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第4話『今後の方針』

────────────────────

No.4:サウスダンジョン前


No.6:サウスの街


No.5:ラボ内です


No.3:ウエストの街よ


No.2:俺っちとNo.7はイーストダンジョン前だよ〜


No.1:把握

────────────────────


 このナンバーは『虐殺の紅月』のグループチャット内で使われる個々の名前で、パーティーに加入した順番を示している。

ちなみにNo.1がリーダー、No.2が徳正さん、No.7が私である。


 何でグループ内での名前をナンバーにするのかは分からないが、これはこれで良いかなと思っている。

だって、なんか闇の組織のグルチャみたいでドキドキするもん。

と言っても、普段はあまり使われていないけど……。

たま〜に徳正さんが、どうでもいい近況報告をする程度。

なので、こうしてちゃんと会話出来ているのは珍しい。というか、私が加入してから初めてのことだ。


 その“初めて”が自分達の命を脅かすデスゲーム関連であることは、少し複雑だけど……。


────────────────────

No.1:全員、イーストの南寄りにあるリユニオンタウンに集合


No.1:誰かNo.5を拾って来れるか?

────────────────────


 全員の現在位置から、リーダーは直ぐに集合出来そうな場所を割り出した。

たった数分しか経っていないのに、凄い計算力と決断力である。


────────────────────

No.3:拾ってあげたいんだけど、転移魔法の最大移動距離が100m前後に制限されちゃってて


No.3:私はちょっと厳しいかも

────────────────────


 No.3は全属性持ちの魔法使いで、私が加入するまで回復師(ヒーラー)の役割も果たしていた凄い人だ。

全属性持ちなので、もちろん転移魔法も使える。


 きっと、あのメールを読んだ後すぐに転移魔法の最大移動距離を調べたんだ……。

凄いなぁ……私は慌てるばかりで、そんなの眼中になかったもん。


「転移魔法の制限かぁ〜。いやぁ、なかなか厳しいねぇ〜……」


 『100m前後なら、走った方が早い』とボヤき、徳正さんは自身の顎を撫でた。

かと思えば、不意にこちらへ目を向ける。


「ねぇ、ラーちゃん。No.5のことだけど、俺っち達が一番近い位置に居るし、拾ってもいいかな〜?ちょっと遠回りになっちゃうけど、他の子に任せるのは酷でしょ〜?」


 確かに。No.5の居るラボは、イーストの最奥エリアにあるという話だもんね。

他のメンバーに頼むとなると、かなりの遠回り及び時間ロスを強いられる。

さすがにそれは可哀想だろう。

それにNo.5さんには前々から興味あったし、ちょうどいい。


「そうですね。私達がNo.5さんと合流して、集合地点に向かいましょう」


「ラーちゃんなら、そう言ってくれると思ってたよ〜」


 ヒュー♪と無駄に上手い口笛を吹き、徳正さんは慣れた手つきでキーボードを打ち込む。


────────────────────

No.2:俺っち達が拾っていくよ〜


No.2:一番近い位置に居るし〜


No.5:すみません……お手数をお掛けします


No.2:いやいや〜全然気にしないで〜

────────────────────


 No.5さんって、凄く謙虚っていうか……礼儀正しい人だな。

失礼かもしれないけど、『虐殺の紅月』にこんな礼儀正しい人居たんだ……。


 『No.7さんもよろしくお願いします』とわざわざ名指しでお願いしてくるNo.5さんに、私は少し感動してしまう。

『言葉遣いも丁寧だし、現実(リアル)では社会人かもしれない』などと思いながら、当たり障りない返信をした。


 私がガッツリ関わったパーティーメンバーって、徳間さんだけだからなんか緊張するな。


 『この返信で大丈夫かな?』と心配しつつ、チャット画面を眺める。


────────────────────

No.1:とりあえず、これで決まったな


No.1:当分の目標は、『虐殺の紅月』のメンバー全員の集結。不要な戦闘は避けてくれ


No.1:言わなくても分かってると思うが、PKはしばらく禁止だ


No.1:あのメールの内容が事実なら、PKは現実世界の殺しと同じになる。


No.1:俺はお前達を犯罪者にはしたくない


No.1:もちろん、止むを得ない状況であれば許可するが、基本はナシだと思っていてくれ

────────────────────


 PK行為の禁止、か。まあ、それは当然だろう。

あのメール内容を見た後に、PKなんて常識のある人じゃ続けられないよ。

そう────常識のある人なら。


────────────────────

No.6:えー!PK駄目なの!?


No.4:……善処する


No.5:あの……トラップに引っ掛かって死んでしまった場合は、どうすれば……?

────────────────────


 徳正さんからNo.6さんとNo.4さんは無類のPK好きだよ、と聞かせられてはいたが……No.5さん!貴方もですか!?

ていうか、トラップって何!?そんなものあるの!?


「ハハッ!皆、本当にPK大好きだなぁ〜」


「いや、笑い事じゃないと思うんですけど……!?」


 『PKは現実世界での殺しと同義』と聞いた後に、この発言って……かなり、やばくないですか!?

そこまでPKにこだわる理由が、分からないんですけど!!


 リーダーと徳正さん、それからNo.3さんとしか関わってこなかった私はメンバーのクレイジーさに驚愕。


 確かに好き好んでPKするくらいだから、多少人とズレた感性を持っているんだろうとは思っていた……けど!ここまでズレてるとは思わなかったの!


「はははっ!まあ、PK大好き組とNo.5については主君がどうにかするでしょ〜。とりあえず、俺っち達は移動しよっか〜?情報の整理も、途中だったし」


「あ、はい!そうですね」


 まだ情報交換の途中だったことを思い出し、私はコクコクと頷く。

『歩きながら話そう』と言って道無き道を行く徳正さんに、私も続いた。


 時刻は二十三時五十六分。もうすぐ、ナイトタイムが来る。


 ナイトタイムとは、0時から四時までゲーム内が真っ暗になる時間帯のことだ。

真っ暗と言っても、星や月はきちんと存在しているため足元程度は何とか見える。

月の満ち欠けや天気によって、多少差はあるが。

『FROって、変なところで拘るから……』と苦笑しつつ、私は徳正さんの半歩後ろを歩く。

森の木々を眺めながら。


「で、情報整理に(話は)戻るけど────ぶっちゃけ、ラーちゃんは“ゲームクリアの定義”って何だと思う〜?」


 こちらを試すような質問に、私は僅かに目を見開いた。

と同時に、夜の帳が降りる。

今────日付けが変わった。

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[気になる点] お疲れ様です。いつも楽しく読まさせていただいております。読み直してやっぱりきになったのですが、 2話で「いつもと変わらない面白可笑しいグルチャ内容に私の不安も自然と溶けて無くなった。」…
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