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第191話『第四十九階層』

 そして、私達は一気に第四十二階層から第四十八階層まで駆け抜けると、第四十九階層に降り立った。


 第四十九階層の魔物(モンスター)は大型犬の体と山猫に似た顔を持つ、グーロという魔物(モンスター)だ。

大食らいで気性が荒い反面、仲間との連携は完璧。

主な攻撃手段は、噛みつきや突進などの物理攻撃である。

─────というのが、公式に載っていた情報だった。


「あの犬……いや、猫かなー?まあ、とにかく涎垂らしていてきもーい!僕、ああいう系の魔物(モンスター)苦手なんだよねー。もっと清潔感のある魔物(モンスター)がいいー」


「気持ちは分からなくもないですが、魔物(モンスター)に清潔感を求めるのは少々無理があるかと……」


 苦笑交じりにそう答えると、シムナさんは『えー!そんなぁ!』と項垂れた。

手に持つ銀の斧を撫でながら、深い溜め息を零す。


「血で汚れるのは大歓迎だけど、涎で汚れるのは嫌だなー。僕、これでも綺麗好きだからさー」


「あっ、血はいいんですね……」


「うん!だって、血は綺麗だもーん!」


 血は綺麗……なのか?

だって、血も涎も大きな括りで言えば、体液でしょ?

別に綺麗ではないと思うんだけど……PK大好きマンの気持ちを理解するのは、やっぱり難しいな。


「────あっ!ラミエルー!涎垂らし野郎がこっちに来たよー!」


 そう言って、シムナさんはある方向を指さす。

その先には────確かにこちらへ向かって来るグーロの姿があった。それも、三匹。


「公式の記述通り、グーロは集団の狩りを心掛けているようですね」


「だねー。まあ、束になったところで僕には敵わないけどー。雑魚がいくら集まったところで、強くなれる訳じゃないからー」


 そう言ってアイテムボックスから狙撃銃を取り出し、シムナさんはおもむろに構える。

どうやら、斧をグーロの唾液で汚さないために大嫌いな銃撃戦を選んだらしい。


「いちいち撃つのも面倒だし、一気に片付けちゃおっかなー?ねぇーねぇー、ラミエルー!スキル使ってもいーい?」


「スキル……ですか?シムナさんが?」


「うん!だって、スキルを使って一気に片付けた方が楽でしょー?」


 シムナさんは数時間前の爆発事件を覚えていないのか、『楽だから』という理由でスキルの使用許可を求めてきた。

子供のような無邪気な笑みを見せる彼の前で、私は小さく(かぶり)を振る。


「シムナさん、第二十階層のサンダーバード戦でスキルを使い、大爆発を引き起こしたこと覚えてないんですか?」


「もちろん、覚えているよー!だから、こうしてラミエルに許可を取っているんじゃーん!」


「じゃあ、私がダメだと言えばスキルは使わないんですか?」


「うん!その時はスキルじゃなくて、ロケットランチャーを使うー!」


「……」


 彼の口から飛び出した物騒な単語を前に、私は思わず頭を抱え込んだ。


 こんな人が密集している空間で、ロケットランチャーなんて使ったら誰かしら怪我するでしょ!!


 と叫びたくなるのを、必死に抑えて……。


「……つかぬ事をお聞きしますが、何故シムナさんがロケットランチャーを持っているんですか?」


「んー?えーっとねー、アラクネに頼んで作って貰ったんだー。まだ試作品段階だから、安全は保証出来ないって言っていたけどー」


「……」


 更に不安を加速させる単語が飛び交い、私はもう何も言えなかった。

言葉を失う私を見て、シムナさんは不思議そうにコテンと首を傾げる。


 とりあえず、スキルもロケットランチャーも使わせちゃダメだ……。

万が一のことがあったら、私はリーダーに顔向け出来ない……。


「シムナさん、スキルとロケットランチャーの使用は許可出来ません。普通に狙撃してください、普通に」


「えー!どっちもダメなのー!?」


「はい。だって、どちらを使用しても周りに被害が出るでしょう?」


「うーん……確かにそれは否定出来ないけどー……でも!一気に片付けた方が、楽ちんだよー!?」


 お強請り上手なシムナさんはお祈りポーズを取り、うるうるした目でこちらを見つめてくる。

が、今回ばかりは譲れないのでこちらも心を鬼にした。


「どんなに楽でも安全性が保証出来ないものは、許可出来ません」


「むぅー!ラミエルとミラは僕が守るのにー!二人の安全は僕が保証するよー!?」


「私とミラさんの安全だけ、保証されても困ります。他のプレイヤーの安全も保証してくれませんと」


 シムナさんの言い分を論外だと切り捨てれば、彼はプクッと頬を膨らませて拗ねてしまった。

どうしても、スキルやロケットランチャーを使いたかったらしい。


 はぁ……反応は子供そのものなのに、考えや行動が物騒なんだよなぁ……。

見た目と中身のギャップが凄すぎる。


「ちぇーーー!分かったよー。普通に狙撃するー」


「ご理解頂き、ありがとうございます」


 ペコリと小さく頭を下げる私に、シムナさんはムスッとした表情のまま一つ頷いた。

かと思えば、改めて銃を構える。

その先には、直ぐそこまで差し迫ったグーロ達の姿があった。


「僕、今とっても機嫌悪いから、さっさと死んでよねー!涎垂らし野郎!」


 そう言うが早いか、シムナさんはダンダンダン!と続けざまに三発銃弾を撃った。

すると、グーロ達の脳天にそれぞれ風穴が空く。

と同時に、体勢を崩して後ろに倒れた。

即座に光の粒子と化すグーロ達を前に、シムナさんは思い切り顔を顰める。


「おぇー!最後まで涎を垂らしながら、死んでいるんだけどー!きもーい!」


 『銃に変えておいて良かったー!』と叫びながら、シムナさんは別のグーロを撃っていく。

そして、あっという間に壊滅させた。

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