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第142話『同盟会議の参加理由』

「────今回の同盟会議にはラミエルも参加するよう、指示された」


 えっ……えぇ!?何で私も同盟会議に!?

会議に参加するメンバーを増やして、意見交流の幅を広げる方針かな!?

それとも、『箱庭』のメールで名前を挙げられていたから!?

でも、たったそれだけの理由で私を会議に呼ぶだろうかな……!?


「はぁ〜?何でラーちゃんも〜?」


「ラミエルは今、疲れてるんだからボスだけで行ってきてよー!」


『ただ単純に参加メンバーを増やしたいだけなら、僕がラミエルの代わりに行こう』


 猛抗議する三馬鹿に対し、リーダーはポーカーフェイスを保ったままこう答える。


「魔王討伐クエストについて、色々聞きたい事があるらしい。ラミエルは『サムヒーロー』の元メンバーな上、このイベントを通して冷静な思考力と判断力を発揮出来たからな。一応、『サムヒーロー』の現メンバーも会議に呼んでいるみたいだが……ラミエルの意見も聞きたいとのことだ」


 ……えっ?今、なんて……?

『サムヒーロー』の現メンバーも会議に呼んでいるって、言った……?私の聞き間違いじゃないよね……?


 サァーッと血の気が引いていく感覚と共に、私は唇を噛み締める。


 徳正さん達のおかげで、過去はある程度乗り越えられた。

もう『サムヒーロー』の話を持ち出されても、動揺しないくらいには……。

でも、それはあくまで過去を受け入れることが出来ただけで、過去の人物と関わりを持てるほど回復した訳じゃない。

もう『サムヒーロー』を辞めたセトはさておき、現メンバーであるカインやマヤと再会するなんて…………私にはまだハードルが高かった。


「ちょ、主君!それはさすがに(こく)だって!ラーちゃんの気持ちも考えてあげてよ!」


「不参加じゃダメなのー?もしくは『サムヒーロー』の奴らと会わないよう、日程をズラすとかさー」


『お頭とラミエルが通話を繋いで、音声だけで会議に参加するなんてどうだ?』


「俺もラミエルに酷なことを言っている自覚はある。だが、いつまでも隠れてやり過ごす訳にはいかないだろ。もちろん、不参加も日程調整も通話参加も却下だ」


「な、なっ!?そ、そそそそそそ、それはあまりにも酷過ぎると思います!!す、少しくらいラミエルさんのことを気遣ってあげたって良いじゃないですか!」


「キング、今回は私もこの子達の意見に賛成よ。あまりにも事が性急すぎる上、ちょっと強引過ぎるわ」


 今回は珍しくパーティーメンバー全員が、リーダーの意見に反対した。

基本的にリーダーの言うことには、絶対服従なのに。

皆から庇ってもらえて嬉しい反面、誰かに守ってもらわなきゃいけない自分に嫌気が差した。


 少しはマシになったと思ったのに……私は結局、昔と何も変わらない。


 震える手をギュッと握り締め、私はリーダーの申し出になんて答えるべきか悩む。

その間も、リーダーと徳正さん達の言い合いは続いていた。


「多少無理をしてでも、今のうちにあいつらに会っておくべきだ。いつまでも過去に囚われ続けるなんて、それこそラミエルのためにならない」


「だからって、こんな急に言われても困るでしょ〜。主君、段取りって知ってる〜?」


「大体さー、それはラミエルの決める問題であって、ボスの決める問題じゃないと思うんだけどー」


『過去と向き合うのは、そんな簡単なことじゃない。お頭の気持ちも分からなくはないが、もっと慎重になるべきだったと思う』


「強引なのも急なのも認める。だが、強引にでも過去と向き合う機会を与えないとラミエルはずっと変わらないままだ。それに変に時間を空けると、本番当日まで悩むことになるだろ」


「確かにそうかもしれないけど、明後日って……女の子には心の準備が必要なのよ。加減ってものを知りなさい」


「ヴィ、ヴィエラさんの言う通りですぅぅぅううう!」


 ギャーギャーと騒ぐ彼らの会話内容は、言い合い……と言うより、押し問答に近い。

どちらも引こうとしないため、収拾がつかなくなっている感じだ。


 どうしよう……私のせいだ。


 『早く答えを出さないと』と焦る中、一人の男性が手を挙げた。


「ちょっといいか?部外者である俺が口出しするのもあれだが、こんな意味のない言い合いをするより────ラミエルが自分なりの答えを出すまでゆっくり待ったら、どうだ?」


「「「!?」」」


「最終的な決断はラミエルが下すんだろ?なら、考えを整理するまで待ってやれば良いじゃねぇーか。それで、ラミエルが『まだ過去と向き合える自信がない』って言うなら匿ってやればいいし、『過去と向き合いたい』って言うならただ応援してやれば良い。違うか?」


 ずっとアラクネさんの隣で沈黙を守ってきた田中さんは、ご尤もな意見を並べた。

すると、徳正さん達は途端に落ち着きを取り戻す。


「……まあ、確かにラーちゃんの意見を聞かないことにはどうしようもないよね〜」


「僕はたとえ、ラミエル自ら会議に参加するって言っても気乗りしないけどー」


『なんにせよ、僕達だけで話を進める訳にはいかない』


「そ、そそそそ、そうですね!決定権はラミエルさんにあると思います!」


「ごめんなさいね?ラミエルちゃん。寝起きだからか頭がボーッとして、そこまで思い至らなかったわ」


「とりあえず、ラミエルの意見を聞かせてくれ」


 田中さんの正論に理解を示した『虐殺の紅月』のメンバーは、誰もが私に視線を向けた。

ただ静かに返答を待つ彼らの前で、私は自分自身と向き合う。


 正直に言うと、まだカイン達とは会いたくない。

自分勝手でワガママなカインに何を言われるか分からないし、あんな別れ方をしたマヤ達にどんな顔して会えば良いのか分からないから。

でも────そんな理由で、会議の参加を見送るなんて出来ない。

だって、私の力を必要としてくれる人達が居るんだよ?

なのに、過去に脅え、尻尾を巻いて逃げると言うの?

私にはもう────心強い仲間達がこんなに居るのに?


 心配そうにこちらを見つめるメンバー一人一人の目を見て、私はフッと笑みを漏らした。

カインより遥かに強くて頼りになる仲間が居るのに、私は何を躊躇っているんだ?と思って。


「リーダー、同盟会議参加の件────謹んでお受けします。私にはもう彼らに怯える理由も、尻尾巻いて逃げる理由もありませんから。支えてくれる皆が居るので、もう大丈夫です」


「ラミエル……よく決断してくれた」


 どことなく柔らかい表情を浮かべながら、リーダーは私の決断を支持してくれた。

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