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第33話『好戦的な目』

 『サーペント』のアジトを後にした私達はスッドの森を抜け、道なき道を馬車で移動していた。

特に目的地もなく走り続けるため、気分は完全にドライブである。


「ねぇねぇ〜、今日の夜どうする〜?近くの街に宿でも取って、泊まる〜?宿空いてるか知らないけど〜」


 馬車の手綱を握る徳正さんはこちらを振り返って、そう問いかけてきた。

すると、奥で寝ていたシムナさんが体を起こす。


「『どうする』って、そんなの野宿しかないんじゃなーい?」


『僕はそれで構わないが、女の子を外で寝かせるのには抵抗がある』


「あっ、私のことはどうかお気になさらず!野宿はさすがに初めてですが、問題ありません!」


「えっ?それって、つまりラーちゃんは俺っちと同衾しても構わないってこ……」


「違います」


「せめて最後まで言わせて〜……」


 フイッと視線を逸らす私の前で、徳正さんは残念そうに肩を竦める。

と同時に、前を向いた。


「まあ、とりあえず今日は野宿ってことで〜。どこか野宿するのに、丁度いい場所を探そっか〜」


「あっ!それなら、僕いいところ知ってるよー!今、地図のスクショをチャットに送るねー!」


『シムナがオススメする場所か……嫌な予感しかしないのは、僕だけだろうか?』


「大丈夫、大丈夫〜。俺っちもかな〜り嫌な予感してるから〜」


「えー!?僕の信用度、低くないー?」


 シムナさんは『二人とも、ひどーい!』と非難するものの、その表情(かお)は笑顔だ。


 シムナさんって、本当によく笑う人だな。“狂笑の悪魔”と呼ばれるだけある。


 などと考えながら、私は何の気なしに馬車の外へ視線を向けた。

その瞬間、大きく目を見開く。

だって、私の目に────


「あ、あれは……!?」


 ────魔物(モンスター)の群れが映っていたから。

種類は様々で、ゴブリンやオークなどの下級魔物(モンスター)がほとんど。

でも、なんせあの数だ。

目視できる範囲内だけでも、軽く五十体は居る。


 魔物(モンスター)は基本ダンジョンから出てこない。そういう風にプログラムされているから。

でも、例外もある。

プレイヤーが魔物(モンスター)をダンジョンから故意に連れ出す事と魔物(モンスター)爆発だ。


 ────魔物(モンスター)爆発。

これは魔物(モンスター)がダンジョンから、溢れ返る現象のことを指す。

要するにダンジョンに収まらないくらい魔物(モンスター)が出現しちゃったって訳。

ただ、この現象に陥るのは上層の魔物(モンスター)だけ。

というのも、中層やボスフロアの魔物(モンスター)はフロアごとに生存出来る個体数が決まっているから。

また、倒してから復活するまでに少しラグがあった。

でも、上層にそんな制約はないため狩らなければずっと増え続ける。


 今までは多くのプレイヤーが魔物(モンスター)を狩っていたためプログラムとの中和が取れていたが、街に引きこもるプレイヤーが増えた今、魔物(モンスター)を狩ってくれる存在が居ない。


 このデスゲームが始まってから、もう一週間は経っている。

その間、誰もダンジョンに潜っていないとすれば……魔物(モンスター)爆発が起きても、おかしくない。


「皆さん、前方に魔物(モンスター)の群れが現れました。数は五十体以上。恐らく、魔物(モンスター)爆発が起きたものと思われます」


 手短に状況を説明し、私は一人一人の顔をしっかり見る。


「特別強い魔物(モンスター)は居ませんが、とにかく数が多いです。どうしますか?」


「『どうしますか?』って、そんなの決まってるでしょ────一匹残らず、狩り尽くす。あんな雑魚相手に尻尾巻いて逃げるなんて、僕は御免だしー。それに最近体を動かしてなくて、なまっていたんだよねー。準備運動くらいには、なるかも♪」


 クスクスと楽しそうに笑うシムナさんは、パパラチアサファイアの瞳をスッと細める。

その瞳は爛々としており、好戦的な目をしていた。


 まあ、そう来るとは思っていたけど……まさか、即答とはね。それも、PK好きのシムナさんが。

プレイヤー以外には、興味ないのかと思っていた。


 『ちょっと意外かも』と思いつつ、私は他二人に目を向ける。

武器に手を掛けて備える徳正さんとラルカさんの姿を見やり、小さく肩を竦めた。


 全員やる気満々みたい。

まあ、あの集団を野放しにすれば街に被害が出るだろうし、今ここで叩くのもいいかもしれない。

街に魔物(モンスター)が現れたとなれば、よりプレイヤーの不安を煽る結果になるだろうから。


「分かりました。では、これより魔物(モンスター)の駆除作業に移ります。先行はシムナさんとラルカさんが、後方支援は私と徳正さんが行います。異論ありませんね?」


 ガタガタと揺れる馬車の中で立ち上がった私は、コクリと頷く三人を一瞥する。

と同時に、アイテムボックスの中から杖を取り出した。

純白の光を放つソレを握り締め、私は前を向く。


「指揮は私が取ります。戦闘準備に入ってください」

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