第143話『会議場所に到着』
────そして、同盟会議当日。
私はリーダーに抱っこされた状態で、会議場所である“黒曜の洞窟”を訪れていた。
薄暗い辺りを見回しながらリーダーの腕から降り、歩を進める。
『なんだか、不気味だなぁ……』と思案する中、明かりの灯った場所を発見した。
と同時に、リーダーはそこへ足を踏み入れる。
「おっ?来たか、無名」
「ああ」
「お、お邪魔してます!」
「おお!ラミエルじゃないか!来てくれたのか!体の具合はどうだ?」
「あっ!もう平気です!ご心配をおかけして、すみません!」
ヘスティアさんに向かってペコリと頭を下げ、私は周囲を見回す。
テーブルと椅子以外何もないこの空間には、有名プレイヤー達が顔を揃えていた。
全員表情は硬いが、こちらを敵対視するような様子はない。
『イベントで活躍したのが、良かったのか?』と首を傾げつつ、私はリーダーに連れられて近くの椅子に腰を下ろした。
そして、何の気なしに隣へ視線を向けると、見覚えのある人物が目に入る。
「おやおやぁ?ラミエルさんじゃないですかぁ!奇遇ですね♪」
そう言って、ニコニコと機嫌良く笑うのは────『プタハのアトリエ』のギルドマスターである、アスタルテさんだった。
ベリドットの瞳をうんと細める彼女の前で、私は少し頬を緩める。
「アスタルテさん、お久しぶりです。この前はどうも」
「お久しぶりなのです♪遅ばせながら、巨大ゴーレム討伐イベントお疲れ様なのですよー!」
「ふふっ。アスタルテさんもお疲れ様です」
「ありがとうなのです♪」
無邪気な幼女の皮を被る小悪魔は、『んふふー!』と口元に手を当てて笑った。
アスタルテさんも同盟メンバーだったのか。それは驚きだな。
私はてっきり、メンバー外かと……ん?待てよ?
じゃあ、何でアスタルテさんはあのときギルド本部に居たんだろう……?
私の記憶が正しければ、同盟メンバーは全員ここに居た筈……少なくとも、各ギルド・パーティーの長は。
「つかぬ事をお伺いしますが、アスタルテさんは途中参加の同盟メンバーですか?」
「ふふふっ。バレちゃいましたか?実はそうなのですよ。ゲーム攻略同盟の招待は以前から頂いていたのですが、どうも乗り気になれなくて……でも、ラミエルさんもその同盟に加わっていると聞いて、参加を決意したのですよ♪」
「参加理由は私なんですね……」
「はいなのです♪」
無邪気にあざとく決めポーズを決めるアスタルテさんは、やはり己の可愛さを熟知した確信犯だった。
まあ、なんにせよ生産系ギルドの大手を引き込めたのは大きい。
ゲーム攻略を進めて行く上で、アイテムを開発・製造出来る組織は幾つあっても困らないから。むしろ、ウェルカムだ。
少しずつゲーム攻略に必要なピースが揃い始め、私は高揚感を覚える。
あとは────今回の会議でどのような方針を立てられるかが問題だ、と考えながら。
「まだ来ていない者も居るが、約束の時間になったため先に会議を始めよう。では、これより────ゲーム攻略同盟による、全体会議を始める!」




