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第46話『第十一階層』

 それから、私達は直ぐにボスフロアを出て────第十一階層まで来ていた。

今度はモンスターホールを作らず、きちんと階段(正規ルート)で。


 ラルカさんが作りたそうにしてたけど、さすがにこれ以上のタイムロスは不味いからね。

モンスターホール作りは、諦めてもらった。


「それにしても、これはまた……絶景だね〜」


「この魔物(モンスター)、気持ち悪ーい!」


『外見に難アリだな。もう少しマシなキャラデザインは、なかったのか?』


 各々好きなことを言って、男性陣は顔を顰める。

何故なら、目の前に────毒系モンスターであるピュートーンが居たから。


 ピュートーンとは、ヘビの形をした魔物(モンスター)で毒を持つ大きな牙と先の尖った尻尾を持っている。

その毒に犯されると、、死に至る仕組みだ。

ただアラクネさんの作った猛毒と違って、そこまで即効性は強くないため直ぐに処置すれば助かる。


 ピュートーン、噂には聞いてたけど本当に毒々しい見た目だな……紫・黒・緑の配色だからかな?


 牛サイズの体を揺すりながらシャーッと威嚇してくるピュートーンを見つめ、私はふと『サーペント』のリーダー スネークを思い出す。


 徳正さんにこっ酷くやられていたけど、大丈夫だっただろうか?


「ねぇー!こいつ、臭いよー!絶対、触りたくないんだけどー!」


『ならば、斧などの武器で倒せばいい』


「えー!?やだよー!この武器、気に入ってるもん!臭くしたくなーい!」


『なら、やはり素手で戦うしかないな』


「えぇ!?やだー!」


 敵の前でもお構いなく駄々を捏ねるシムナさんに、ラルカさんはやれやれと肩を竦めた。

『これだから、お子ちゃまは』と言わんばかりの態度を取る彼の傍で、徳正さんが声を上げる。


「じゃあ、俺っちとラルカがピュートーンの足止めをしとくから、シムナはモンスターホール作ってよ〜。階段に行くの面倒臭いからさ〜」


 ボスフロアに穴を開けないといけなかった第十一階層への移動と違い、第十二階層への移動はモンスターホールでも良かった。

作成にそこまで時間は掛からないだろうから。

そのため、私は徳正さんの提案に否を唱えなかった。『お好みでどうぞ』と肩を竦め、静観する中、シムナさんはパッと表情を明るくする。


「えっ!?僕、戦闘しなくていいの!?やったー!」


『喜ぶのはいいが、仕事はきっちりこなしてくれよ』


「分かってるよー!まっかせといてー!」


 自身の胸元を軽く叩き、シムナさんは自信満々に振る舞った。

かと思えば、直ぐさま作業を始める。

床に斧を突き立てる彼の前で、徳正さんとラルカさんも動き出した。


 さてと、私はこれからどうしようか。と言っても、やることはなさそうだけど。

何より、徳正さんが働くことを許してくれないだろう。

さっき、私に役割を与えなかったのは意地悪でも何でもなく、休憩を取らせるためだから。

多分、疲れていることを見抜かれちゃったんだと思う。


 『実はここまで動き回ったことなくて……』と苦笑し、自身の手を見下ろす。


 これでも、一応悟られないように……足を引っ張らないように隠していたつもりなんだけど、徳正さんには隠せなかったみたい。

はぁ……本当、敵わないなぁ。


「うへぇ〜!めっちゃ臭いんだけど〜」


『後で『パーフェクトクリーン』を分けてやる』


「えっ!?マジで〜!?ありがと〜!」


 ピュートーンの吐いた臭〜い毒液を食らった徳正さんは、毒の効果よりも匂いに反応する。

ダメージなんて、二の次のようだ。

平然とした表情で次々とピュートーンを切り伏せていく彼の姿に、私は深い溜め息を零す。


 放っておいても、どうせ私が何とかしてくれると思っているのだろう。

頼りにされるのは嬉しいけど、もう少し自分の体を気遣ってほしいな。

一応、死に至る猛毒を受けた訳なんだから。


 私は徳正さんの落ち着いた様子に肩を竦め、手の平を翳した。


「《パーフェクトヒール》」


 そう唱えると、ピュートーンの毒液で(ただ)れた徳正さんの腕は元に戻った。

時間を巻き戻すように、傷口は綺麗に塞がっている。


 パーフェクトヒールとは、ヒールとキュアの役割を一つにまとめた魔法。

現時点では、最強の治癒魔法と言える。

恐らく、ピュートーンの毒も無事解毒されているだろう。


「ラーちゃん、回復ありがとね〜ん」


「いえ。これくらい朝飯前ですよ。でも、あまり怪我はしないでくださいね」


「は〜い」


 ヒラヒラと手を振り、徳正さんは再びピュートーンに向き直った。

かと思えば、一瞬で相手を切り伏せる。


 ピュートーンは一応、中層魔物(モンスター)なんだけどなぁ……。


「はいはーい!ちゅーもーく!モンスターホールが完成するよー!」


 視界に映った小さな手と元気な声に釣られるまま、私は視線を動かした。

すると、誇らしげに胸を逸らす青髪の少年と床に突き刺さった斧を目に入る。


「んじゃ、いっくよー?────せーのっ!はい、かんせーい!」


 切り残した部分を一思いに斧で斬り落としたシムナさんは、ピョンピョンと飛び跳ねた。

と同時に、瓦礫の落ちる音が鳴り響く。

ソレを聞き流しながら、私達は目的地である第十二階層を見下ろした。

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