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第130話『巨大ロボットの空中飛行』

「お二人共、お気をつけて」


 ゴーレムの巨体で隠れたレオンさんとヴィエラさんを一瞥し、私は残ったメンバーに向き直った。

そこでドローンのことなど更に細かく取り決めると、それぞれ巨大ロボットの肩に乗る。

と同時に、空へ飛び上がった。

シートベルトや命綱もなしに。


 た、高い……怖い……落ちたら、死ぬ……。


 巨大ロボットの首元にしがみつき、私は『ちょっと早まったかも……』と弱気になる。

が、反対側に座るリアムさんは余裕そうだった。


「おお!これが巨大ロボットの空中飛行!胸が高鳴るね!」


 何かに掴まるどころか、肩の上で仁王立ちする彼は実に活き活きとしている。

見ているこっちはヒヤヒヤするが。


「おや?田中たちは早速、ドローンの配達を始めているみたいだね☆僕らも負けていられないよ」


「そ、そうですね……」


 負ける何も勝負を始めた覚えはないけど……まあ、完全に出遅れているのは認める。


 私は田中さん達のロボットの周りに居るドローンを見つめ、少し目を凝らす。

すると、荷物を括り付けているアラクネさんが目に入った。

せっせと働く彼女を前に、ドローンはゆっくりと降下していく。

そして、負傷しながらも必死に戦うパーティーの元へアイテムを届けると、ゆっくり戻ってきた。

ドローンですらきちんと仕事をこなしているという現状に、私は深い溜め息を零す。


「……こうなったら、腹を括るしかありませんね。いつまでも怖がっている訳には、いきませんし」


「ん?ラミエルは怖がっていたのかい?もしかして、高いところは苦手?高所恐怖症というやつかい?」


「いえ、そういう訳では……ただ、シートベルトも命綱もないこの状況に怯えていただけです」


「そういえば、落ちた時の安全装置は何もないね☆今、気づいたよ」


 『はっはっはっはっ!』と高笑いするリアムさんに対し、私は白けた目を向ける。

が、いちいち突っ込むのは面倒臭くて思考を放棄した。


 今はとにかく、人命救助を優先しなきゃ。


 『こうしている間にも、重傷を負っている人が居るかも』と思い立ち、私は恐る恐るロボットの首から手を離す。

抱き着いたままだと、よく辺りを見回せないから。

『落下しませんように』と願いつつ、私は再度地上を見下ろした。


「えーっと、あのパーティーは……回復師(ヒーラー)が居るから、大丈夫。あっちのパーティーは軽傷しか居ないから、ポーションだけで大丈夫そう……」


「こうして見ると、ラミエルの治療が必要な人って案外少ないんだね」


「そうですね。重傷になる前にアラクネさん達が、ポーションを配ってくれているおかげでしょう」


 地上で必死に戦うプレイヤー達を見守りながら、私は『これなら、ちょっと休めるかも』と考える。

四本目を開けずに済む未来を思い描く中、リアムさんはふと身を乗り出した。


「ねぇ、ラミエル。あそこに居る二人って、レオンさんとヴィエラだよね?ちょっと様子がおかしくないかい?」


 不思議そうにコテリと首を傾げ、リアムさんはある方向を指さす。

促されるままそちらへ視線を向けると、ファイアゴーレムに詰め寄られているレオンさんとヴィエラさんの姿があった。

炎に取り囲まれても動じない二人を前に、私も違和感を抱く。


 あれ?おかしいな……。

いつものヴィエラさんなら、敵の魔法を相殺するなり何なりして打ち消しているのに……今は魔法を使う素振りすらない。

前衛のレオンさんがしっかりゴーレムの動きを止めているにも拘わらず、だ。


 『ヴィエラさんらしくないな』と不安を覚える中、彼女は


「「あっ!」」


 糸の切れたマリオネットのように、その場で倒れた。

と同時に、レオンさんはファイアゴーレムの喉元を掻き切り、ヴィエラさんの元へ駆け寄った。


 これ……結構不味い状況かも!


「リアムさん!ヴィエラさんの元へ急いでください!早く!」


「了解だよ」


 巨大ロボットの操縦機を手に持つリアムさんは、ヴィエラさん目掛けて降下していく。

急降下とまでは行かないが、かなり荒々しい運転だった。

さっきまでの私なら、『おーちーるー!』と叫んでいたことだろう。

でも、今はそれどころじゃなかった。


 見たところ、ヴィエラさんに目立った外傷はない……考えられるとしたら毒だけど、レオンさんはピンピンしているんだよね。


 『何でヴィエラさんだけ?』と疑問に思う中、巨大ロボットは見事着地する。

ドシンッと鳴り響く音をスルーし、私はロボットの腕を滑り台のようにして降りた。


「リアムさんは巨大ロボットを使って、ゴーレム達の牽制を!私はヴィエラさんの治療に当たります!」


「了解だよ」


 まだロボットの肩に乗っているリアムさんは笑顔で頷き、近くのゴーレムを跳ね飛ばす。

『おお!素晴らしい破壊力だ!』と感嘆の声を漏らす彼を他所に、私はヴィエラさんの元へ駆け寄った。


「ラミエル!来てくれたのか!!実はヴィエラが突然倒れて……」


「分かってます!一部始終を見ていたので!」


 レオンさんの腕に抱かれるヴィエラさんを見つめ、私は眉間に皺を寄せる。


 凄い汗……それに呼吸も荒々しい。

やっぱり、毒の可能性が高いな。


 『とりあえず一気にHPも回復させよう』と考え、私は


「《パーフェクトヒール》!」


 治癒の最上級魔法を掛けた。

だが、しかし……ヴィエラさんの体調は一向に改善されない。

真っ青な顔も、そのままだった。


 な、何で……!?どうして、『パーフェクトヒール』が効かないの……!?

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