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第79話『猛獣使いの姫君』

「念のため確認しますが、この街に居るゴーレムは全て狩り終わりましたか?」


「ああ。さっき、クマのぬいぐるみ達が集団リンチしたファイアゴーレムで最後だ」


 なら、ここにもう用はないな。さっさと街を出て、次の場所へ向かおう。もうあまり時間もないし。


 ゲーム仕様で空は真昼間のように青々としているが、時刻は既に夜の十時を回っている。

悠長にしていられる余裕はなかった。


 現状イベント開始から、この街も含めてまだ三つしか回れていない。

しかも、そのうちの一つは既にゴーレムが狩り尽くされており、無駄足となってしまった。

私達の狩ったゴーレムの数は、およそ三十体。

ゴーレム一体倒すのにヒーヒー言っている一般プレイヤーからすれば脅威の数字だが、このままでは確実にイベントクリア出来ない。


 はぁ……全てのゴーレムが一箇所に現れてくれれば、『虐殺の紅月』の総戦力を上げて狩り尽くすことが出来たのに。

こうもバラバラに配置されては、ゴーレムを見つけるのも一苦労だ。


 などと思いつつ、私はリアムさんを取り囲む三馬鹿に声を掛ける。


「ラルカさん、シムナさん、徳正さん。リアムさんイジメもそこら辺にして、そろそろ行きますよ」


「はーい!」


「今、そっちに行くね〜」


『命拾いしたな、小僧』


 約一名リアムさんに向かって物騒なことを言っているが、私は気にせず駆け寄ってくる彼らを待った。

砂埃を立てないよう早歩きで寄ってくる彼らに、私は『ナイス気遣い』と親指を立てる。

が、後ろに居るリアムさんを発見して固まった。

『何故、彼まで一緒に……』と困惑するものの、ツッコミを入れるのも面倒なのでスルー。


「もうあまり時間がないので、次の街へ行きましょう」


「それは構わないけど、デーリアだっけ〜?あの人達に何も言わずに街を出てきて、良いの〜?」


「あっ、そういえば爆発の様子を見に行くって言ってここに来たんでしたっけ?何か一言言ってからじゃないと、心配しますよね」


「あの金髪の女、心配性だもんねー」


「じゃあ、徳正さんと私がデーリアさん達に爆発の説明とお別れの挨拶をしに行くので、皆さんは先に行っててください。後から追い掛けます」


『承知した』


「了解だ。先に次の目的地に向かっている」


「では、また後で会おう。猛獣使いの姫君よ」


 私達に付いてくる気満々のリアムさんは、ニコニコと機嫌よく笑っている。

さっきまウチの三馬鹿に取り囲まれていたにも拘わらず、意外と元気そうだ。


 いや、うん……何となく分かっていたよ?私の方へ歩み寄って来た時点で。

まあ、百歩譲って同行するのは構わない。

超変人だけど、『紅蓮の夜叉』の幹部候補として名を馳せるくらいだし、戦力的には申し分ないもの。

でも、色んな意味で自由過ぎる彼には正直不安しかなかった。


 『また火薬を使われたら困るしなぁ……』と悩んでいると、レオンさんが躊躇いがちに口を開く。


「ラミエル達には悪いが、リアムの同行を許可してくれないか……?こいつを一人にすると、また何するか分からないし……誰かがこいつの手綱を握っててやらねぇーと。もちろん、こいつの仕出かしたことの責任はこっちで取る。だから、お願いだ」


 ガバッと頭を下げて懇願するレオンさんに、リアムさんは目を丸くした。

かと思えば、少し遅れて彼も頭を下げる。

その姿は親や兄の真似をする末っ子のようだった。


 レオンさんの言い分には確かに一理ある。

トラブルメーカーであるリアムさんを野放しにするのは危険だ。

でも、そのストッパーの役割を私達がこなす必要はないように思える。

それこそ、レオンさん一人で充分だ。


 『彼をリアムさんの子守りとして残し、ここで別れるべきでは?』と考え、私は眉間に皺を寄せる。

正直、レオンさんをチームから外すのは少し惜しい気がして。


 やっぱり、多少のリスクを背負ってでもリアムさんを連れて行くべきかな?

それにリアムさんの場合、レオンさんと違って顔が広いから一般プレイヤーの誘導や指示出しに利用出来るかもしれない。


 有名人の影響力を推し量りながら、私は一つ息を吐いた。

『しょうがない』とでも言うように(かぶり)を振り、顔を上げた。


「分かりました。リアムさんを仲間として、受け入れます。ただしチームで行動する以上、最低限の指示には従ってもらいます。いいですね?」


 有無を言わせぬ口調でそう言い、私は手を差し出した。

すると、リアムさんはニッコリ笑って手を重ねる。


「もちろんだよ。僕は君の指示に従う。だから────他の猛獣たちみたいに、上手に僕を使って(・・・・・)みせてよ!」


 キラキラと目を輝かせるリアムさんは、まるで子供のように繋いだ手をブンブン上下に振り回した。

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