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第173話『第十一階層』

 その後、ボスフロアで小休憩を挟んだ私達攻略メンバーは第十一階層へ降りていた。

ちなみに騒動を引き起こしたミラさんはヴィエラさんの捕縛魔法を掛けられた状態で、このまま一緒に行動することになっている。


 さすがに置いていく訳には、いかなかったからね。

こんなところで死なれても、目覚め悪いし。


「もー!何これー!影が槍みたいに飛んでくるんだけどー!」


 そう言って、ダムダムと地面を蹴りつけるシムナさんは飛んできた黒い物体を斧で真っ二つにする。

だが、しかし……真っ二つにされた影は直ぐにまた一つになり、後方へと下がっていった。


 影魔法を使う魔物(モンスター)か……名前は確か────ペリュトン。


 ペリュトンとはオスの鹿の体に鳥のような羽根を生やした魔物(モンスター)で、自身の影を飛ばして攻撃してくる。

接近戦を苦手する魔物(モンスター)なので、懐に潜り込めれば一気に形成逆転出来るが……そこまでが大変なのだ。

でも、ペリュトンの使う影魔法は技術もレパートリーも徳正さんに遠く及ばない。

そのせいか、少しショボく見えた。


「シムナさん、近接武器ではなく狙撃銃に持ち替えてください。シムナさんの射撃能力なら、ペリュトンを射殺出来る筈です」


「狙撃かー。本当は近接武器で戦いたかったんだけどなー。まあ、でもラミエルがそう言うなら狙撃銃を持つよー」


 シムナさんは何度切り裂いてもめげずに飛んでくる影を再度真っ二つにし、アイテムボックスから狙撃銃を取り出した。

かと思えば、一瞬の躊躇いもなく引き金を引く。

バンッ!と鳴り響く銃声を前に、私は苦笑を漏らした。


 さすが、シムナさん……たった一発で、ペリュトンを二体も倒しちゃった。


 脳と心臓を貫いた銃弾に、私は『威力ヤバいな……』と感心する。

────と、ここで二体のペリュトンは光の粒子と化した。


「そうか……!ペリュトンには、近接武器じゃなくて遠距離武器を使えばいいのか!」


「サポート班、今回の戦いは頼むぞー!」


「任せてください!私のファイアボールで瞬殺しちゃいますから!」


「無駄口を叩く暇があったら、杖を構えなさい。時は金なり、よ」


 守りに徹する戦闘班と防御班の前で、サポート班はペリュトンに狙いを定める。


「《ファイアボール》」


「《ウォーターアロー》」


「《火炎の矢》」


「《血色に染まる銃の弾》」


 サポート班の魔法使い、弓使い(アーチャー)狙撃手(スナイパー)はそれぞれ魔法やスキルを発動させた。

彼らの手を離れた魔法や弓は物凄い速さでペリュトンに接近し、奴らの喉元や心臓を貫く。

と言っても、攻撃に成功したのは一部のプレイヤーだけだけど。

大半の攻撃は影魔法で防がれている。


「このまま同じ攻撃を続けていけば、ペリュトンを全滅させることが出来るでしょうが、少し時間が掛かってしまいますね……」


「皆、トロいねー。ていうか、あの程度の影魔法に攻撃を防がれるとか、ただの雑魚じゃーん。僕一人で戦った方が絶対早く終わると思うんだけどー」


 ……それはちょっと否定出来ないな。

シムナさんはたった一発で、ペリュトンを二体も仕留めた訳だし。


「さすがにサポート班の総攻撃を中止することは出来ませんが、ペリュトンの討伐をお願い出来ますか?出来れば、接近戦なしで……」


 サポート班の攻撃が降り注ぐ中、勝手に接近戦なんかしたら怒られちゃうからね。

チーム戦である以上、必要最低限の配慮はしなきゃ。


「接近戦なしかー。狙撃だけじゃ、つまんないよー」


「そこは我慢して頂けると、非常に助かります」


「えー!僕、我慢苦手なのにー!」


 プクッと頬を膨らませ、不満を露わにするシムナさんは『嫌だ嫌だ』と駄々を捏ねる。

そんな彼を前に、私はそっと眉尻を下げた。


「シムナさん、いい子だから言うことを聞いてください。ねっ?」


 子供を諭すような口調で話し掛け、私はシムナさんの頭を撫でる。

すると、シムナさんは僅かに目を見開き────ポッと頬を赤く染めた。


「うんっ!僕、良い子だからラミエルのお願い聞いてあげる!だから、また『よしよし』してね!」


 どこか単純な彼は『えへへっ!』と照れ臭そうに笑い、下ろした銃を再び構える。

そして……ペリュトンを目で追うことなく、引き金を引いた。

かと思えば、今度は一気に四体倒す。


「よく見ないで、撃てますね……」


「んー?気配探知で大体場所が分かれば、案外当たるよー?」


「……普通は当たりませんよ……」


 シムナさんの高すぎる狙撃技術に呆れさえ覚える中、彼は手を休めることなくどんどん撃っていく。

この戦いはもはやシムナさんの独壇場となっていた。


 自動追尾式機能でも付いてるんですか?ってくらい、当たるなぁ……。


 『サポート班の出番はなさそう』と苦笑していると、シムナさんは最後の一体であるペリュトンの眉間を貫く。

あっという間に光の粒子と化したペリュトンを前に、彼は大きく伸びをした。


「はい、おしまーい!やっぱり、狙撃は呆気なさすぎてつまんないねー」

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