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第84話『プタハのアトリエ』

 ────『プタハのアトリエ』

生産系ギルドの中で最も見た目や外見に拘るギルドで、芸術作品と呼ぶべきアイテムを多数開発している。

研究技術も()事乍(ことなが)ら、開発したアイテムのデザインが独特なことで知られていた。

そのため、ある種のブランド店として扱われている。


 噂によると、『プタハのアトリエ』は画家や彫刻家などの芸術に携わる職業のプレイヤーが多く在籍しているんだよね。

デザインに拘っているのも、そのため。

正直、『プタハのアトリエ』があのシンプルなデザインの巨大ロボットを作るとは思えないけど、情報収集は出来る筈。

行ってみて、損はないだろう。


「シムナさん、次の角を左へ曲がってください。その角を曲がれば、『プタハのアトリエ』のギルド本部は直ぐそこです」


「おっけー」


 特に何も考えず指示に従うシムナさんは、例の角を左へ曲がった。

すると、一際大きな建物が目に入る。

レンガ造りのソレは洋館に近い雰囲気を醸し出しているが、明るめの蛍光色を多用しているためレトロとは言い難い。

また、周りの建物が無駄にシンプルなので余計に目立った。

『本当に奇抜なデザインだなぁ』と半ば感心しつつ、私は歩を進める。


「────はい、とーちゃーく!何とかのアトリエのギルド本部に着いたよー、ラミエルー!」


「はぁはぁ……『プタハ(・・・)のアトリエ』ですよ、シムナさん。まあ、それはさておき……無事辿り着くことが出来て良かったです。はぁはぁ……」


「ラミエル、大丈夫ー?抱っこしようかー?」


「はぁはぁ……いえ、大丈夫です……お気遣い感謝します」


 早くも息切れを引き起こす私は、『面目ない……』と思いながら何とか息を整える。

そして、門の横にあるインターホンを鳴らした。

すると、直ぐに


『はい、こちら『プタハのアトリエ』本部なのです〜。ご用件を承るですよ〜』


 と、インターホン越しに声を掛けられる。

────幼女を彷彿とさせる、幼い声で。

多分、そういうキャラ設定なのだろう。

FROは幼児などの子供のプレイを固く断っているから。


「えっと、私は『虐殺の紅月』に所属する回復師(ヒーラー)のラミエルと申します。こちらに白髪アシメの男性はいらっしゃいますか?」


『……』


 お願いする側の礼儀として素性を明かすと、相手は何故か黙り込む。

やはり、PK集団として知られる我々とは関わりたくないのかもしれない。


 もうインターホンの接続を切られてしまったんだろうか?

私達とは一言も話したくない、という意思表示かな……?


 『なら、次の場所へ行こうかな……』と頭を悩ませる中、インターホン越しに何かの落ちる音が聞こえた。


『え……?貴方は『虐殺の紅月』のラミエルさんなんです!?デーリアから話は聞いているですよ!強くて優しい素敵な人だって!あっ、そうだ!さっきはうちのギルドメンバーが失礼したです!『プタハのアトリエ』の代表として、謝罪するですよ!』


「ぁ、えっ……?デーリアさん達が、『プタハのアトリエ』のギルドメンバー……?」


『はいです!デーリアを含める、あの九人はうちの素材収集チームのメンバーなのです!遠征から帰っくる途中でイベントが始まったので、あの街に居たのです!さっきデーリアから報告メールをもらって、その中にラミエルさんの名前があったのですよ!』


「な、なるほど……」


 デーリアさん達は『プタハのアトリエ』のギルドメンバーだったのか。道理で強い訳だ。

連携こそ、めちゃくちゃだったもののプレイヤー一人一人の強さは本物。

一般プレイヤーの基準で考えると、彼らは上の下に位置するプレイヤーである。

有名ギルドに所属していても、ちっともおかしくなかった。


『とりあえず、中に入ってくださいです!事情はよく分からないですが、人探しなら協力しますですよ!』


 自ら協力を申し出た彼女は、『門を開けるので、入って来てほしいです〜』と述べた。

かと思えば、遠隔操作で本当に門を開けてしまった。


 仲間の危機を救ったとはいえ、PK集団をよく本部に招き入れられるな……。


 『いいのか?入って』と迷うものの、せっかくの厚意を無下にするのは申し訳ない。

何より、こっちは猫の手でも借りたいほど忙しいのだ。

ここは甘えるべきだろう────と判断し、私はシムナさんを引き連れて『プタハのアトリエ』の敷地内へ入る。


 とりあえず、私達の対応をしてくれた彼女と会ってみよう。話はそれからだ。

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