表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

296/315

第295話『ドローンで様子見《田中 side》』

「まだまだ荒削りの部分はあるが、ガキにしてはよく考えたじゃねぇーか」


 『よくやった』と褒め、集団リンチに遭うウァサゴを見つめる。

『クールタイムが終わる前に!』と焦っているのか、前衛メンバーは容赦なく拳を繰り出した。

後衛メンバーも出し惜しみすることなく、強化魔法や支援魔法を放っている。

恐らく、またセト一人に耐えてもらうのは嫌なんだろう。

『早く死ね!』と言わんばかりの暴挙に苦笑していると、ついにウァサゴは消滅する。

ふわふわと宙を漂う光の粒子を前に、セト達はホッと胸を撫で下ろした。


「よし、じゃあ次行くか」


「「「おー!」」」


 いつの間にかスクリーンの前に集まっていた部下達は、勢いよく拳を振り上げる。

アニメの戦闘シーンでも観ているような気分なのか、目をキラキラさせていた。

『テメェらは特撮好きのキッズかよ……』と呆れつつ、俺は偵察用のドローンを奥へ移動させる。

すると、間もなくして────『蒼天のソレーユ』と四天王アガレスの姿を捉えた。


「おっ?こっちは優勢だな」


 既に服も髪も乱れまくっているアガレスを眺め、俺は『いい調子じゃん』と笑う。

助太刀の必要はなさそうだと思い、一旦この場を離れようとした。

その瞬間────アガレスが最後の悪足掻きを始める。


「おっとっと……」


 突然変わった天候と暴風によりドローンを吹き飛ばされそうになり、俺は慌てて地上へ降りた。

そして、下から手のような……縄のようなものを出し、木々に纏わり付く。

ドローンを固定するために。

『一先ず、これで大丈夫か?』と考える中、アガレスは雷雲を呼んだ。

かと思えば、あちこちに雷を落としまくる。


「いや、傍迷惑なやつだな」


 『ドローンに当たったらどうすんだ』と文句を言い、俺は眉を顰める。

だって、このドローン一台で家を建てられるから。

もちろんFRO内での話だが、破壊を容認する訳にはいかなかった。

『おい、ニール!どうにかしろ!』と心の中で叫び、俺は画面の端っこに移る男を凝視する。

すると、こちらの意志が通じたのか────ニールはトドメを刺しに行った。

指揮者のように手を動かし、部下達に指示を出す彼は雨も風も雷も気にせず連続攻撃。


 さっきまで前衛が弾幕を張る(牽制)役で、後衛がダメージを与える(攻撃)役だったのに……一斉攻撃へ切り替えやがった。

てことは、これ────勝ち確だな。

じゃなきゃ、こんな舐めたプレイ(舐めプ)しねぇーよ。

あのニールなら、尚更な。


 『アガレスの暴走も織り込み済みってことか?』と考える中、『蒼天のソレーユ』は絶え間なく攻撃を繰り出す。

冷静さを欠いたアガレスなど敵でもないのか、着実にダメージを与えて行った。


「マジで容赦ねぇーな。まあ、一切防御せず攻撃に全振りしたアガレスもアガレスだけど」


 切断された手足も折れた歯も無視して戦う着物女に、俺は『ありゃ、負けるわ』と肩を竦めた。

だって、連携力の優れた『蒼天のソレーユ』にああいう戦い方は向かないから。

『虐殺の紅月』のような猛者でもない限り、力任せに戦っても倒せない。

というか────あいつらの連携は崩れない。


 本気で勝ちたいなら、まずは指揮官のニールを狙うことだな。

まあ、そんなのギルドメンバーが許さないだろうけど。


「────って、言っている傍から……」


 巨大スクリーンに映ったアガレスの愚行を前に、俺は溜め息を零す。

『せめて、こいつだけでも!』とでも言うように捨て身で向かっていくアガレスを、俺は少しだけ哀れんだ。

『大人しくしておけば、もうちょっと長生き出来たのに』と。


「「「おお……」」」


 各々大技を放つ『蒼天のソレーユ』のメンバーに、ウチの部下達は目を剥いた。

その瞬間、アガレスは全身に大怪我を負い、光の粒子と化す。

結局、奴の繰り出した最後の一撃は……刃はニールに届かなかった。

悔しそうに顔を歪めるアガレスは、簪と共に消え失せる。


 さて、あとはヘスティアのところだけか。


 固定したドローンを元に戻しながら、俺は『もう終わってそうだけど』と苦笑いする。

そして、ドローンを再び空に飛ばした瞬間────城の方から、大きな火柱が上がった。

と同時に、凄まじい爆音と爆風がここら一帯を包み込む。

ドローンを通さずとも感じる攻撃の余波に、俺は『おいおい、マジかよ』と呟いた。


「どんだけ、派手な戦いをしてんだ?」


 吹き飛ばされて戻ってきたドローンを前に、俺は肩を竦める。

幸い、落下したり物にぶつかったりすることはなかったため、無事だが……一旦回収した。

『これ、メンテナンスしておけ』と部下に投げ渡し、俺は二体目のドローンを飛ばす。

先程と同じルートで前に進み、セトやニールの無事を確認してから城の前に行った。

すると────光になって消えるバアルと満足顔のヘスティアが、目に入る。

どうやら、先程の一撃で見事撃破したらしい。


 いや、アレお前の仕業かよ。二次被害、半端ないわ。ふざけんな。


 倒れた木々や一部燃えた草むらを前に、俺は『加減ってもんを知らねぇーのか』と呆れる。


「まあ、全員無事で何よりだけど……って、ん?あのアシメ野郎(・・・・・)はどこに行った?」


 『紅蓮の夜叉』の幹部候補生である白髪を思い出し、俺は小首を傾げた。

ドローンのカメラに映っていないだけかと思い、一先ず城の周りをグルッと回るものの……見つからない。

やがてヘスティア達もあいつの不在に気づき、慌て始めた。


 まさか、さっきの爆風で吹き飛ばされたのか?

だとしたら、早く見つけてやらねぇーと。

着地に失敗していたら、大惨事だぞ。


「おい、テメェら。ドローンを貸してやるから、『紅蓮の夜叉』の幹部候補生……と言っても、分かんねぇーか。えっと……あっ、白髪アシメの男を探してくれ」


 以前ラミエルがそう言っていたことを思い出し、俺は外見特徴を伝えた。

と同時に、アイテムボックスから取り出した大量のドローンを配る。

『プタハのアトリエ』の奴らにも使い方だけ教え、捜索を手伝ってもらった。


 一応、ヘスティアに連絡を入れておくか。


 『俺達に見られているとは思ってないだろうし』と、チャット画面を引き出す。

そこで文章を打ちながら、俺は幹部候補生の無事を願った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ