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第25話『同盟』

 『俺っちからは以上でーす』と言って話を切り上げる徳正さんを前に、私は少し考え込む。


 今後はゲーム攻略組の動きによって、色々左右されてくるだろうな。

もし順調にクエストをクリアしていれば、他のプレイヤーも活発に外へ出るようになるし、逆に失敗が続けば、皆怯えて引きこもるようになる。

ある意味、FROの命運を握っていると言ってもいい。


「では、次に俺達の情報を報告していく。今、話題に出た『紅蓮の夜叉』主催の同盟会議だが────俺達『虐殺の紅月』も呼ばれている」


「なっ……!?」


「ふぇっ!?」


「え、え〜?嘘でしょ〜?」


『!?』


 嫌われ者のPK集団であることを全員理解しているため、これでもかというほど動揺を示した。

『何かの手違いじゃないのか?』と困惑する私達の前で、リーダーは一つ息を吐く。


「俺達は確かに信用ならないPK集団だが、実力は本物だ。この場に居るメンバーのほとんどがランカーだし、レベルマックスの奴も居る。それを踏まえて、ヘスティア自ら俺にメッセージを飛ばして来た。ゲーム攻略の難易度の高さを考えて、少しでも戦力を集めるつもりのようだ。その戦力がたとえ、PK集団のメンバーであろうとも」


「炎帝……ヘスティアさん自らメッセージを……」


「それだけ事態が深刻ってことで、でででででで、ですかね!」


「まあ、要は生存率の問題だからね〜。俺っち達ランカー集団を仲間に引き込んで損はないって、判断したんじゃな~い?」


『まあ、それでも雑魚は死ぬだけだがな』


 全てを守り切るのは不可能だと考えるラルカさんに、私は同意する。

だって、この同盟の最大の目的は恐らく────全ダンジョン攻略と魔王討伐クエストのクリアだから。

難易度の低いクエストをちまちまやるだけなら、同盟なんて必要ない。

『だからこそ、危険なんだ』と警戒心を募らせる中、リーダーは険しい顔つきでこちらを見据えた。


「死亡のリスクを考えた上で、答えてほしい。お前達はこの同盟に加わることに賛成か?反対か?」


 唐突に突きつけられた二択に、私はすぐ返事を出来なかった。

魔王討伐クエストで、何度も神殿送りになったことを考えると……尻込みしてしまって。

ゲーム攻略の難易度の高さを思い浮かべ、悶々としてしまう。


 死ぬリスクを背負ってまで、同盟に加わる必要はあるんだろうか?

ゲーム攻略なんて危険なことはせず、ここで静かに暮らせば良いんじゃない?

私達が動かなくたって、きっと誰かがどうにかしてくれる。

でも────その『誰か』って、誰?

そんな曖昧な可能性に、私は縋り付くの?

私は皆を癒せるのに?役に立てるのに?命を救えるのに?

それなのに、何もしないの?


 『出来ない』のと『しない』のとでは、訳が違う。

強者だからといって力を貸す必要はないが、それでも……ここで何もしないのは────私らしくない!


「私は同盟に参加したいです……!回復師(ヒーラー)として、ゲーム攻略の役に立ちたい!」


 珍しく先陣を切った私に、リーダーは目を見開いた。

普段は皆の反応を窺ってから意見しているため、驚いたのだろう。

ハッと息を呑むリーダーの前で、徳正さん達も口を開く。


「ま、何もしないのはつまんないもんね〜」


『暇潰しには、丁度良いかもしれないな』


「わ、私は皆さんの意思に従います!」


 今のところ、賛成者三人。反対者0人。どっちでもいいが一人か。

残るはヴィエラさんとリーダーだけど……二人はどう思っているんだろう?この同盟を。


「私も同盟は賛成よ。ただ助けられるだけなんて、格好悪いじゃない」


 場を和ませるためか、ヴィエラはおどける様にそう言った。


 ヴィエラさんも賛成派か。

彼女はどちらかと言うと、慎重な人間だから反対するかな?って思ったんだけど、その読みは外れたみたい。


 『嬉しい誤算だ』と考えつつ、私はリーダーへ目を向けた。

他のメンバーも、彼の意見を待つように押し黙る。

────と、ここでリーダーが両腕を組んだ。


「────俺も賛成派だ」


 この一言が、同盟会議出席への決定打となった。

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