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第58話『情報共有《 side》』

「ほう?これがお前のパーティーメンバーが、かき集めたゴーレムの情報か。この短時間でよくここまで集め、まとめ上げることが出来たな」


 そう言って、俺の提供した情報に感心するのは『紅蓮の夜叉』ギルドマスターのヘスティアだった。

他の同盟メンバーも、『助かった』と言わんばかりに安堵している。


 先ほど届いたラミエルからの文章をコピー&ペースト(コピペ)して、同盟のグループチャットに送っただけなんだが……思いのほか大好評だな。

まあ、ウチのラミエル(参謀)が急いでかき集めた情報なんだから、当然だが。


 ラミエルの有能さを周りに知らしめることが出来た俺は、微かに頬を緩めた。

────と、ここで不満を漏らす者達が現れる。


「でも、この情報って確かなのかよ?」


「だよなぁ。この短時間でこれだけの情報が集まるとは、考えにくいし」


「デマなんじゃねぇーの?」


 そう言って、ケラケラ笑うのは同盟会議前に俺に絡んできた連中だった。

こいつらは俺達『虐殺の紅月』が同盟に加わることを、よく思っていない。

ヘスティアの脅しのおかげで一応納得はしたようだが、敵対心はまだなくなっていないようだった。


 この状況下でも突っかかって来るか……俺のことを馬鹿にするのは別に構わないが、仲間の能力を疑う発言は頂けないな。

だが、ここで問題を起こせば奴らの思うツボだ。

ラミエルの努力を無駄にしないためにも、ここは冷静な対応を…|。


 俺は肩まである銀髪を結い上げながら、文句を垂れる馬鹿共に視線を向けた。


「これらの情報は最後の文章にも記載されている通り、公式チャットと掲示板から見つけたものだ。いくつかデマ情報が混じっていても、おかしくない」


「だよなぁー!大体、公式チャットと掲示板から情報収集とか頭イカれてんじゃね?」


「それなー!」


「分かるー!」


 ここぞとばかりに囃し立て、彼らは俺の神経を逆撫でした。

ピキッと俺の中にある理性が、悲鳴を上げる。

『これ以上は我慢ならない』と眉間に深い皺を刻み、あいつらを睨みつけた。


「この情報を信用するもしないも、お前達次第だ。別に俺はこの情報が絶対に合っているとか、信じろとか言うつもりはない。だが────俺の仲間が必死に集めた情報を馬鹿にすることだけは、許さない」


「「「っ……!?」」」


 先程までの下品な笑い声が嘘のように静まり返り、奴らは腰を抜かす。

ガクガクと震える彼らの前で、俺は少しだけ殺気を放った。


 俺は親切心で、ラミエルのかき集めた情報を同盟メンバーに提供しただけだ。

そっちの方が効率的にゴーレムを狩れるし、『知らない』という恐怖を少しでも和らげることが出来るから。

それなのに……この仕打ちか?


 ラミエルの存在自体軽んじられた気がして、俺は怒りを覚える。

『何様のつもりだ?』と責め立てたくなる衝動を抑え、身を翻した。


 ここにもう用はない。目的はとっくに果たされた。さっさと去ろう。

じゃないと────うっかり、あいつらを殺してしまいそうだ。

PK禁止命令を出した張本人が真っ先に約束を破るなど、格好悪いことこの上ない。ここは我慢だ、我慢……。


「発言には、気をつけろ。次はない」


 俺はそれだけ言い残すと、一度も奴らの顔を見ることなく歩き出した。

そして、コツコツと一人分の足音が鳴り響く────筈だった。


「まあ、待て。そうカッカするな。お前一人で動くより、皆で協力して動いた方が効率いいだろ。なっ?」


 そう言って、俺に『待った』を掛けたのは『紅蓮の夜叉』ギルドマスターのヘスティアだった。

物怖じしない性格の彼女は、殺気立つ俺の元へ駆け寄ってくる。

が、俺は足を止めない。


「雑魚と協力しても、時間の無駄だ。さっき洞窟の出入口前にゴーレムが現れたとき、動けたのは俺とヘスティアを含める数人だけ。そんな奴らと協力して、何になる?俺は俺で勝手にやらせてもらう」


 イベント開始と共に現れたゴーレム二体を片したのは、俺とヘスティアだ。

他にも動いた者は数名居たが、そいつらの出る幕はなかった。

でも、問題はそこじゃない。

ゴーレムを前にして硬直した者や身を隠した者、自分だけ助かろうと転移系のアイテムを手にした者が問題なんだ。

腑抜けにもほどがある。


「まあ、そう言わずに協力してくれ。バラバラに動いたところで、後手に回るだけだ」


「断る」


「相変わらず、お前は頑固だな……なら、せめて私のナビに従ってゴーレムを討伐してくれ。それなら、単独行動しても構わん」


 俺の頑固さに折れたヘスティアは、妥協案を提示してきた。

『やれやれ』と(かぶり)を振っているが、ペリドットの瞳には有無を言わせぬ迫力がある。


 ヘスティアのナビで動く、か……。

まあ、確かにそっちの方がお互い動きやすいし、効率も良い。

入れ違いになったり、ヘスティア達とバッタリ会う可能性も防げる。悪くはない提案だな。

ヘスティアの指揮下に入れられるのは、少々癪だが……。

でも、これ以上ワガママは言えない。

ここら辺で引いておかないと、ヘスティアと衝突することになるから。


 『一秒でも惜しい状況でそれは困る』と判断し、一つ息を吐いた。

と同時に、マップ画面を開く。


「どこに向かえばいいのか、早く教えろ。ナビとやらをしてくれるんだろ?」


 ヘスティアの妥協案を受け入れると、赤髪の少女は見るからに表情を明るくした。

『そう来なくては!』と言わんばかりに頬を緩め、胸を張る。


「ああ!任せろ!この私が完璧なナビゲートをしてやる!大舟に乗ったつもりで居るといい!」


 グッと拳を握り締めるヘスティアは、気合い十分だ。

嬉々として空中をタップしながら数秒ほど考え込み、こちらを見上げる。


「じゃあ、まずはここから一番近い街────青滝あおたきの街に向かってくれ!街には魔法を使うゴーレムも居るらしいから、気を抜くなよ!」

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