第132話『合流と交換』
「レオンさん、私を担いで移動してください。徳正さん達と合流します」
手短に指示を出すと、レオンさんは直ぐさま私を小脇に担いだ。
かと思えば、大量の光の粒子がある方向へ歩を進める。
マップで二人の位置情報を見る限り、この辺に居る筈だから。
「徳正とシムナの二人で、これかよ……本当にすげぇーな」
「そうですね。光の粒子が止む気配はありませんし、今もゴーレムを狩りまくっているんでしょう」
「────ううん〜。今はラーちゃんの気配を感じ取ったから、ゴーレム狩り中止して来たよ〜?」
「「……えぇ!?徳正!?」」
「僕も居るよー!」
音もなく背後に現れたのは黒衣の忍者と青髪の美少年を前に、私とレオンさんはあんぐり……。
さすがは高レベルプレイヤーと言うべきか、全く気配を察知出来なかった。
「お前ら、いきなり後ろに立つなよ!ビックリするだろーが!心臓に悪い!」
「そのまま、心肺停止すればよかったのにー!」
「シムナ……お前、俺になんか恨みでもあんのか?」
「シムナはただラーちゃんとデートしていたレオンくんが、羨ましいだけだと思うよ〜」
「いや、デートって……ただ一緒に行動してただけじゃねぇーか!お前らのデートの基準は、どうなってんだ!?」
『アホなのか!?』と叫ぶレオンさんに、私は苦笑を浮かべる。
「レオンさん、彼らに常識は通用しません。私も正直こんな物騒なデートがあって堪るか!と思いますが、彼らにとってはデートなんです」
「そうだな……もう面倒臭いから、デートってことにしておこう」
「ねぇー、徳正ー!もしかして、今僕たち馬鹿にされたー?」
「ん〜……馬鹿にされたというより、色んな意味で諦められたって感じかな〜?」
ニコニコ笑いながらも背後にドス黒いオーラを放つシムナさんに対し、徳正さんは小さく肩を竦める。
『まあ、気にしてないでおこ〜』と述べる彼を前に、私はパンパンッと手を叩いた。
「さて、雑談はここら辺にして仕事に戻りましょう。徳正さんは私と一緒に来てください。プレイヤー達の治療を行います。レオンさんとシムナさんは引き続き、ゴーレムの討伐を。シムナさんはレオンさんを置いて行かないよう、気を配ってあげてくださいね」
「えー!僕もラミエルと一緒がいいー!」
「まあまあ〜。シムナはレオンくんで妥協しなよ〜」
「えー!やだよー!僕、ホモじゃないしー!ていうか、僕はラミエル一筋だしー!」
「だってさ、レオンくん〜」
「何で俺が振られたみたいになっているんだ!?」
『納得いかない!』と喚くレオンさんに、私は同情こそするものの……庇っている暇はなかった。
「徳正さん、行きましょう」
「ん?もう行くの〜?」
「はい。あまり時間に余裕がありませんので」
「りょーかい。んじゃ、行こっか〜」
徳正さんは流れるような動作で私を抱き上げると、妖刀マサムネを鞘に収めた。
「えー!もう行くのー?僕、まだラミエルと一緒に居たいよー!」
「イベントが終わったら、また会えますよ。それまでの辛抱です」
「そんなにラーちゃんと一緒に居たいなら、さっさとゴーレムを全滅させてよ〜。そしたら、イベント終了時刻前にラーちゃんと会えるから〜」
「むぅー……分かった。さっさとゴーレムを殲滅して、こんなクソイベント終わらせるー!」
グッと拳を握り締め、シムナさんは思いを新たにする。
そんな彼の前で、徳正さんは
「じゃあ、また後でね〜」
と言って、地面を蹴り上げた。
その瞬間、物凄い速さで私達の体は上昇していく。
どうやら、上空から負傷したプレイヤーを探し出すつもりらしい。
「あっ!ラーちゃん、あそこのパーティー今にも壊滅しそうだよ〜?」
「本当ですね。全員傷だらけで、息も絶え絶えです……あそこに向かいましょう」
「りょーかーい!」
近くに居るゴーレムを足場にして方向転換し、徳正さんは加速した。
ブワッと巻き起こる風を他所に、私はゲーム内ディスプレイに表示された時刻を見つめる。
夜の八時ジャスト────ゴーレム討伐イベント終了まで、あと八時間。




