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第121話『中央大陸』

「とりあえず、私達も中央大陸に向かいましょう。状況を確認でき次第、ゴーレムの大量殺戮に移ります」


 そう宣言すると、徳正さんは直ぐさま案内役のノーマルゴーレムを斬り伏せた。

光の粒子と化すソレを一瞥し、私達は大陸を繋げる橋カンティネン・ブリッジを渡り切る。

そして、ゴーレム達の集合地点と思しき中央大陸を訪れていた。

私は大陸の中心に建てられた魔王城と、その周りにある枯れ果てた森を見つめ、考え込む。


 ゴーレム達が次々と森の中に入っていっている……これは最悪の場合も想定しないといけないな。


「徳正さんとシムナさんは魔王城の城門に回ってください。中に入ってこようとするゴーレムが居れば、即排除を。三十分経っても何もなければ、私に連絡して合流してください。他のメンバーは私と一緒に周辺のゴーレムを狩りに行きます」


「「ラジャー」」


「「『了解(だよ☆)』」」


 事態は急を要すると判断し、二手に分かれて行動することを提案すると、彼らは即了承。

今までずっとゴーレムの後をついて回っていたからか、やる気充分だ。

『やっと、戦える!』と喜んですら、いる。


 ゴーレムが一体でも魔王城の中に入ったら、イベントクリアは諦めるしかないな……。

魔王城もダンジョンのボスフロアと同じく、フロアボス(魔王軍)を倒すかプレイヤーが死ぬまで外に出られないから。


 魔王討伐クエストに挑んでまでイベントクリアする必要はない、と割り切る中────徳正さんとシムナさんは前を見据えた。


「んじゃ、俺っち達は魔王城の城門前に行ってくるね〜」


「ラルカ達、ラミエルの護衛頼んだよー!」


「お二人共、魔王城の敷地内には決して足を踏み入れないよう、お願いします!」


「「はーい」」


 魔王城の門番役を任された徳正さんのシムナさんはヒラヒラと手を振り、一瞬にして姿を消した。

ブワァッと巻き起こる風を前に、私はゲーム内ディスプレイを呼び起こす。


 ゴーレム達が中央大陸に集結しているのは、間違いない……この情報は早くリーダー達に伝えるべきだろう。


 ────と判断し、『虐殺の紅月』のグループチャットに簡単な状況説明を載せた。


「レオンさんとラルカさんは周辺のゴーレムをとにかく狩りまくってください。ただし、私を中心点とする半径百メートルから出ないこと。目の届く範囲内に居てほしいので。そして、リアムさんは私の護衛兼遠距離攻撃をお願いします。弓矢なんかで、ゴーレムを攻撃してくれると嬉しいです」


 画面を見つめたまま指示を出すと、ラルカさん達は即座に応じる。


『承知した。軽く数百体ほど、狩ってこよう』


「ラルカ達みたいな完全無双は不可能だが、頑張って来る」


「二人ともファイトだよ☆ラミエルの護衛は僕に任せて、ゴーレム討伐に精を出すといい。レオンさんのアシストも余裕があれば、やってあげるよ」


「お前のアシストは狂気を感じるから、丁重にお断りする」


 一も二もなく拒絶したレオンさんに、リアムさんは『まあまあ、そう言わずに』と食い下がる。

が、レオンさんは断固拒否。

決して首を縦に振らなかった。

────と、ここでリーダー達から返信をもらう。


「リーダー達も直ぐにこっちへ向かうみたいです。恐らく、同盟メンバーにも情報が渡ると思うので、そのうち猛者が集結することでしょう」


『お頭が来るなら、心強いな』


「なら、ヘスティア達もこっちに向かってくるのか」


「ギルドマスターの戦いぶりを久しぶりに見ることが、出来るね。楽しみだよ♪」


 楽しみって……事態はかなり深刻なのに。

まあ、“炎帝”と呼ばれるヘスティアさんがどんな戦い方をするのか私も興味があるけど……って、そうじゃない!!


「ラルカさんとレオンさんは即散開!いつまで、ここに居座るつもりですか!」


『バレたか……』


「わ、悪い!直ぐにゴーレム狩りに移る!」


 慌てた様子で剣を抜くレオンさんに続き、ラルカさんもデスサイズを手に持つ。

と同時に、近くを通り掛かったゴーレムへ直ぐさま斬り掛かった。

片っ端から獲物を狩っていく彼の前で、私は苦笑を漏らす。

“斬殺の死神”に恥じない無双っぷりだな、と思いながら。


「ラルカのあれは、もはや作業ゲーだね。僕が弓で狙いを定める前にターゲットを狩ってしまうものだから、出番がないよ」


「ラルカさんが途中でバテない限り、ずっと様子見になりそうですね」


「その可能性は非常に高いね。僕を担いだ状態であれだけ走ったのに、まだピンピンしてるんだから」


 ここ二日間、ほぼノンストップで動いていたのに凄いな……こっちは疲労と魔力(MP)の使い過ぎで、もう倒れそうだよ。


「ラルカさん達の体力はまさに無尽蔵ですね。一体、何日この生活を続ければバテるんでしょうか?」


「さあね。それは僕にも分からないよ。ただ、一週間くらいは余裕で持ちそうだね☆」


「結構、現実的な数字を出してきましたね……」


「……暇だね☆」


「暇ですね……」


 ラルカさんの無双っぷりをボーッと眺めながら、私達は一つ息を吐く。


 とりあえず、アスタルテさんや他のフレンドにもこの情報を共有しておこうかな……。


 せっかくの空き時間を無駄にするのは、気が引けて……再びゲーム内ディスプレイを起動した。

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