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第62話『吹雪の中で』

 ────それから私達は瓦礫の山や炎の壁を乗り越え、何とか街の中央付近まで来ていた。

のだが……ここに来て、吹雪が私達を襲う。

体の芯まで凍えるような寒さに見舞われながら、私達はブルリと身を震わせた。


 さっきまで炎エリアに居たせいか、余計寒さが……!


 私は震える手でアイテムボックスを操作し、ピンクのコートと白い手袋を取り出した。

そして、ソレらを身につけると、今度は桜色の毛布を二枚取り出す。


「あの、ラルカさん。こ、れ……えっ?」


 ピンクの可愛らしいモコモココートを身に纏う男性プレイヤーとケープを着用しているモフモフのクマの着ぐるみを見つめ、私は絶句する。

が、直ぐに正気を取り戻し、いそいそと毛布を仕舞った。

あれだけ暖かい格好をしているなら、必要ないと思って。


 とりあえず言いたいことはたくさんあるけど、疲れるからいいや。


 突っ込む気力すらなくラルカさんの後をついて行っていると、不意に彼が足を止める。


 あれ?どうしたんだろう?


 私はコテンと首を傾げつつ、後ろからひょこっと顔を出した。


「え……?あっ!人!?」


 自分を抱き締めるようにして倒れている女性プレイヤーを発見し、私は目を剥いた。

状況からして、彼女は吹雪の影響でダウンしてしまったのだろう。

見たところ、防寒着は持っていないようだから。

持っているなら、とっくの昔に着ている筈だ。


 それにしたって、この格好はないと思うけど…。


 全体的に透け透け・ヒラヒラで、アラブ系の民族衣装を彷彿とさせる服装である。

多分、職業は踊り子だろう。それも、駆け出しの……じゃなきゃ、防寒着くらい持っている筈。

『魔王討伐クエストとPKしかしていない私でも持っているんだから』と肩を竦め、アイテムボックスに目を向けた。

そして、さっきの毛布をもう一度取り出すと、女性プレイヤーにそっと掛けてやる。

柔らかい素材で出来たこの毛布は、コートと同じく寒さを遮断する機能がついている。

その上、体温を三度上げる効果もあるので、かなり暖かった。


 とりあえず、寒さ対策はこれで大丈夫でしょう。

あとは低体温症で削られた、彼女のHPを回復するだけ。


「《ハイヒール》」


 彼女の体に手を翳すと、私は治癒魔法の詠唱を行った。

これにより、乱れていた彼女の呼吸が安定する。

青白く変色していた肌も、僅かに温かみを取り戻した。

恐らく、血行や代謝が良くなったのだろう。


 これで死ぬ心配はなくなったけど、問題は……この子をどうするか、だよね。

連れて行こうにも、ラルカさんはもう男性プレイヤーと鎌で手一杯だろうし……私一人では、ちょっと運べない。

だからと言って、置いていくのはなぁ……。


 この状況をどう打破しようか思い悩み、私は顎先を撫でる。

────と、ここで男性プレイヤーが『ん……』と吐息を漏らした。

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