第294話『四天王《田中 side》』
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────時は少し遡り、妹達と別れた直後のこと。
俺はラジコンで巨大ロボットを操作しつつ、四天王のガミジンとやらと戦っていた。
「お前ら、俺を死ぬ気で守れ!」
「「「はい!」」」
元気よく返事し、俺の周りに固まる『田中研究所』と『プタハのアトリエ』のギルドメンバー。
それぞれ自前のアイテムや習得した魔法で、ガミジンの特攻を防いでいた。
この作戦の指揮は、俺だからな。
狙われるのは、織り込み済みだ。
まあ、倒されるつもりは微塵もねぇーけど。
「つーか────俺を狙ってきた時点で、決着はついてんだわ」
そう言うが早いか、俺は懐からスプレー缶を取り出す。
他の奴らも同じスプレー缶を手に持ち────ガミジン目掛けて、噴射した。妹特性の毒ガスを。
「っ……!?」
本能的に危機を察知したのか、ガミジンは後ろへ飛び退いた。
────が、もう遅い。
少しでも吸ってしまったら、体は見る見るうちに溶けていく。
そのうち、原型を留められなくなるだろう。
「テメェら、念のためもう一回解毒薬を飲んでおけよ〜。効果時間を考えるにまだ大丈夫だと思うが、俺の妹の毒は恐ろしいからな〜」
「「「はい!」」」
間髪容れずに頷いた部下達は、出発前に飲んだ薬をアイテムボックスから取り出した。
かと思えば、直ぐさま一気飲み。
恐らく、目の前のガミジンを見て危機感を抱いたのだろう。
なんせ、奴の体は────早くも液体化しているから。
おかげで、そこは水溜まりになってしまった。
「な、にを……!?私に……毒は……効かない、筈……!」
ドロドロになってもまだ喋る余裕があるのか、ガミジンは疑問を吐き出した。
困惑の滲んだ声色を前に、俺は『そういや、こいつ毒耐性持っているんだっけ?』と考える。
「なあ、お前の毒耐性ってあれだろ?FROに元々ある毒素を受け付けないってやつ。なら、意味ねぇーよ。だって、俺の妹の毒は────完全新種。本来ここにはない毒素だから」
「!!?」
ハッと息を呑むガミジンは、『そんな馬鹿な……!』とでも言うように水面を揺らした。
顔などなくても動揺していることが分かる彼を前に、俺はニヤリと笑う。
「いや〜、マジで俺の妹天才だわ。将来有望。おかげで大事なロボットを汚さずに済む」
『これ、最近メンテナンスしたばっかなんだよ』と言い、俺はラジコンをアイテムボックスに放り込んだ。
と同時に、一体のドローンがガミジン目掛けてレーザーを放つ。
「うぎゃぁぁぁぁああああ!」
まさかの追い討ちを受け、ガミジンは大きく水面を揺らした。
何とかこの場から逃れようと動くが、時すでに遅し────奴は光の粒子と化す。
それを見届け、俺はドローンと巨大ロボットを仕舞った。
「ったく、随分と呆気なかったな」
ラミエルやセトから予め情報を貰っていたおかげか、大した反撃も受けずに勝ってしまった。
というのも────ガミジンは『敵に一定ダメージを与えないと、魔法を使わない』という特性があるから。
つまり、それまでずっと肉弾戦ってこと。
ぶっちゃけ、魔法で遠距離攻撃を繰り出されていたら危なかった。
いくら巨大ロボットとドローンがあるとはいえ、苦戦を強いられていただろう。
ガミジンはゴーレムと違って的が小さいし、高い知能を持っているから。
その上、空も飛べるからな。
『マジで妹の毒と情報がなきゃ、こんなにあっさり勝てなかった』と、俺は肩の力を抜く。
「まあ、何はともあれ俺達の役目は終わった」
半ば自分に言い聞かせるようにして呟き、俺は部下へ光魔法を打ち上げるよう指示する。
無事、討伐完了したことを伝えるために。
さて、他の奴らはどうなったかな?
空へ打ち上げられた青い光を一瞥し、俺は偵察用のドローンを取り出した。
『これでちょっくら様子を見るか』と思いつつ、映画館並の巨大スクリーンを設置する。
そして、ドローンを飛ばした。
俺達は基本ガミジンを討伐でき次第、待機を言い渡されているが……念のため、様子見くらいしておこう。
もちろん、魔王戦の方は見ない……というか、見れないけどな。
そっちはトラップだらけみたいだから。
「テメェら、周辺の警戒だけ怠るなよ」
「「「はい!」」」
ラミエル達の話によれば、四天王と魔王以外敵は居ないらしいが……油断は出来ない。
もし万が一、死人でも出したら大問題だ。
『妹に怒られるし、指揮官を任せてくれた皆に申し訳が立たない』と考える中、偵察用のドローンはセトや『牙』の姿を捉えた。
巨大スクリーンに映った彼らは、険しい表情で四天王のウァサゴと向かい合っている。
おっ?これはもしや、苦戦中か?
『助太刀した方がよさげ?』と頭を捻り、俺は偵察用のドローンに取り付けたレーザー光線を準備した。
いつでも加勢出来るよう構えていると、セトは何かを呟く。
「あと……一回?」
距離的に音声は拾えないため、口の動きから予測しただけだが……恐らく間違いないと思う。
何故なら────後ろに控えていた『牙』や他のギルドメンバーが、表情を変えたから。
もちろん、いい方向に。
なるほど。多分、セトは敢えてウァサゴの攻撃を受け続けたんだろう。
最も、倒しやすいタイミングを狙うために。
「なら、加勢の必要はなさそうだな」
『むしろ、邪魔になる』と判断し、俺はレーザー光線に再びロックを掛けた。
静観を決め込む俺の前で、セトは水の矢を受け止める。
と同時に、何かを叫んだ。
その瞬間、『牙』や他のギルドメンバーは一斉にウァサゴへ攻撃を仕掛ける。
当然、ウァサゴは抵抗するものの……肉弾戦を苦手としているのか、全く歯が立たなかった。
「魔法で反撃しようにも、恐らくクールタイム中……セトはこれを狙っていたのか」
今回、セトの指揮下に入ったメンバーは魔法より腕っぷしの強さが自慢の奴らばかり。
普通に戦っても、距離を詰められなければウァサゴの独壇場となる。
だから一旦防御に徹し、クールタイムへ入るのをひたすら待った。
ラミエル曰く、ウァサゴは後先考えないタイプらしいから。
「まだまだ荒削りの部分はあるが、ガキにしてはよく考えたじゃねぇーか」




