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第67話『右腕と襲撃者』

二週間近く更新をお休みしてしまって、申し訳ありません。本日より、更新を再開致します。今後ともよろしくお願い致します。

 ゴーレムの討伐数が五百に達したという知らせを受けてから、十分後────私達は次の街に到着していた。

この街も白虎の街と同様、ほとんどの建物が崩壊している。

瓦礫の山と化した街中はシーンと静まり返っており、人の気配を全く感じられなかった。


「ゴーレムどころか、人っ子一人見当たらないね〜」


「どっかで隠れてるんじゃなーい?」


『ゴーレムの姿が見当たらないのに、か?』


「もしかしたら、ここのゴーレムはもう他のプレイヤーの手によって狩られたのかもしれませんね」


 中規模パーティーを組めば、一般プレイヤーでも倒せる程度の難易度なので、先に討伐されていてもおかしくはなかった。


 無駄足になっちゃったけど、討伐済みというのも立派な情報だし、別にいいか。


「では、皆さん次の街に────うぁ……!?」


 『次の街に行きましょう』と続ける筈だった言葉は、絶叫に遮られた。

何故なら、私の右腕が────消えてしまったから。いや、千切られたと言った方が正しいだろうか?

右腕に違和感を覚えるのと同時に、腕の感覚がなくなってしまったのだ。

私は狂おしいほどの熱と痛みに耐えながら、顔を歪める。


「っ……!!」


「ラーちゃん!!大丈夫!?」


「ラミエル!!」


『直ぐに治癒魔法で治すんだ!』


 血相を変えて駆け寄ってくる徳正さん達に、私はとりあえず頷く。

そして、自身の右腕に治癒魔法を施すと、安堵の息を吐いた。

淡い光と共に再生された右腕を見下ろし、ふと顔を上げた。


 一体、誰が(・・)私を攻撃したんだろう?

もちろん、この場に居る三人ではない。人一倍仲間思いな彼らを疑う余地はなかった。

でも、そうなると……私達の他に、誰かが居ることになる。

トラップの線も捨てきれないけど、それにしては早すぎる。


 『徳正さんですら咄嗟に反応出来なかったんだから』と考えつつ、私は慎重に腕を動かした。


「ら、ラーちゃん、腕大丈夫……?もう痛くない?」


「はい、もう大丈夫です。ご心配お掛けしました」


『……守れなくて、すまなかった』


「えっ!?いや、そんな……!これは私の不注意ですから、気にしないでください!」


 シュンと肩を落とすラルカさんに、私は首を横に振る。

が、なかなか復活してくれない。


 ホワイトボードに書かれた字も、心做しか弱々しく見えるし……これは相当落ち込んでいるかも。


「ラルカさんが気に病む必要はありません!私の不注意でもあるんですから!それにほら!もう怪我は治ってますし!あっ、そうだ!飴、いります?今、クマさんのキャンディーが幾つか余ってまして────きゃっ!?」


 不意に腕を強く引かれ、私は咄嗟に踏ん張ることが出来なかった。

そのまま腕を引っ張った張本人であるラルカさんの胸に顔をぶつけ……というか埋め、目を瞑る。

と同時に、真後ろからブォン!と不穏な音が聞こえた。


 えっ?これって、もしかして……いや、もしかしなくても今ラルカさんが手を引いてくれなかったら、また私が攻撃されていたパターン?


 さっき体験した痛みを思い出し、私はサァーッと青ざめる。

『何で私が狙われているの……?』と自問しながら。


「ん〜……結構早いねぇ〜……」


「でも、捉えきれない速さではないねー。さっきは油断してて全く見えなかったけど、集中すればギリギリ目で追えるかなー」


「まあ、何にせよ俺っち達の敵ではないね〜。というか────ラーちゃん襲ってきたやつって、ゴーレムじゃなくてプレイヤー(・・・・)だったんだ〜」


 えっ!?そうなの!?こんなに強いプレイヤーを敵に回した覚えは、ないんだけど!?

まさか、またカイン関連!?


 『あの掲示板の書き込みを見たのか!?』と推測し、私は頭を抱える。

何故こうも馬鹿が多いのか?と嘆きながら。


「……あーーーー!もーーーー!ただでさえ、時間ないのに!」


「ラーちゃん、どうどう。直ぐに片付けるから、落ち着いて〜」


「そうだよ、ラミエル!あんな奴、直ぐに殺し……じゃなくて!倒すから!」


『今、『殺して』って言おうとしなかったか?』


「気の所為だよー!僕がボスの命令を無視する訳ないじゃーん!」


 両手を腰に当ててそう断言するシムナさんに、ラルカさんは無言。

全く信用してなさそうだ。


「まあ、安心しなよ〜。シムナが本気で殺そうとした場合は、ちゃんと止めるから〜。それより、ラルカはラーちゃんの護衛に専念して〜」


『ああ、分かった』


 グッと親指を立てて了承するラルカさんに、私は『お願いします』と述べる。

そして、体の向きを変えると、ゲーム内ディスプレイを呼び起こした。

時間を有効活用しようと情報収集を再開する中、ラルカさんはギュッと後ろから抱き締めてくる。

恐らく、いざという時のためだろう。


「ラルカ、狡いよ〜。俺っちもラーちゃんをギュッて抱き締めたい〜」


「ラミエル!後で僕ともハグしてね!約束してたもんね!?」


「シムナ、必死すぎ〜。ていうか、ラルカのハグが許されるなら俺っちもハグしていいよね〜?」


「徳正がラミエルとハグしたら、犯罪でしょー。僕とラルカはショタとマスコットキャラだからセーフだけど、徳正はただのおじさ……()だしー」


「ん〜?ちょっと待って〜?確かにさっき、『おじさん呼びはやめて?』ってお願いしたけど、何で翁〜?更に酷くなってない〜?」


 『レパートリー偏りすぎでしょ〜』と述べる徳正さんは、ガクリと肩を落とした。

かと思えば、急に顔を上げ、右へ左へ視線をさまよわせている。

どうやら、例の襲撃者を目で追っているらしい。

でも、私の目には不自然な風が巻き起こっているようにしか見えなかった。

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