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魔法陣と転生と  作者: 昕箱
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初めての出逢い

「よいっしょ・・・ふうー! やっぱり立ってるって良いな! 座るのもいいけど、立つことこそ、嗜好!」


そう言って、俺は全身を使って身体を伸ばす。


〖随分とご機嫌じゃないか、シオンくん? ところで、これからどうするつもりだい?〗


「ああ、それなんだがな・・・お前、ここがどこかとか知らない? 」


〖君は勇敢というか無知で愚かだというべきか・・・まあいいや、ここは'ウィステリア公国'の、'ヴァーティスタ森林'ってとこだね。ウィステリア公国が法律で、〈知恵のある生物があらゆる手段で干渉することを許さない〉って言ってて、森林自体も魔物にならないけど自分たちで栄養を自給自足できるバランスの良い感じで魔力が出てるから。まあ、本当に手を加えなくてもいいんだよ〗


「ほえ〜、すげえなあ。実際にその法律は守られてんのか?」


〖うん、守られてるね。憲法に、〈ウィステリアの民が我らが誇るべき自然を破壊する様な行為を脅かす危険性は、断固排除すべきであり、許さない〉ってあるからね〗


それを聞いて、俺は感心した。


俺の故郷であれば、絶対に守られない。

タバコの吸殻とか、ポテトチップスなどのお菓子のゴミがポイ捨てれているのが定説だ。

勿論それは約2割の人間なのだが、その2割の人間達は全体から見たとき、あまりにも多いのだ。


〖まあでも、破ったら本当に惨い拷問を受ける事も憲法に書いてあるから、まあそんなことするバカはいないんだよ〗


「なんというか・・・怖いな・・・」


恐るべき異世界。

いや、これでこそ異世界と言うべきか。

何が起きるか分からない異世界。

慎重に行動すべきだ。




「よし! そろそろこの森を出るか!」


もうこの森に用はない。

用がない場所に居続ける事が無駄であることは言うまでもない。


〖ほいほーい、頑張れよ〜。その服でどれだけいられるかは、見ものだね〗

「っ!?」


そうだ。

あのジジイ、物凄い薄着で俺を送りやがったのだ。

あのジジイまじで何やってんだよ。


〖もう・・・私の眷属はこんなにもバカなのか・・・〗


そう言ってリナリアは俺の身体の外に出る。


「おまえ、それほかの人には見えないのか?」


〖見えないよ〜。心配せんで良い!〗


おお、異世界。

背後霊的な感じなのだろうか?


異世界に来たという実感は益々強くなっていく。


〖よし、できた。君の高校? とか言う教育機関の制服を再現したよ。これで君が意思表示をすれば、君の身体に実物が出てきて自動で着ることができるよ。でも、今の服消えるから注意ね〗


今の服が消える?

そんな事はどうでもいい。

こんな薄すぎる服、いるはずもないのである。


俺はリナリアに信頼を寄せて言う。


「ああ、頼むよ! 」


その言葉で、俺の後ろで何か暖かいものを感じた。

これが魔力。

これが異世界。

そう思った刹那の事だ。


〖ほい! できたよ! 〗


魔法が完成したのだ。

魔法によって生成された制服は俺の前世のものを完全に再現している。


〖ああ、そういえばさ、ぶれざー? は作らなかったけど大丈夫? 〗


俺はリナリアのその言葉でなんて優しいやつだと思う同時に先程やってしまった無礼を詫びる思いで、


「いや、全然大丈夫だ! お前すごいな! 本当ありがとう! 」


俺は満面の笑みでそう答えた。


俺のその言葉で俺を絶望のどん底に突き落とすということは、今俺が知る由もないのであった。


━━━━━━━━━━━━━━━


「さっっっっっっっっっむ!嘘だろ!!」


長く、そして雄大なヴァーティスタ森林を越えた俺たちを待っていたのは極寒の地。

その極寒の地こそ、この世界での故郷となる、「ウィステリア公国」だ。

リナリアによると平気気温は-21度。

あの森が暖かかったのは魔法の影響らしい。


森を抜けたが、直ぐに街があると言う訳でもなく、少し整備された森が続いている。

さっきリナリアは「〈知恵のある生物があらゆる手段で干渉することことを許さない〉」と定められていることを教えてくれた。

しかしここは何か手が加えられている。

ここはヴァーティスタ森林ではないのだろうか?

そうリナリアに聞いてみると、


〖知らない!〗

と言われた。


少しイラッとしたが、その感情を勝る感情をがある。

「寒い」という感情だ。

要は、めちゃくちゃ寒いのである。


寒い俺に追い打ちをかけるのは雪。

日本であればニュースを見て感動するものだが、今年の雪には違う意味で感動させられた。


何も、森から出た瞬間に寒くなった訳では無い。

森を歩いている間、俺は違和感を感じていた。

どんどん寒くなっていくのだ。

最初のうちは耐えられたが、森の出口付近になってくると相当やばくなってきた。


そこで、俺はリナリアに言ったのだ。


「あの〜すみません、リナリアさん? もし良ければ、ブレザーを作っていただけないでしょうか・・・」

と。


そして、返ってきたのは沈黙のみ。

それ以上でもそれ以下でもない、沈黙。

つまり、無視。


そうして、ブレザーを作って貰えないまま、今に至る。

俺は東北のまあ北の方に住んでいただが、それでもこんな寒さは味わったことがない。


「じ・・・じぬ・・・」

そう呟いた刹那。


「うわあああああああああ!」


そう言って俺の前に整備された柵を飛び越えて出てきた。

耳が長い。

エルフだろうか? エルフだ。

違いない。

異世界だ。

しかも、美女。


そのエルフは俺の方を見ると、焦って、


「まずい・・・でも、ここで私がこの子を守らないと・・・!」

と言って、その目は一転。

決意に満ちた目になった。


俺が何があったんだと聞こうとすると、その原因が自分から出てきてくれた。


「フオオオオオオオオオオオ!!!!」


そう叫ぶながら柵を破壊した動物。


でかい猪だ。


多分名前は違うのだろう。


だって、ここ異世界だし。

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