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第21話『外食』

 それから、私達はアラクネさんのリクエストで洋食店の『美食の森』を訪れていた。

ここは生産系ギルドの営むお店で、結構人気が高い。リユニオンタウンの他にも、幾つか支店があった。


「ねぇねぇ、どれにする〜?洋食なんて久しぶりだから、テンション上がるね〜」


「そ、そそそそそ、そうですね!」


『最近はずっと木の実や焼き魚ばかりだったから、まともな食事自体久しぶりだ』


「緊急招集ですから、他の街に寄る余裕なんてありませんもんね」


 『まあ、そもそもここでは食事する必要もないのだが』と思いつつ、メニュー表を覗き込む。

そこには、現実世界(リアル)のファミレスと同じようなメニューがズラリと並んでいた。

『おお、お子様ランチまである』と半ば感心していると、徳正さんが片手を挙げる。


「はいはーい!店員さん、注文いーい?俺っちはハンバーグのAセット〜」


「わ、わわわわわわ、私はベーグルサンドとシチューのセットでお願いします!」


「じゃあ、私はオムライスとコンスープのセットで」


『僕はお子様ランチのBセット。玩具はクマのストラップでお願いする』


 ……えっ!?ラルカさん、お子様ランチ食べるの!?

ていうか、おまけの玩具まで細かく指定する人、子供以外で初めて見たんだけど……!?


 動揺のあまり固まる中、注文を取りに来た店員さんは何とか表情を取り繕う。


「え、えーと……ご注文を繰り返させて頂きます。ハンバーグのAセットがお一つ、ベーグルサンドとシチューのセットがお一つ、オムライスとコンスープのセットがお一つ、お子様ランチBセットがお一つ。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」


『クマのストラップ、忘れないでくれよ』


「は、はい……きちんと持って参ります」


 クマのストラップに異常な執着を見せるラルカさんに、店員のお姉さんは若干引き気味に答えた。

かと思えば、直ぐお店の奥に引っ込んでしまう。


 心中お察しします……。


 店員さんの労をねぎらい、私は心の中で合掌した。

『ウチのメンバーが、すみません』と謝る中、注文した料理とクマのストラップは運び込まれる。

出来たてホカホカの料理たちを前に、私達は頬を緩めた。


「ではでは〜、いっただきまーす!」


「い、いただきます!!」


「いただきます」


『いただきます』


 私達は食事の挨拶を終えるや否や、久々の洋食にかぶりついた。


 んー!卵ふわふわ〜!ケチャップライスの味付けも絶妙で、全然しつこくない〜!美味しい!!


 『これなら、いくらでも食べられる〜!』と思いながら、私はオムライスを食べ進める。

────と、ここでグチャという音が耳を掠めた。


「ちょ、ラルカ〜。食べる時くらい、着ぐるみ脱いだら〜?」


『この着ぐるみが、僕の本体だ』


「ちょっと意味分かんないかな〜?てか、それちゃんと食べられてるの〜?」


『ああ。きちんと食べられている。お子様ハンバーグの味がちゃんとするからな』


「そ、そう〜?なら、いいんだけどさ〜」


 あのおふざけ大好きKYマンの徳正さんを、引かせるなんて……やっぱり、この人ただ者じゃない!


 着ぐるみの口部分にソースたっぷりのハンバーグを押し込むラルカさんに、私は少しばかり警戒心を募らせる。

『徳正さん以上にキャラの濃い人なんて、居たんだ』と思案する中、ラルカさんは顔を上げた。


『うまい』


「そ、そそそそそそそ、それは良かったです!」


『また皆で来よう』


「店、出禁になってなければね〜」


『お子様ランチの玩具をコンプリートしたい』


「か、可愛いですね〜!このストラップ!」


 ラルカさんの手にあるクマのストラップを見つめ、私はパンッと手を合わせる。

『凄く素敵』ということを強調するために。

そのおかげか、ラルカさんの機嫌は少し良くなった。


 な、何なんだ?この人。

クマが好きなのか?いや、絶対そうだよね!?

ここまでクマだらけだと、嫌でも気づくよ!


 『これで好きじゃなかったら逆に驚く』と考える私の前で、ラルカさんは汚れてしまった口元を手で拭う。

その仕草は妙にスマートだが、着ぐるみのせいで台無しだった。


『ご馳走様』


 そう言って……いや、書いて?ラルカさんはパーフェクトクリーンを取り出した。

と同時に、ソレを発動させる。


 パーフェクトクリーンとは、使用者の周りや使用者自身を綺麗にするアイテムのこと。

見た目はただの小さな白い紙で、持ち運びにも便利。

そのため、旅好きの間では重宝されている。


 パーフェクトクリーンを持ってるなら、最初から使えば良かったのに……。


 どう頑張っても言動が読めないラルカさんに苦笑を漏らし、私も残りのオムライスも平らげた。

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