第131話『体調不良の原因は?』
発動は確かに成功した筈……!
使用したのが『パーフェクトヒール』である以上、完治に必要な効果を得られなくて……という線はない!
毒の可能性も消えた!
じゃあ、一体何が原因なの!?
回復師ですら、治せない症状なんて……!そんなのある訳……!
などと考える中、ふと目の前にアイテムを載せたドローンが……。
「ポーション……」
「ポーション?そういえばファイアゴーレムと対峙する直前、ヴィエラがマジックポーションを一本開けてたな」
「!!」
ハッとして目を見開く私は、顎に手を当てて考え込む。
と同時に、謎が解けた。
「そっか……これは────マジックポーションの過剰摂取による、体調不良だったんだ」
『それなら、治癒魔法が効かないのも分かる』と呟き、私はヴィエラさんを見下ろした。
多分、イベント中かなり無理をしたんだと思う。
一緒に居たのが非戦闘要員のアラクネさんだったから、余計に……。
移動も戦闘も全部、ヴィエラさんが引き受けていたんじゃないだろうか?
だとしたら、一体どれくらいMPを……いや、今はそんなことどうでもいい。
とにかく、ヴィエラさんを安全な場所に送り届けなきゃ。
さすがにこの状態で無理やり起こすのは気が引けて、保護を優先することに。
私はゴーレムに立ち向かう巨大ロボットを視界に捉え、声を張り上げる。
「リアムさん、ヴィエラさんを連れて上空に退避してください!ヴィエラさんの症状はマジックポーションの過剰摂取によるもののため、治療出来ません!なので、彼女の保護と護衛をお願いします!」
「分かったよ。任せておくれ」
巨大ロボットの肩の上に乗るリアムさんはその場から飛び降り、華麗に着地する。
そして、足早にこちらへ駆け寄ってきた。
「いいですか?ヴィエラさんに乱暴なことは決してしないでください。理由もなく、勝手に護衛任務から外れるのもナシです。彼女の安全と健康を第一に考えて、行動してくださいね?」
「了解したよ☆ラミエルに期待に添えるよう、精一杯頑張ろう」
「本当にお願いしますよ……?」
「ああ。任せておくれ」
自信満々に頷くリアムさんは、自身の胸をポンッと叩いた。
『大船に乗ったつもりで居るといい』と告げる彼の前で、レオンさんはヴィエラさんを差し出した。
「よっと……落とすなよ?」
「もちろんさ☆僕がヴィエラを落とす訳ないだろう?」
「だと、いいけどな……あっ、それだとヴィエラの首が辛そうだ。頭は自分の胸に寄り掛からせるように……そう。そういう感じ」
「ふむ……お姫抱っこって、なかなか難しいね」
抱っこの位置や角度を調整するリアムさんに、レオンさんはスッと目を細める。
「……とりあえず、こんなもんか。その状態を出来るだけ、キープしろよ」
「了解だよ☆」
お姫様抱っこの指導がやっと終わり、リアムさんは頬を緩める。
「じゃあ、僕はラミエルの指示通りヴィエラを連れて上空に退避するよ」
「ああ、ヴィエラのことはよろしく頼む」
「くれぐれも、お気をつけて」
上空は地上と比べて比較的安全だが、それでも警戒は必要だ。
あくまで、ここは戦場なのだから。
『絶対に気を抜かないでくださいよ』と圧を掛かる中、リアムさんは巨大ロボットの元へ走り出す。
その後ろ姿を見届け、私はおもむろに腕を組んだ。
とりあえず、ヴィエラさんの体調不良問題は片付いた。
あとは私達だけで、どう動くか……。
やるべきことはさっきと変わらず、プレイヤーの治療なんだけど……レオンさんだけじゃ、私の護衛とゴーレムの牽制を両立出来ないよね。
となると、やっぱり────
「────徳正さん達と合流するしかない、か……」
出来れば、徳正さん達にはゴーレム狩りに専念してほしかったんだけど……こればっかりはしょうがない。
回復師が倒れるなんて、あってはならない事だからね。
生存率を上げるならやはりゴーレムを狩るより、私の護衛に人員を割いた方がいいだろう。
徳正さんとレオンさんを交換するという手もあるし。
よし、そうと決まれば早速行動だ。
「レオンさん、私を担いで移動してください。徳正さん達と合流します」




