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第96話『鳥籠と結界』

 アスタルテさんとチャットを行っているうちに、時間は過ぎていき────私は次の目的地を訪れていた。

燃え盛る炎が見える小さな街を見上げ、ファイアゴーレム二体に目を向ける。


 今のところ、プレイヤーの姿はなし。全員避難し終えた後なのか、はたまたゴーレムに全員殺られた後なのか……。

個人的には前者であってほしいけど、後者の可能性も捨て切れないな。


 私はゲーム内ディスプレイを閉じると、徳正さんの腕の中から降りた。

ひび割れた大地を踏みしめながら、ふとあることに気づく。


 あれ?そういえば、全然焦げ臭くない。燃えた灰なんかも落ちてないし……そして、何より────炎による熱気が感じられない。

まだ街の外に居るとはいえ、これだけ大きな炎が上がっていれば少なからず影響を受けている筈なのに。

よく見てみると、炎も不自然に固まっているというか……街中に留まっているような?


「この街の炎は変だね。まるで、鳥籠に閉じ込められた(・・・・・・・)小鳥のようだ」


 誰に言うでもなくそう呟き、リアムさんはスッた目を細めた。

僅かな好奇心と探究心の滲むヘマタイトの瞳を前に、私は少し感心する。


 表現は独特だけど、リアムさんの言葉は的を得ている。

少なくとも、全くの見当違いではなかった。


「私もリアムさんと同意見です。あのファイアゴーレムと炎は、街中に隔離されているように見えます」


「ラミエルもそう言うのなら、僕の違和感は正しかったようだね。それで、君はこの状況をどう考える?」


 どこかこちらを試すような物言いで、リアムさんは問い掛けてくる。

きっと、他意はないんだろうが……アスタルテさんに試された後だからか、少し身構えてしまった。


「そう、ですね……もし、誰かが意図的にファイアゴーレムや炎を閉じ込めているとしたら、やはり────“結界”が妥当な線ではないでしょうか?」


 街中に現れたゴーレムは郊外に行けないという制限があるとすれば、話は別だが……そんな話は聞いたことがない。

何より、『箱庭』がゴーレムから逃げやすい環境を作るとは思えなかった。

そんなことをするくらいなら、最初から強制参加なんてさせない筈。


「とりあえず、結界の有無を確認しましょうか……って、シムナさん!?」


 火傷を恐れず街中へ手を伸ばす青髪の美少年に、私は面食らう。

まさか、こんな……安全をフル無視した脳筋思考で、動くとは思わなかったから。

『せめて、こっちの指示を待ってよ!?』と思案する中、シムナさんはパッと目を輝かせた。


「────あっ、本当だー!結界があるみたーい!ほら、見てー!」


 そう言って、シムナさんは目に見えない透明な壁をバシバシ叩く。

その向こうには、燃え盛る炎があるというのに……警戒心は0だった。

なんとも無防備な人である。


 よ、良かった……結界があって。


 『本気で一瞬焦った』と肩の力を抜き、私は胸を撫で下ろす。

が、直ぐに姿勢を正した。


 結界の有無の確認は、前準備に過ぎない。本番はこれからだ。


「シムナさん、確認ありがとうございました。では────結界を破壊しましょう」


 大人しく待機しているメンバーを振り返り、私はそう宣言した。

すると、徳正さん達は『腕が鳴る』と言わんばかりに骨を鳴らす。

リアムさんに関しては、既に(武器)を手に持っていた。

『気が早いな』と苦笑しつつ、私は目に見えない結界を見上げる。


 本当は結界を発動・維持しているプレイヤーを見つけ出して、解除をお願いしたいんだけど……残念ながら、今そんな余裕はない。

少々手荒な方法にはなるものの、正面突破するしかないだろう。


 『これ以上のタイムロスは本気で勘弁』と思いながら、私は数歩後ろへ下がった。


「合図をしたら、一斉に結界を攻撃してください。結界を破壊した後はシムナさん、ラルカさん、レオンさんを中心にファイアゴーレムの討伐を、徳正さんとリアムさんは私の護衛をお願いします」


 その後の行動までしっかり決め、私は彼らの後ろに控えた。

準備万端と言うように武器を構える脳筋メンバーの前で、私は顔を上げる。


「皆さん、正確に……そして、スピーディーに仕事をこなしてください。では、作戦開始!」

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