第162話『酔っ払い』
◆◇◆◇
────翌日。
ファルコさんの指示で強化合宿を執り行うことになり、シムナさんやヴィエラさんを引き連れて“黒森”に再び集まった。
そこで他の班のメンバーを指導したり、実際にダンジョンに潜ったりして技術力や連携力を底上げする。
途中何度かトラブルに見舞われたものの、何とか無事訓練を終えた。
そして、久々に旅館へ帰還すると……アラクネさんと田中さんを除くメンバーが、居間で顔を揃えている。
「只今帰りました」
「たっだいまー!」
「ただいま」
と挨拶すれば、直ぐさま『おかえりー!』と返事が返ってきた。
居間の中は早くも宴会場となっており、酒の匂いで溢れ返っている。
えっ!?もう飲んでいるの!?まだ十九時過ぎなのに!
徳正さんなんて、ベロンベロンじゃん!!
「や~っと、ラーちゃんが帰ってきた~!俺っち、ず~っと待ってんだよ~?」
「もう大分出来上がってますね……いつから、飲んでたんですか?」
「ん~?えっとね~……朝の十時頃ぐらい~」
「あ、朝の十時頃……」
そりゃあ、ベロンベロンになるよね。
『九時間もぶっ通しで飲んでいたのか』と呆れ返り、私は額を手を当てる。
「とりあえず、お水を飲みましょうか」
「ん~?お水~?」
「はい、お水です」
「ラーちゃんが口移しして飲ませてくれるなら、いいよ~?」
酒に酔ったことでセクハラ度と変態度がグンッと上がった徳正さんは、フニフニと自身の唇を人差し指で押す。
潤んだ瞳で私を見上げ、『えへへ~』と照れ臭そうに笑った。
この忍者、色んな意味でやばい……もう放っておこうかな。
酔っぱらいを相手するのは、面倒臭いし。
などと考えていると、青髪の美少年が割って入ってくる。
「────ねぇー!僕のラミエルに近づかないでくれるー?この変態オヤジー!」
「変態~?男はみんな変態でしょ~?」
「僕を徳正と一緒にしないでくれるー?ていうか、お酒くさーい!ラミエルにセクハラする前に、酔い覚ましでもしたらー?」
おぉ……シムナさんが珍しく、正論を言っている。
いつもワガママで、自分勝手な意見しか言わないのに……明日は血の雨でも降るのかな?
「別にセクハラなんてしてないよ~。俺っちとラーちゃんは愛し合ってるから、セクハラも何もないしね~」
「徳正の想像力って逞しいねー」
「それ、どういう意味~?」
「そのままの意味だよー。ていうか、僕酔っぱらいの相手は無理だから────おやすみ」
シムナさんは言いたい事だけ言うと、徳正さんの首裏に手刀を落とす。
すると、徳正さんは糸の切れたマリオネットのように机に突っ伏した。
間もなくして、スースーという規則正しい寝息が聞こえてくる。




