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第294話『四天王《田中 side》』

◇◆◇◆


 ────時は少し遡り、妹達と別れた直後のこと。

俺はラジコンで巨大ロボットを操作しつつ、四天王のガミジンとやらと戦っていた。


「お前ら、俺を死ぬ気で守れ!」


「「「はい!」」」


 元気よく返事し、俺の周りに固まる『田中研究所』と『プタハのアトリエ』のギルドメンバー。

それぞれ自前のアイテムや習得した魔法で、ガミジンの特攻を防いでいた。


 この作戦の指揮は、俺だからな。

狙われるのは、織り込み済みだ。

まあ、倒されるつもりは微塵もねぇーけど。


「つーか────俺を狙ってきた時点で、決着はついてんだわ」


 そう言うが早いか、俺は懐からスプレー缶を取り出す。

他の奴らも同じスプレー缶を手に持ち────ガミジン目掛けて、噴射した。妹特性の毒ガスを。


「っ……!?」


 本能的に危機を察知したのか、ガミジンは後ろへ飛び退いた。

────が、もう遅い。

少しでも吸ってしまったら、体は見る見るうちに溶けていく。

そのうち、原型を留められなくなるだろう。


「テメェら、念のためもう一回解毒薬を飲んでおけよ〜。効果時間を考えるにまだ大丈夫だと思うが、俺の妹の毒は恐ろしいからな〜」


「「「はい!」」」


 間髪容れずに頷いた部下達は、出発前に飲んだ薬をアイテムボックスから取り出した。

かと思えば、直ぐさま一気飲み。

恐らく、目の前のガミジンを見て危機感を抱いたのだろう。

なんせ、奴の体は────早くも液体化しているから。

おかげで、そこは水溜まりになってしまった。


「な、にを……!?私に……毒は……効かない、筈……!」


 ドロドロになってもまだ喋る余裕があるのか、ガミジンは疑問を吐き出した。

困惑の滲んだ声色を前に、俺は『そういや、こいつ毒耐性持っているんだっけ?』と考える。


「なあ、お前の毒耐性ってあれだろ?FROに元々ある毒素を受け付けないってやつ。なら、意味ねぇーよ。だって、俺の妹の毒は────完全新種。本来ここにはない毒素だから」


「!!?」


 ハッと息を呑むガミジンは、『そんな馬鹿な……!』とでも言うように水面を揺らした。

顔などなくても動揺していることが分かる彼を前に、俺はニヤリと笑う。


「いや〜、マジで俺の妹天才だわ。将来有望。おかげで大事なロボットを汚さずに済む」


 『これ、最近メンテナンスしたばっかなんだよ』と言い、俺はラジコンをアイテムボックスに放り込んだ。

と同時に、一体のドローンがガミジン目掛けてレーザーを放つ。


「うぎゃぁぁぁぁああああ!」


 まさかの追い討ちを受け、ガミジンは大きく水面を揺らした。

何とかこの場から逃れようと動くが、時すでに遅し────奴は光の粒子と化す。

それを見届け、俺はドローンと巨大ロボットを仕舞った。


「ったく、随分と呆気なかったな」


 ラミエルやセトから予め情報を貰っていたおかげか、大した反撃も受けずに勝ってしまった。

というのも────ガミジンは『(プレイヤー)に一定ダメージを与えないと、魔法を使わない』という特性があるから。

つまり、それまでずっと肉弾戦ってこと。


 ぶっちゃけ、魔法で遠距離攻撃を繰り出されていたら危なかった。

いくら巨大ロボットとドローンがあるとはいえ、苦戦を強いられていただろう。

ガミジンはゴーレムと違って的が小さいし、高い知能を持っているから。

その上、空も飛べるからな。


 『マジで妹の毒と情報がなきゃ、こんなにあっさり勝てなかった』と、俺は肩の力を抜く。


「まあ、何はともあれ俺達の役目は終わった」


 半ば自分に言い聞かせるようにして呟き、俺は部下へ光魔法を打ち上げるよう指示する。

無事、討伐完了したことを伝えるために。


 さて、他の奴らはどうなったかな?


 空へ打ち上げられた青い光を一瞥し、俺は偵察用のドローンを取り出した。

『これでちょっくら様子を見るか』と思いつつ、映画館並の巨大スクリーンを設置する。

そして、ドローンを飛ばした。


 俺達は基本ガミジンを討伐でき次第、待機を言い渡されているが……念のため、様子見くらいしておこう。

もちろん、魔王戦の方は見ない……というか、見れないけどな。

そっちはトラップだらけみたいだから。


「テメェら、周辺の警戒だけ怠るなよ」


「「「はい!」」」


 ラミエル達の話によれば、四天王と魔王以外敵は居ないらしいが……油断は出来ない。

もし万が一、死人でも出したら大問題だ。

『妹に怒られるし、指揮官を任せてくれた皆に申し訳が立たない』と考える中、偵察用のドローンはセトや『牙』の姿を捉えた。

巨大スクリーンに映った彼らは、険しい表情で四天王のウァサゴと向かい合っている。


 おっ?これはもしや、苦戦中か?


 『助太刀した方がよさげ?』と頭を捻り、俺は偵察用のドローンに取り付けたレーザー光線を準備した。

いつでも加勢出来るよう構えていると、セトは何かを呟く。


「あと……一回?」


 距離的に音声は拾えないため、口の動きから予測しただけだが……恐らく間違いないと思う。

何故なら────後ろに控えていた『牙』や他のギルドメンバーが、表情を変えたから。

もちろん、いい方向に。


 なるほど。多分、セトは敢えてウァサゴの攻撃を受け続けたんだろう。

最も、倒しやすいタイミングを狙うために。


「なら、加勢の必要はなさそうだな」


 『むしろ、邪魔になる』と判断し、俺はレーザー光線に再びロックを掛けた。

静観を決め込む俺の前で、セトは水の矢を受け止める。

と同時に、何かを叫んだ。

その瞬間、『牙』や他のギルドメンバーは一斉にウァサゴへ攻撃を仕掛ける。

当然、ウァサゴは抵抗するものの……肉弾戦を苦手としているのか、全く歯が立たなかった。


「魔法で反撃しようにも、恐らくクールタイム中……セトはこれを狙っていたのか」


 今回、セトの指揮下に入ったメンバーは魔法より腕っぷしの強さが自慢の奴らばかり。

普通に戦っても、距離を詰められなければウァサゴの独壇場となる。

だから一旦防御に徹し、クールタイムへ入るのをひたすら待った。

ラミエル曰く、ウァサゴは後先考えないタイプらしいから。


「まだまだ荒削りの部分はあるが、ガキにしてはよく考えたじゃねぇーか」

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