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第43話『渦神カリュブディスの攻略方法』

 ボスフロアが水源エリアじゃなければ、ゴリ押しで行くんだけど……水中戦での物理攻撃は、あまりダメージを与えられないんだよね。

水抵抗のせいで、勢いを殺されるから。

正直、物理特化パーティーの私達と水中魔物(モンスター)である“渦神カリュブディス”との相性は最悪。勝てる気がしない。

せめて、足場となる地面か宙を飛ぶ浮遊魔法があればなぁ……。

水中戦さえ避けられれば、大分有利になる……って、ちょっと待てよ?

“あれ”を使えば、水中戦を避けられるんじゃないか!?


「徳正さん!この前、使った────『グリュプスの笛』って、ありますか!?」


 空中を自由に飛び回ることの出来るグリフォンが居れば、戦いはかなり楽になる。

少なくとも、水中に引きずり込まれて溺死する可能性は低くなる筈!


 そんな私の考えを瞬時に見抜いたのか、徳正さんは表情を明るくした。


「もちろん、あるよ〜。売っぱらっても良かったんだけど、きっとまたどこかで使う機会があると思ってさ〜。取っておいたんだよね〜」


「ナイス判断です、徳正さん!助かりました!」


「でしょでしょ〜」


 徳正さんは『ふふん!』と得意げに胸を反らし、アイテムボックスから取り出した角笛を自慢げに掲げる。

そして、『もっと褒めて』と言わんばかりにこちらへアイコンタクトを送ってきた。

が、私は華麗にスルー。


「ラーちゃんが俺っちに冷たい……」


『それは今に始まったことではない』


「あはははっ!徳正ってば、見事に振られたねー!」


 シュンと肩を落とす徳正さんに、ラルカさんとシムナさんはまさかの追い討ちをかけた。

慰める気0である。


 徳正さんを落ち込ませた私が言うのもなんだけど、ちょっと皆対応が雑じゃない?

もう少し愛を持って接してあげよう?


「まあ、徳正のことは置いといて……グリフォンを使ってどんな作戦を立てるわけー?」


『グリフォンは二人乗りの移動アイテムだ。どんなに詰めて座っても三人が限界だろう。誰か一人は待機することになるぞ』


「そうですね。全員乗ることは物理的に不可能です」


 フロアボスとの戦いでは外部からの接触・横槍を防ぐため、部屋全体に結界が張られる。

結界外からは攻撃も出来なければ、仲間の支援も出来ない。

なので、一人だけ外に待機してこっそりサポートする……というのは無理だった。


 『可能だったなら、支援職の私が外で待機するんだけど』と肩を竦め、熟考する。

どのようにメンバーを振り分けるか、を。


 う〜ん……本当はあまり気が進まないんだけど、確実性を狙うならこれしかないか。


「徳正さん、つかぬ事をお聞きしますが、水面を走ることって可能ですか?」


「ん〜?水面〜?走れるよ〜。だって、俺っち忍者だもん〜。でも、それがどうかした〜?────って、まさか……」


「はい、その『まさか』です」


 さすがは徳正さんと言うべきか、瞬時に私の思惑を見抜いたようだ。

『相変わらず、察しのいい人だな』と思いつつ、私は人差し指を立てる。


「徳正さんには────囮役をやってもらいます」


「『えっ!?』」


 まさか私が仲間を囮として使うとは思わなかったのか、ラルカさんとシムナさんは驚きを隠し切れずにいた。

対する徳正さんは平然としているが。


 私だって、出来れば仲間を囮に使いたくない。でも、今はこれしかないの。

それに徳正さんのスピードに、“渦神カリュブディス”が付いてくるとは思えないし。

水中なら話は別だが、徳正さんが走るのは水面(・・)

水中に引きずり込まれないよう気をつければ、被害は出ないだろう。


「徳正さんが“渦神カリュブディス”を引き付けている間に、私達は“これ”を使ってボスフロアの水を吸い上げます」


 そう言って、私は────アイテムボックスの中から、何の変哲もない瓢箪を取り出した。

これは液体状のものなら、何でも無限に(・・・)吸い込めるアイテム。容量制限のない水筒と思ってくれていい。

何かの景品で手に入れたアイテムだったが、売らずにアイテムボックスの中に放置……じゃなくて、大事に取っておいて良かった。


「全ての水を吸い上げるとまで行かずとも、水深を低くすることが出来れば大分戦いやすくなります。なので、徳正さんには時間稼ぎをお願いしたいんです」


「なるほどね〜。そのための囮か〜」


『敵のフィールドを作り替えるとは、なかなかいい発想だ』


「“縛り”さえなければ、あんな魔物(モンスター)瞬殺だもんねー!」


 感心しきりといった様子で頷く三人に、私は頬を緩める。

彼らに褒められたことが、ただ嬉しくて。


「異論はなさそうですね?では、これより────“渦神カリュブディス”討伐作戦を開始します!」

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