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第86話『予想外の切り返し』

「それで、ラミエルさんはデーリア達を助けたお礼として何を望むです~?」


 これは確実に私を……いや、私達『虐殺の紅月』を試しているな。

デーリアさんの報告通りの集団なのか、見極めるために。


 『もし不合格ならさっさと恩を返して、関係を終わらせるつもりだ』と考え、内心頬を引き攣らせる。

思ったより責任重大な役割だな、と思って。


 でも、上手く行けば『プタハのアトリエ』の信頼を得られて、私達の立場も良くなる。

だから、アスタルテさんの満足する切り返しをしたいんだけど……いい案が思いつかない。

多分、直球で返すのは違うよね……それじゃあ、単純過ぎて話にならない。

だからと言って、巧妙な話術と交渉術を用いて話を進めれば、悪い印象を持たれるかもしれないし……。

はぁ……仕方ない。見方によっては愚策かもしれないが、ここは少し違う角度から攻めてみよう。


「────ふふふっ。なんだと思います?是非当ててみてください。クイズ感覚で構いませんから」


「!」


 質問を質問で返す────この手法は基本目上の相手に通じない。

だからこそ、使用したのだ。

『私達は対等だ』と示すために。


 アスタルテさんは恐らく、デーリアさん達を助けた私達を表面上は(・・・・)上の者として扱ってくれている。

でも、内心は見下しているだろう。

生産系ギルド界隈で幅を利かせる『プタハのアトリエ』と嫌われ者のPK集団である『虐殺の紅月』じゃ、釣り合わないから。

だが、私はソレを敢えてぶち壊した。

ここで腹を立てるなら、その程度の人間ということ。

そんな人がトップである『プタハのアトリエ』とのお付き合いなんて、こっちから願い下げである。


 ねぇ、アスタルテさん────試されているのは、私だけじゃありませんよ?

高みの見物なんて、させませんからね。


 とてつもなく性格の悪い手法に乗り出た私に、アスタルテさんは僅かに目を見開いた。

かと思えば────口元に手を当てて、笑い出す。


「あはははははっ!いや、まさか……ふふっ!そう来るのは思わなかったのです……くふふっ!ラミエルさんは面白い方なのですね。ぷははははっ!」


「……え?ぁ、はあ……それはどうも……?」


 目に涙を浮かべながら大爆笑するアスタルテさんに、私は思わず面食らう。

絶対に怒られるか、ネチネチとした言葉を返されるかの二択だと思っていたから。


 何となく分かってはいたけど、アスタルテさんってかなり変わった人だな。


 ある意味拍子抜けする反応を受けて、私は肩の力を抜く。

ついでに緊張も解けた。


「ふふふふっ……!いやぁ、いきなり笑ったりしてすみませんです。ラミエルさんの切り返しが、あまりにも予想外すぎて……ふふっ!つい、大笑いしちゃったです」


「……まあ、とにかく笑って頂けて良かったです」


「はいなのです♪」


 大爆笑の余韻を残しつつも通常運転に戻ったアスタルテさんは、実に上機嫌だった。

ニコニコと笑いながら、愉快げに揺れるペリドットの瞳でこちらを見据える。


 あれ?さっきまでの値踏みするような目じゃない……高みの見物を楽しむソレとも違った。

なんだろう?この感じ……。

とりあえず、悪い感じではなさそうだけど。


 躊躇いがちにペリドットの瞳を見つめ返すと、彼女はゆるりと口角を上げた。

かと思えば、短い足をおもむろに組む。


「デーリアが貴方を気に入った理由(わけ)が、よく分かったです。確かに貴方は凄く面白いのです。だから────我々『プタハのアトリエ』は人探しに全面協力するですよ♪『虐殺の紅月』さんとは、今後とも良きお付き合いをしたいですし♪」

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