平手の爺と舅
「爺いるか」
私はもうひとつの事を思いだし平手の爺の所へと顔をだす。
「信照様、この爺にいかような」
何時ものように怖いが優しい声で気にしてくれる爺に感謝をしながら、
「遠出に向かう、ついて参れ」
そう言って領地を見渡せる小さな小山の上に向かった。
「ここに座れ爺」
準備していた野点の赤の敷物に座らせお茶をたてる。
「良いですな」
お茶をいただき茶菓子であるよもぎ饅頭を食べて嬉しそうにしている。
「率直に申す。兄上の代わりにな」
そう言うと折り目をただして座りなおす爺に、
「寡言をして兄上が喜び物事を振り替えるとお思いですか」
そう言われ図星であるはずだが織田家家老としての心づもりだろうか顔色は変えずにこちらを見続けている。
「兄上はわかってはいるが目指すものが違う、爺は織田の家の事だろうが兄上も私も尾張の統一とそしてその後に続く上洛そしてこの戦乱の世を終わらせる事が目指す事でありその為に行動しているんです」
そう言って今までの米の増産や金鉱の採掘と南蛮への貿易や鍛冶屋の招聘と鉄砲造りや3間半の槍、鶏やマガモや牛などでの労働力の減少と食事等を帳面に書いた数字を見せながら説明していく、
「それでもあのお姿と態度の説明にはなっておりません」
「あれは計算ずくのわざとです。真面目にすれば文句は出ず楽ですが文句が無くなるわけではありません、ああいう格好は批判を浴び少しの良いことでも消し飛びます。なれば文句を言わせないほど納得させる事をしなければならないと自分に厳しくするためにもしているんです。趣味も有りますが」
「しかし、なればこそ遠回りする必要は」
「有ります。最終的に兄上の命令は絶対行わせるということを目的としているため理不尽な事もします。天下をとるためです」
「頭で考えるがわからぬ」
「大半の者が解らなくても爺には天下をとるためと理解をして兄上を応援し時には叱っていただきたい」
「しかし私の話しは一向に聞いておられぬ」
「聞いておりますし、そうと思うことは実行しているではありませぬか」
「そう言われればそうだな、わかった死をもって寡言は封印する」
そう言われて丁寧に頭を下げ礼を言った。
「美濃の蝮が会いたいと言ってきたわ」
もう一度同じことをと思いながら平手の爺が何時ものように、
「礼服で赴いてくだされ」
そう釘を指し兄上は笑いながら準備をさせた。
「鉄砲はようやく100丁、長槍は500、弓は300」
いまの時点では少ないが生産拠点があり徐々に生産量も上がるだろうそう思いながら箱を鞍にくくりつけ兄上が出てきた。
「その様な格好失礼にございますぞ」
顔を赤くして平手の爺は怒り私を見るので頷きながら兄上の後に続いた。
「お頼み申します、当主としての」
「爺、あまりうるさいぞわかっておる」
何度目のやり取りか、
「あの辺辺りから蝮がのぞいているでしょうか、兄上」
「であるか」
そう言いながら爺に、
「驚かずに待っていてください」
そう言うとため息をついて先に道三との挨拶に向かい私は兄上の着付けを手伝い会見の間に向かった。
正装の兄上に道三も平手の爺も黙って座っており兄上も座り私もその後ろに座った。
会見は静寂のまま続き私が、
「兄上、山城守殿にございます」
そう言うと、
「であるか」
そう呟きお互い簡単な食事を終えると尾張へと戻ることになる。
「爺、兄上はりりしかったであろう」
「はい、なればこそ」
「普段があれだから余計にさ、あれこそかぶくと言うもの大切な場面は相手を飲み込むならば変わるということ」
「小十郎うるさい」
そう兄上から言われて苦笑いで尾張へと戻った。
百地からの知らせを受け山口親子を攻めるための評定が開かれた場所に向かう、
「山口を攻める。佐渡、権六兵を3日後に集結させよ」
陣布令が行われ南下をする準備を始めた兄上に面会を求めた。
「悪そうな顔をして何を考えてる」
「信友がこの気を狙って松葉・深山の両城を攻める準備を始めました」
そう言いながら地図を広げ場所を示す。
「山口を攻めると見せかけ奇襲と清洲城を奪うということか」
「はい、佐渡と権六に案内をつけこことこの場所に伏兵として隠し兄上はこの場所に、逃げた敵兵と共に清洲に向かってください」
「わかった。もしものために叔父の信光に援軍を頼む」
そう言うと人数外の人々を集め南へと偽の行軍を行わせた。
「我らは北に向かう」
そう言って兄上は進むが佐渡や信盛や権六は慌てて私のもとに来る。
「わかっている。信友が動いたと知らせが来たからな、兄上からの命令を伝える」
そう言って百地の配下をつけ城に攻めかかろうとしてる信友勢を奇襲するように伝え私は慶次郎達と兄上に合流した。
「奇襲をかけたときに知らせが来るようにしております」
「であるか」
それだけ言うと森の中に待機させ数刻待っていると、
「奇襲を仕掛けましたが、林佐渡守殿敵に防がれて膠着状態」
いや何で奇襲が失敗と聞き兄上がこちらを見たので冷や汗をかきはじめるともう一人の忍が現れ、
「柴田様の軍勢は奇襲を成功させ敵は退却中、もうしばらくで下の道を通ります」
それを聞いて安心しながら兄上の横に慶次郎を連れてその時を待った。
「通過中」
一人二人と通り抜け清洲の城に向かっている。
「よし行くぞ」
そう言うと兄上は馬を走らせ必死に後を追った。
「名古屋勢だ、逃げろ」
後ろから足軽を打ち倒し道を突き進む、城が見えて城下町を走り抜けると城門が開き兵を収容していた。
「突き進め」
一気に城内へ突き進む、
「慶次郎こっちだ」
百地の調べでどう行けばいいかはわかっていて襲いかかる兵は慶次郎が倒し本丸へ到着した。
「何がどうなっておる」
兵にかこまれた何度か見たことのある顔に素早く火縄に火をつけて皿のふたを開け火薬がこぼれてないのを確認して叫んでいる信友の胸に発砲した。
苦痛と共に崩れ落ちたのを確認し、
「織田上総介が弟、信照が織田信友を討ち取ったり」
そう叫ぶと敵は鉄砲の音と当主が討たれたのを見て降伏してきた。
「小十郎よくやった、作戦といい信友を討ったことといい一番手柄だ」
「ありがとうございます」
権六は佐渡を助けて清洲へと到着し城が落ちたのを呆然と見ており、直ぐに本丸に呼び出され皆が揃うとまず呼ばれ称賛される。
「先ずは清洲を本城利とし名古屋は信照を城代とし平手を補佐とする」
これは絶対お小言から逃れるためだなと思いながらも清洲を落とし城代とはいえ名古屋城ををと思いながら帰還した。
「佐渡と権六が信行をかつぐか」
それからしばらくして清洲は良いとしても幼子の私に名古屋城城代をと言うのに土田御前と信行や佐渡とその弟そして権六が不満を持ち兵をあげることを知り兄に知らせ平手の爺に後を頼み出兵した。
末森城に集まった反乱軍を兄上は信光を清洲に入ってもらい自らが進む、
「兄上には私が後ろに回ると伝えれば良い」
場所もすでにわかっていたので兄上は佐渡達の正面に立つと佐渡が進み出て、
「うつけの行いもいい加減にされてはいかがか、名古屋を信行様に与えるならいざ知らず兄達を差し置いて側室の子を幼子ではありませぬか」
そう言うと兄上が進み出て、
「信友の奇襲を知り伏兵を送り清洲を落とし信友を討ち取った。誰が見ても十分な武功、引き換えに佐渡自身は奇襲を失敗させ権六に助けられたではないか、その罪を不問にせずに罰せよと言うのだな」
兄上からは次はないぞと言われたのを忘れたのかその事を言われ顔を真っ赤にすると攻撃を命令した。
「佐渡の方が勢いがあるな、向こうに行けばよかった」
慶次郎の不満を苦笑いしながら林を迂回して信行の本陣の近くまで来ており鉄砲を準備させた。
「先ずは正面の本陣を狙い、次からは敵の右翼後方から射つ、良いな」
一益に率いられた鉄砲隊が林ギリギリまで進み私も端で信行を狙って鉄砲をかまえた。
「はなて」
一益が命令すると自分の配下の50丁が一斉に射撃し信行の本陣は混乱し、そのまま左に向いて佐渡の弟に向け発砲した。
早合で繰り返し撃ち込むと崩れ兄上がそれを見て自ら斬り込んだ。
銃口から掃除を行い林から出て退却をする佐渡の兵に向け鉄砲を放つ、
「あれは佐渡か」
側近と逃げようとしているのを見つけ先回りのため走る。
岩の影に入ると逃げてくる佐渡に、
「佐渡こっちだ」
そう言うととっさに私を見て固まる佐渡に向け引き金を絞った。
自分でも見事と言っていい頭に当たりふっとんだのを見て、
「織田小十郎信照、謀反人林佐渡守討ち取ったり、降伏せよ」
そう言うと雑兵は武器を捨て降伏してきた。
「相変わらずだな、末森を囲む」
そう言って権六を追って城を包囲した。
「母上自ら使者だと」
そう言うと兄上は本陣に通す。
「お前は弟を信行をよくも、鬼」
そう叫ばれどうやら最初の自分の弾がまぐれで信行を討ち取ったと言い兄上がこちらを見たので頷くしかなかった。
土田御前は半狂乱で連れていかれ末森城は廃城とした。
兄上からは特に何もないが信行を殺してしまった事に罪悪が芽生えておりストレスとなりため息ばかり出てくる。
「何を悩んでる。どうせ大したことではないだろうさ」
慶次郎に言われるが自分ではと思いながら山口親子の真似した書状を今川に送り込む、
「こんなのをしてたら余計に気が滅入るけどしないと」
そう言いながら書き上げ送ると兄上に報告のため清洲へ向かった。
気乗りしない状況にため息を何度もつきながら兄上の前に顔を出した。
「こい」
その一言と兄上が立ち上がり掴まれると井戸に連れていかれ頭から水をかけられた。
「小十郎、お前のせいではない俺が命じた結果だ」
「しかし狙いそして」
「わかっている。信行も運がなかったと言うことだ」
「しかし兄上の」
「言うな、お前の罪は俺も背負うわかったな」
そう言って侍女に言って着替えさせてくれあらためて話となった。
「山口が近いうちか」
「結果は出ていませんが、前の2通は今川方では信じられ親子を疑っておりますので」
「太原雪斎が無くなって判断がつかぬということか」
「殿、出陣の準備も」
林兄弟や佐久間を排除して今の織田の将は平手の爺に丹羽・森そして滝川と権六(柴田)となり私も連なる。
内政や外交などは村井や島田等がおり同席している。
「それは知らせが来てからでも良い、それよりも領内の道の整備と関所の打ち壊しはどうなっておる」
「信照様が指示したとおり砂をまいて小石を敷き詰め大木槌で上から踏み固めた道を拡幅工事と道をなるべく平坦に真っ直ぐにと言うことで清洲から各城に向け作業中、3ヶ月程で目処がつくと考えております」
「関所に関してはおふれをだしたことにより少なくはなりましたが未だ、旗本衆の前田や佐々等が見廻りを行い見つけ次第打壊しと設置した者の束縛を行っております」
「名古屋から清洲への家臣の移住は」
「半数は移動しましたが」
「小十郎」
「わかりました。再度警告後焼き払います」
そう言うと皆驚き爺が、
「それはあまりにも乱暴な」
そう言うので私が、
「当主である兄上の命令に従わぬならと言うことだ、兄上に命令は絶対と家臣に認識させる」
「わかりました、警告は私も行いましょう」
そう言うと兄上は、
「山口が引き抜いた沓掛城と小高城もだが岩倉の織田を早期に攻める」
そう言ってると早馬が到着した。
「舅殿と長子義龍が争いを始めただと」
そう言われて間に合わなかったかと岩倉や森山の織田を下せば介入できると思ったが時間は止められず知らせを聞く、
「舅を助ける。出陣の支度を」
前よりは早いタイミングで百地が知らせてきたので道三が北東へ逃げて兵を終結させていると言うことで4千の兵で向かう、
「義龍は2万弱、山城守は3千程」
国取りを行った経緯で美濃の豪族は道三につかずに義龍についたと言うことで兵力差はいかんともしがたい、
「どうする」
兄上からそう聞かれて、
「旗本衆を先陣に早朝奇襲をしかけては、配下を先行させており見張りと入れ替わるように何時でも準備をしております」
「であるか」
そう言うと私は百地に到着の晩の夜明けに奇襲をすることを伝えた。
それから警戒している斎藤勢を襲い木曽川と長良川を渡ると百地が道案内で斎藤勢の陣を望める森まで来た。
「準備は」
兄上が百地に聞くと、
「全て入れ替わっております」
「であるか」
そう言うと音をたてずに移動をしており私は慶次郎と佐々や原田や前田の旗本を率いて奇襲を仕掛けた。
最初の敵は稲葉勢でありうとうとしていた敵を討ち取り、
「安藤勢裏切りい、氏家も裏切ったぞ」
義龍に組したが誰が裏切るかとお互い考えていたので奇襲と裏切りを叫ぶと同士討ちを始めていた。
「安藤か、乱れてはいないな」
竹中半兵衛がいるのかと思いながらそのまま右にそれて氏家の陣を横断して義龍の陣に斬り込んだ。その間も安藤や氏家の裏切りを叫び続けていると義龍は退却を始めたが安藤が追撃を許さずにおり被害をだす前に撤退を行った。
「兄上」
「小十郎か、舅殿と合流するぞ」
そう言うと東へ抜けると奇襲に呼応した道三と合流した。
「織田の当主自らとは痛みいる」
「間に合ってよかった。これからいかがなされる」
「周囲を攻めて東美濃を掌握する。その間に岩倉や守山を落とすが良い」
義龍と連携をするだろうと言い、
「こちらは気にすることはない、先ずは自分の足元を固めよ」
そう言うと兄上を諭して尾張へと戻った。
「父がそうですか、ありがとうございます」
濃姫が兄上を出迎え結果を聞いて礼を言う、
「であるか」
そう言うと兄上は攻略に意識をした。