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第195話『バハムートの討伐方法』

 くっ……!!避けようにも、バハムートの翼が巻き起こす風のせいで身動きを取れない……!!

少しでも気を抜いたら、吹き飛ばされてしまうから!

だからと言って、アヤさんのスキルをポンポン使う訳にはいかないし……!


「ヴィエラさん!バハムートのブレスを氷結魔法で相殺することは、可能ですか!?」


「可能が不可能かで言えば可能だけど、水蒸気爆発を引き起こす可能性があるわよ!」


 水蒸気爆発……。

ブレスを相殺することが出来ても、そんな爆発が起きては意味がない。ならば────


「────同じ火炎魔法でバハムートのブレスを押し返すことは、可能ですか!?」


「ええ、それなら可能よ!!」


「では、直ぐに火炎魔法を展開してください!」


 そう指示すると、ヴィエラさんは直ぐさま杖を振り、魔法の発動準備に入った。

詠唱に入る彼女の横で、私はメンバー一人一人を見回す。


「アヤさんは万が一のために、スキルをいつでも発動出来る状態にしておいてください。アスタルテさんはアヤさんのサポートをお願いします。ファルコさんとシムナさんはバハムートのブレスが途切れたら、すぐ飛び出してください。こちらも攻撃に出ます」


「「「「了解」」」」


 全員が自分の役割を確認したところで、ヴィエラさんは火炎魔法を発動する。

ブワッと吹き出した紅蓮の炎を巧みに操り、バハムートのブレスを押し返した。

が、思うようにいかない。若干こちらの方が優勢ではあるものの、威力はほぼ互角。


「ヴィエラさん、押し切れますか?」


 なかなか終わらないブレスとの押し合いに痺れを切らすと、茶髪の美女はフッと不敵な笑みを浮かべた。


「ラミエルちゃん、私を誰だと思っているの?私は職業ランキング一位の魔法使い────アザミの魔女よ!この程度のことで、音を上げる訳ないでしょう!」


 そう言い終えるや否や、ヴィエラさんは円を描くように杖を振るい、魔法陣をもう一つ展開した。

赤い光を放つソレを前に、私は目を見開く。


 あれは、まさか……!!!


「────地獄の門が開けし時、煉獄の炎によって全ての魂は浄化されるだろう!《地獄の炎(デス・フレイム)》!」


 最上級魔法の次に強いと言われる魔法を放ち、ヴィエラさんは一気に押し切った。

だけでは終わらず、バハムートの鱗をも溶かす。


『ほう?熱帯性を持つ俺様の鱗に、ここまで衝撃を与えるとは……面白い』


 スッと目を細めるバハムートは、『これでも、一応熱帯性を持っているんだがな』と零した。

────と、ここで男性陣が左右から飛び出す。

バハムートの翼から発せられる向かい風など諸共せず、二人は大地を駆け回った。


「ラミエルちゃん、あの子達大丈夫なの?少し溶けたとはいえ、バハムートの鱗に剣や斧で挑むのは無謀だと思うけど」


 心配そうに二人の背中を見つめるヴィエラさんに、私は小さく肩を竦める。


「そうですね。きっと、さっきみたいに刃先を砕かれて終わりでしょう」


「なら、何であの二人をバハムートの元に向かわせたの?」


「時間を稼ぐためですよ」


 そう言って、私はアスタルテさんに────アラクネさんお手製の神経毒を渡した。

すると、彼女はアヤさんと協力しながら毒矢の生成に取り掛かる。


「ヴィエラさんも知っての通り、バハムートは他の魔物(モンスター)と比べ物にならないほど賢いです。そんな奴の前で、堂々と作戦を練るのは気が引ける……だから、無謀だと分かっていてあの二人を前衛に出したんです」


「なるほどね……さすが、ラミエルちゃんだわ。私じゃ、そこまで気が回らなかった」


 感心したように目を剥き、ヴィエラさんは『うんうん』と何度も頷いた。


「ちなみに私の役割は何かしら?あの二人のサポートに回さなかったということは、何かあるんでしょう?」


「話が早いですね。ヴィエラさんの役割は────」


 チラッとバハムートの様子を窺ってから、私はヴィエラさんの耳元に唇を寄せる。


「────フロア全体の温度を氷点下まで下げることです。(あられ)や吹雪を巻き起こして頂けると、助かります」


「!!」


 ハッとしたように息を呑み、ヴィエラさんはまじまじとこちらを見つめる。

予想外だと言わんばかりの表情だ。


 バハムートに物理攻撃は基本的に通じない。

地獄の炎(デス・フレイム)はその威力ゆえ、多少ダメージを与えることが出来たけど……バハムートが同じ手に引っ掛かるとは思えなかった。

だから、まずはフィールドを整えることにしたのだ。


「バハムートは十中八九、炎タイプの魔物(モンスター)です。寒い場所では、本領を発揮出来ないでしょう」


「それは理解出来るけど、そこからどうするの?戦いづらい環境を作れたとしても、勝てるとは限らないでしょう?」


「ええ、それくらい分かっています。だから、こうやって準備をしているんですよ」


 そう言って、私は毒矢を指さした。


「これは神経毒をたっぷり塗った弓矢です。バハムートが環境の変化に動揺している隙に、コレを打ち込みます」


「う、打ち込みますって……こんな普通の矢じゃ、バハムートの鱗は貫通出来ないわよ?」


 困惑気味に(かぶり)を振るヴィエラさんに、私はスッと目を細めた。


「よく考えてみてください。バハムートの体全体が、鱗に覆われている訳じゃないでしょう?」


「鱗のない場所……?って、まさか!?」


「はい、その『まさか』です。私達が狙うのは────バハムートの目や口です」


 ピンッと人差し指を立てて断言すると、ヴィエラさんは呆れにも似た苦笑を漏らした。


「はぁ……ラミエルちゃんも、だんだん『虐殺の紅月』に毒されて来たわね」


「ははっ。そうかもしれませんね」


「笑い事じゃないわよ、もう……まあ、その話は後回しにするとして……トドメはどうするつもり?」


「トドメですか?そりゃあ、もちろん────」


 そこでわざと言葉を切ると、私はヴィエラさんの肩に手を置いた。


「────ヴィエラさんの氷結魔法でトドメを刺す、に決まっているじゃないですか」


 『氷の最上位魔法(コーキュートス)、お願いしますね』と遠回しに言えば、茶髪の美女は『やっぱり、そうなるわよね』と呆れ気味に頷いた。

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