声が上がり殲滅された。
「後は頼む」
大久保の一族に任せてそのまま急いで進むと秋山の本隊を補足した。
「千二百か」
前田砦を包囲して攻撃している秋山勢を私は大桑峠から上村川に出て、忠次は反対側から上村川沿いを北上して東西から包囲した。
「兼松、半蔵と共に川の南から鉄砲で上村川に出て来る敵を討て、慶次郎先鋒で川の北側から、親吉と守綱はその開けた所を崩せ、本隊は逃げる敵を殲滅せよ」
ここで秋山を倒すつもりで包囲を行い伊賀と甲賀の忍びには前田砦の北にある川沿いで鉄砲を持たせて伏せさせていた。
慶次郎が東から、忠勝が西から攻めこみ挟撃する。
南側側に広がろうとする武田勢は兼松の鉄砲隊から狙い射ちされており逃げ場は北の谷川沿いしかなくそちらに逃げると百地の忍びと伊賀の忍びからの射撃を受けながら急峻な場所を逃げるしかない、
前田砦の数正も城門を開き鉄砲を撃ち込み逃げ場のない死地へと追いやった。
「敵将秋山を本多平八郎忠勝が討ち取ったり」
どのくらいだろうか不意に勝利の声がきこえ兵を終結させると秋山の旗や装備を集め食事と休憩をして大桑峠を越えて進む、秋山が進んできた道を百地の忍びが露払いしながら進み飯田城を望む場所へ出た。
「さて、どこでばれるか」
慶次郎に秋山の鎧を身に付けさせ飯田城を目指す。
ばれたら周辺に火をつけまわし農民を捕らえて奴隷とすればいいと思いながら畑作業をしている農民の女子供は頭を下げておりそのまま飯田城の門が開かれたまま入城出来てしまった。
「さて、信玄の驚きようと本気で来るかな」
飯田城はかなり拡張されておりこのままでも守れる。
「どうされますが、周辺の農民などは捕らえましたが」
「撤退する。すべてを根こそぎ持っていき飯田城も破壊できるだけ破壊しろ」
兵糧等の物資もだが、秋山の一族やその家臣の家族も農民と共に捕まえており4千以上の戦いに行かなかった者は捕まり遠江に連れていかれ開墾した田畑を与えた。
「相変わらずやることが悪辣だな、今頃信玄は怒りで攻めてくるんじゃないか」
慶次郎に言われ頷きながら、
「攻めたいが飯田の破壊と領民が連れていかれて頭を抱えてるだろう」
「しかし殿の情報は驚きでしかありませぬ」
「烽火と馬と忍びで同時に情報伝達をしているから今回のような少数で攻めてくるなら各個撃破を、今回の一番の功は秋山を討ち取ったこと誰が次に飯田に入るかはわからないが消極的になるだろう」
兄上に知らせ同盟は失くなったと言うことを伝え数日休ませると足軽4千と新たに雇った千を加えて大井川を渡った。
「周囲の砦を落とす」
「これは」
「嫌がらせだよ、田中城には山県が城主だが北条との戦いで小田原城に出陣しているから居留守にさ」
周辺の砦を次々と落として火をつけ田中城を囲んで鉄砲を前に押し出す。
「改築中とは運が悪い、まあ今川から手に入れて間もないからな」
馬出等の武田の城郭に改築しており完成すれば落とすには難しいが城主も居ない城は簡単に落城し捕虜を取ると破却して奴隷として数千を得て大井川を渡って撤退した。
「三増峠で武田と北条が戦い引き分けとなったもよう」
引き分けと言うよりは北条が手痛い被害を受けたのだが、
「これからどうされますか」
評定で忠次が皆を代表して聞いてくる。
「今、武田は織田、北条、上杉と周囲すべてに敵をつくってしまい飯田城と田中城の破壊や秋山等の討死で対外的に外に力を3年は向ける余裕はないだろう」
「それで我々は」
「あの足軽5千を使って嫌がらせをする。農兵ではないから」
農兵では動員すれば農作業が出来ずに田畑は荒れて民は疲れはてるが、足軽は金で雇われているので年中無休で戦えると言うことで次は飛騨に決めた。
「兄上からの援軍と兵糧感謝する光秀」
美濃を通過して行く途中で頼んでいた兵糧を受け取り与力として光秀が率いる与力と共に三木家の桜洞城等を次々と落とすと高山まで進み白川城沿いに南下する。
「流石に雪が多いな、急いで木曽福島城まで向かうぞ」
すでに木曽は武田は通報しているだろうが塩尻峠が大雪で進軍が遅れる事は確認しておりかんじきをはかせた足軽が道を踏みしめ木曽福島城の南に陣をはった。
「さて、先ずは略奪を」
そう命令して周囲の村を襲い家を壊して薪として使う、
「しかし後ろは飯田城を破壊したからと言って危険では」
「大雪でこの木曽辺りはまだ少ないからな、それでも長居はするつもりはない」
忠次は最近当たり前の状況を見ながら山へ逃げた村人を足跡で追って捕まえたりして翌日には遠江へ送り出す。
数日後ようやく信玄が現れ木曽川の上流で陣をはった。
「信玄にはこの寒さは辛いだろう」
木曽福島城へ入城できるならいざ知らず村の家はこちらが解体して薪にしており本格的な暖は取れずにいる。
これも目的の1つであり信玄の体力を奪い寿命を短くするために無駄だと思えるにらみ合いを行う、
「今日で7日目、さてもうそろそろ動くかな」
周囲から回り込むには急斜面であり武田にとっても策を練るには狭すぎる戦場であった。
「使者が来たか」
通すと調停役の僧侶でなく不死身の馬場が座った。
「織田は何をしたいのだ」
停戦を持ちかけてきたはずだが馬場は私に聞いてくる。
「それは、同盟を結んでいたのに秋山を岩村城へ攻めさせた」
「それは戦国のならい、今日の友が明日の敵になる」
「確かにならいだが、武田は裏切りとしか言えぬ、なれば秋山を殲滅し飯田城や田中城を破壊した。裏切り者には丁度良い」
「手厳しいが、その方も今川を攻めるのは承知していた」
「そうだが、息子を殺してまで獲なければならなかったのか、言わせてもらえば武田は終わったな」
そう言うと馬場は顔色も変えずに黙って聞いている。
「継いだ四郎には中途半端な権限しか与えず代将という権限で武田はまとまるかな」
「よく知っているが我ら家臣がささえれば良いだけのこと」
「そうなれば良いが、いずれにせよ当主がなくなれば」
「そう言うことか、ここに引き出し狡猾な」
少しだけ怒りを見せる馬場に、
「まあもう少しと言いたいが体を崩したならこちらも寒い、停戦に合意しよう」
こうして木曽川を下り光秀と別れ浜松へと戻った。
「小十郎、きついよ」
直哉と美奈子は教えるというより放り出され基本だけ教えられた刀と鉄砲で生活をしているらしく様子を見に行くと日焼けした二人に会う、
「虎は教えることはできないし、訓練もしないと言うからな、野山を駆け抜け猪や熊を倒したりそれが訓練ということさ」
「知ってて送ったのね」
美奈子がホッペを膨らましたのを笑いながら、
「すまぬ、でも短期間で鍛えるには必要さ」
そう言うと美奈子は少し笑って、
「直哉と相談して何かできないかって知識をいくつか書いているのを渡してくれる」
「クロスボウは狙うには良いと思うんだけど」
そう言われて自分も一度は考えて試作したのだが、
「一番の問題は複合弓を作れない、材料はモンゴルだと木と動物の骨らしいが接着剤が無い」
「転生してその知識で色々作れると思ったけど難しいのね」
「何度も経験して試したからね、でもそのおかげで鉄砲も最初から改良されたのを作ったし、金稼ぎには金を採掘して南蛮渡来の技法をと色々してるからね。でもいくつかは試しても良いと思う」
そう言いながら次回の時に初陣を決めた。
「今回は兄上の力を借りて海からだ」
織田家の軍船を集め商人の船を強制的に金を払い浜松に集め船に足軽を載せる。
「先頭には鉄砲と炮烙玉、そしてこれは美奈子が考えてくれた投てき器、ここにいれて回して放り投げると遠くまで届く、百地と直轄の忍びにはすでに訓練させている」
満載すると東へと向かう、夜を徹して向かい朝方に先鋒の関船が港の武田の軍船に襲いかかり炮烙玉を投げ入れ火災を起こさせる。
そのまま上陸して火をつけまわり後続が上陸して建築中の江尻城と周辺を襲った。
「戦いってこんなのなのか」
直哉が驚き聞いてくる。
「いや、盗賊の類いの戦いかただ、ゲリラ戦さベトナムでアメリカを苦しめた」
「織田が弱いから」
美奈子が聞いてくるのを、
「確かに兵力では向こうが上だけどどちらかと言うとPTSDを発症しいてもらい心身的に病気になってもらう為だ」
「小十郎怖いわ、目に見えてじゃない事まで」
「どこに来るかわからぬ織田、そして占領せずに破壊し住民を奪う」
「それって焦土化ってこと、確か二次大戦でソビエトがドイツに使った。歴史で読んだんだけど」
「まさしく、なのでいま駿府も奇襲をかけ燃やせる物は燃やし堤は火薬で決壊させ水浸しさ」
そう言うと遠くで大きな爆発音がして作戦の完了を伝えた。
「順次出港せよ」
次々に足軽を収容して商船を先に出して軍船の船縁に鉄砲を並べて港に近寄れない様にして撤収を完了した。
「しかし何て言っていいかわからないわよね」
「まあ戦いには色々あるということだ、でも大きな戦いはここまでかな、警戒するだろうし」
「まさか船で中まで入り込まれるとは思わなかっただろうな」
「直哉、武田は海を持っていなかった。無知ゆえの奇襲さ」
武田の重要な港に隣接する町や建築中の城を破壊しすぐ西の駿府を襲って火をつけまわり信玄にはかなりの心労を与えたと思いながら帰還した。
「皆に紹介しておく、幼馴染みの直哉と美奈子だ、しばらくは私の側にいる」
不思議に思っていた忠次等に伝えると色々と作戦を考えていると爺と内政担当の3人が帰ってきた。
「なんか住んでた信濃とは違うね」
「牛で耕したりカモが田圃にいたり」
「富国強兵すれば自分が楽できるからさ、食糧が足らないそれを買う金もない、隣に赴いて略奪する事もままならない」
「武田って強いんでしょ、来たら」
「来たら困ると言えば困るけど飢えを満たそうとする兵の強さだから」
「だからあんな石垣と水堀で囲ったんだ」
「牧野を見てきたんだ、あれなら門を守れば、虎口で鉄砲を2から3方向から集中すれば死地でしかないよ」
「でも赤備えもいるんでしょ」
「野戦をすればだね、大軍と正面から戦うつもりは無いよ、数千なら包囲殲滅を行うけど」
「それって簡単に言うけど」
「金がかかるよ、忍びを大量に雇って動き出せば知らせ、何処にどのくらいなのか知らせを受けて少なければ一気に、多ければにらみ合いで敵の兵糧を消費させる」
「簡単そうに見えるけど理解と実行か、そう島左近様と会えて嬉しかった」
そんなのんきなことを言いながら足軽はしばらくは治水に全力を傾けたりしていると兄からの呼び出しがかかり5人をつれて岐阜へを向かった。
「すごい、尾張か」
「一面田圃」
「のどかだね」
「豊臣秀吉いるかな」
「明智光秀」
「不用意に名前を呼ばないこと、危険なことに巻き込まれかねないし兄上と会うのは未だ先だろうか」
「織田信長に会いたい」
「そうだそうだ兄弟なんだから良いだろ」
「堪忍袋が切れたら止められないからな」
そう言うと不満だが刃を向けられた恐怖は大なり小なり経験しているので大人しく岐阜の自分の館に入った。
「急ぎと言われ来ましたが」
そう言うと書状を投げられ読む、
「将軍に織田との講和を取り持てと信玄が」
「その方のいたずらが度を過ぎて根をあげたらしい、どうする」
「お任せします2年は動かないだろうと思いますがその間に色々と進めるだけです」
「であるか」
「朝倉討伐も進められるんでしょうし伊勢長島も聞くところによると大分キナ臭く、伊勢の北畠への討伐ももう少しかかるかと」
「将軍は朝倉の討伐を良しとしないが、武田との講和後に出陣をする」
こうして武田が動けない間に近畿を制圧するため出陣することになった。